6話
会えなくても、わからなくてもいい。
ただ毎日が貴方の色で染まればそれでいい。
そう思っていました。
毎日他愛ない会話をして、時に相談をし私にとっては愛おしい兄でした。
でもそれは私がそう思っていただけでした。
私にとって溶は兄のような人でした。
しかし、溶にとって私は娘のような存在だったと言います。
恋心よりも父性のほうが大きくなっていたようです。
私は常に溶を信頼し、溶を頼りにしてしまっていたのです。
溶はあの空白の1年でひとまわりもふたまわりも大人になっていました。
私はそのままというよりかは子供になっていたのかもしれません。
もう私たちは「昔の私たち」ではありませんでした。
そんな中、溶から依頼がありました。
溶の作り上げる作品の手助けをして欲しいと言われたのです。
昔から溶の手が作り出す作品が好きだったので夢かと何度も疑いました。
私にとって、初めての作品が憧れの溶と作り上げる物ということにものすごく喜びを覚えました。
「どんなものでもいい。好きなように創れ」
「なるべくお兄ちゃんに合わせるようにするね」
「楽しみにしてる」
「言っとくけど、私はお兄ちゃんの第一ファンなんだからね!」
「なんだそれ」
「えへへ、とにかく任せて!」
今でも私はこの時作りあげた作品が好きです。
製作者の半分が自分自身だなんて信じられないくらいです。
「そういえば私、お兄ちゃんみたいにペンネームないや」
「そうか、なんかいいのないかな」
「うーん・・・」
「お前の好きな物なんだ?」
「冬、雪、りんご、雨、それから黒かな」
「そうか、じゃぁ下の名前には雪って漢字を入れよう。」
「お兄ちゃんが全部決めて?」
「なんで?」
「それ今後創作するときはずっと使うし、誇りにする」
「そうか。わかった。」
「雪だけだと普段とかぶるね」
「そうだな、じゃあ雪希にしよう。」
「うん、気に入った。」
「苗字がないと変だな・・・」
「雪希に合う自然なやつ」
「じゃあ、お前の好きな黒も入れて、黒田雪希にしよう。」
「いい名前!」
「その名前のアカウント作っとけ、いずれ使うぞ」
こうして、私のペンネームは尊敬する兄につけてもらいました。
一生の宝です。名を与えてくれるというのはそうそうあることではありませんから。
それからというもの私は少しでも溶に近づこうとしました。
絵の勉強もこれまで以上に頑張りましたし、勉強も努力しました。
おかげで校内トップの成績を収め卒業に向かうこととなったのです。
月の輝きによって導かれ、月の明るさで照らされました。
この先ずっと光を辿ればいいと思いました。
満月となった月は光を少しずつ減らしていくということも知らないで―――――