この人、本当に魔王ですか?
呆然としながら、せんべいをかじる。
…うまい。
久しぶりの故郷、日本の食べ物の味にホッとする。
お茶をすすりながら、のんびりとせんべいを食べれるなんて最高…。
…
……
………。
って、だめでしょーーーー!!
危うく、ここがどこか忘れかけるところだった。
いけない、いけない。
気を取り直して、目の前にいる魔王であろう人に話しかけてみる。
「あの…。」
「ん?どうした?」
「いえ、あの…。あなた、魔王?」
「へ?うん、そうだけど…。それが?」
…やっぱり魔王でした。
その事実にショックを受ける私。
落ち着け私。落ち着くんだ。
こんなのが魔王なら戦わずに済むんじゃないか。
何度も言い聞かせるように繰り返す。
「本当に魔王なの?」
「うん。…何で何回も聞くの?」
「…気にしないで。なんか、聞きたくなっただけ。」
不思議そうに聞く魔王から目をそらす。
私、何のために強くなったんだけ…?
「あ、お茶おかわりいる?」
「え、あ、うん。」
魔王にお茶のおかわりをもらって、せんべいをバリバリ食べる。
もう、考えるのやめよう…。
外は相変わらず刃と刃がぶつかる音や爆発音が聞こえる中、勇者と魔王は戦わずお茶を飲んでまったりしている。
一方は、完全に和んでいて一方は、何かを諦めたムードで。