番外編「スノーのグルメ日記」
吾輩はスノーである。
高貴なるフェンリルの血を引く、誇り高き聖獣だ。
今は仮の姿として、もふもふの犬っぽい姿で過ごしている。
この城の主、アレクセイは強大な魔導師だが、愛想が悪くて飯が不味いのが難点だった。
だから吾輩は、庭の片隅でひっそりと暮らしていたのだ。
だがある日、運命の出会いがあった。
リリアナという名の雌の人間だ。
彼女は吾輩に、黄金色に輝く干し肉をくれた。
一口食べた瞬間、吾輩の中に稲妻が走った。
「美味いッ!!」
噛めば噛むほど溢れ出る旨味、鼻に抜けるハーブの香り。
これはただの肉ではない、魔法だ。
それ以来、吾輩は彼女の虜になった。
彼女の作る料理はどれも絶品だ。
トロトロに煮込まれた角煮、カリカリの骨付きチキン、魚の出汁が効いたスープ。
吾輩の毛並みはツヤツヤになり、魔力もメキメキと回復した。
もはや、彼女なしでは生きていけない。
しかし、最近問題がある。
あのアレクセイが、リリアナを独占しようとするのだ。
吾輩がリリアナに甘えて撫でてもらっていると、彼は不機嫌そうに割り込んでくる。
「スノー、そこをどけ。リリアナの膝は俺の場所だ」
大人気ない。
公爵ともあろう者が、犬(仮)と張り合ってどうする。
今日もリリアナが、新作の「特製ハンバーグ」を作ってくれた。
肉汁たっぷりで、かかっているソースがまた絶妙だ。
吾輩が夢中で食べていると、アレクセイがリリアナに「あーん」を強要していた。
「リリアナ、口にソースがついた。舐めてとってくれ」
「もう、自分で拭いてくださいよ」
そう言いながらも、リリアナはまんざらでもない顔で世話を焼いている。
イチャイチャしやがって。
見ていられないが、ハンバーグが美味いから許す。
リリアナは、この冷たい城に太陽を持ってきた。
アレクセイの氷のような心も、吾輩の空腹も、彼女の料理が全部溶かしてくれたのだ。
これからも吾輩は、彼女のボディガード(兼試食係)として、この城を守っていく所存だ。
お、おかわりある? ワン!




