1話
現在の立ち位置から過去編。
これは私が高校生の時の話です。
桜がキレイな時期でした。
空も澄んでいてまるで私を見ているかのようでした。
高校に入学してからまだ間もない頃に、周りではSNSが流行りだしました。
最初は怖いからやらないと断っていたのですが、周りに流されやすい私はSNSに登録することにしました。
周りには秘密で始めたので友達はなかなかできませんでした。
私のハンドルネームは雪。本名から取りました。
そして私をどこからか見つけてきた男の人がいました。
「俺、溶っていうんだ。よろしく!」
「雪です。よろしくお願いします。」
溶は1つ年上で、絵を描くのが趣味だとプロフィールに書いてありました。
私はその頃ゲームが好きで、とてもワガママだったのを覚えています。
私たちの住んでいる所は遠く、簡単に会えるような距離ではありませんでした。
溶は明るく元気で子供らしく輝いていました。
「これ雪に!イメージして似顔絵描いたんだー!!」
溶の絵は私には凄く惹かれるものを感じました。
それに会ったことなど一度もないのに、凄く似ていたのです。
私は溶に親近感を覚え、その頃から溶を意識しだすようになったのです。
溶もそれなりに私を意識していることがわかると、頻繁に連絡を取り合うようになったのです。
「今何してる?」
「学校行く途中だよ!」
「そうか気を付けて行くんだぞー!」
「バスだから気をつけようがないよぅ!」
「いってらっしゃい」
「あ、忘れ物したぁ」
「ん?」
「行ってきますのちゅー!」
「うぉあ///」
「じゃぁね!後でね!!」
まるで近くで寄り添う恋人のような存在でした。
そんな幸せな毎日が何日も続きました。
溶が私にくれる絵は私を引き込むような絵ばかりでした。
特別上手いわけでもないのですが、なにかあったのでしょう。
それは今でもわかりません。
とにかく私は溶が好きでした。
ある日の朝でした。
溶からいつものようにメッセージが届きました。
“雪、俺の嫁になれ”
私はまだ感情が子供でした。
年齢も思考も。
私は溶の言葉が嬉しかったのですが受け入れられませんでした。
もちろん溶のことが好きでした。
私にはネット恋愛という壁が厚すぎて乗り越えられないとそのとき自ら判断したのです。
ネット恋愛なんて後ろ指さされるに決まってる。
そもそもネット怖いなんて言ってたくせに、ネット恋愛しているなんて・・・
みんなにバレたら?友達が離れて行ってしまったら?
未熟な私はこの日を境に溶のいるネットから手を引くようになりました。
今思えばこの判断は間違えていたかもしれません。
ですがこの判断をしなければ、貴方にはあえなかったかもしれません。
どちらにせよ、なるようになったわけですが
もしこの日に戻れるのならば私はきっと違う選択をしていたでしょう。
でも間違いなく、私はあの日あの時
人に流されてサイトに登録をしていなかったら溶に会うことはできませんでした。
そして間違いなく今ここでこうして空を見上げてはいなかったでしょう。
―――あの月は以前紛れもなく
恋人だったのです・・・―――
あの日は確か曇り空。
だから見えなくなったのだ。