あれ、知り合いじゃないですか?
私たちが新事実に打ちひしがれている中、魔王とケビンが何やら相談中。
「ねぇ、もうこの変身魔法解除していい?」
「えぇ、もう勝手にしてください…。」
「やったー!やっと自由になれる。」
魔王の嬉しそうな声に、私たちはのろのろと顔を上げる。
そこには、さっきまでそこにいた人間型魔族特有の長く尖った耳や爪やごてごてた装飾品は無く見覚えのあるブレザーを身に纏ったやる気なさそうな少年がいた。
私は、見覚えのある姿に首をひねった。
少年は、伸びを一つすると机にほっぺたをくっつけ「冷たくて気持ち―。」とか呑気に言っている。
あ、思い出した。
私は、顔を隠していた鎧を外し魔王である少年に話しかけた。
「もしかして、神岸?あんた、神岸穂積でしょ?」
「えー?あれ?委員長?鬼の委員長?」
「誰が、鬼よ!?」
「ご、ごめん。え、でも、本当に春日委員長?委員長が勇者なの?」
「そうよ。何か、文句でも?」
ムスッとした表情で返事をした。
クラスの問題児、神岸穂積。
授業をどうどうとサボる、寝る、宿題を出さない、行事に参加しない。
言い出したら、キリがない。
「はぁ…。」
「どうした、チナツ。」
「何でもないわ。気にしないで。」
こいつに苦労させられていた日々を思い出し、ため息をつく。
そんな私の姿をアレックスたちは、心配そうに見つめていた。