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聖女の魔力を偽って追放された私、辺境の氷の公爵様を薬膳料理で餌付けしたら、味覚を取り戻して溺愛されました~もふもふ聖獣付き~  作者: 黒崎隼人


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第12話「断罪とそれぞれの結末」

 王都からの後日談が風の噂で届いたのは、私たちがヴォルガード領に到着する少し前のことだった。


 幽閉塔に送られたエドワード元王太子とミレーヌの処遇は、厳しいものとなったらしい。

 エドワードは王籍を剥奪され、北の僻地にある修道院へ送られ、一生を償いに費やすことになった。

 彼は最後まで「自分は悪くない、騙されたんだ」と喚いていたそうだが、誰も耳を貸さなかったという。

 かつては次期国王としてチヤホヤされていた彼が、粗末な修道服を着て畑仕事をする姿を想像すると、因果応報という言葉が浮かぶ。


 一方、ミレーヌの運命はさらに皮肉なものだった。

 彼女は「聖女詐称」と「禁忌薬の使用」の罪で、鉱山送りとなった。

 しかし、彼女が鉱山に送られてから数日後、奇妙な報告があった。

 彼女の肌は急速に老化し、美しいピンクブロンドの髪は抜け落ち、まるで老婆のような姿になってしまったという。

 彼女が美貌を保つために使っていた薬の副作用と、無理やり魔力を搾り出していた代償が一気に押し寄せたのだ。

「私の顔が! 鏡を見せないで!」と絶叫する彼女の声が、今も坑道に響いているとかいないとか。

 自らの美貌と虚栄心のために全てを犠牲にした彼女にとって、その姿で生き続けることは死以上の罰かもしれない。


 フローレス伯爵家も無傷では済まなかった。

 娘たちのいざこざを見抜けず、さらに王家に虚偽の報告をしたとして、爵位は降格、領地の一部を没収された。

 父と母は屋敷の奥に引きこもり、世間の目を避けてひっそりと暮らしているという。

 私に対して謝罪の手紙が何通も届いたが、私はそれを読むことなく燃やした。

 今更、家族ごっこをするつもりはない。

 私にはもう、新しい家族がいるのだから。


「……ふん、甘いくらいだな」


 馬車の中で報告書を読み終えたアレクセイが、つまらなそうに鼻を鳴らした。


「俺なら、あいつらを氷漬けにして城のオブジェにするところだが」


「趣味が悪すぎますよ、アレクセイ様。それに、彼らがどうなろうと、今の私たちには関係のないことです」


 私はバスケットから焼き立てのアップルパイを取り出し、彼の口元に運んだ。

 彼はそれをパクリと食べ、満足そうに目を細める。


「そうだな。お前がそう言うなら、忘れてやろう」


 彼の世界には、もう私と、これからの未来しか映っていないようだった。

 過去のしがらみは、雪解け水と共に流れ去ったのだ。


 窓の外に、見慣れた尖塔が見えてきた。

 ヴォルガード城だ。

 かつては「魔王の城」と呼ばれ、おどろおどろしい雰囲気を纏っていたその場所。

 しかし、今私の目に映るのは、朝日を浴びて輝く美しい白亜の城だった。


「着きましたね」


「ああ。俺たちの家だ」


 城門の前には、大勢の人だかりができていた。

 ガストン料理長をはじめとする使用人たち、そして領民たちが、旗を振って私たちを出迎えてくれている。


「公爵様万歳! リリアナ様おかえりなさい!」

「リリアナ様ー! 新しいスープのレシピ考えておきましたよー!」

「スノーちゃんも元気かー!」


 その歓声は温かく、愛に満ちていた。

 追放された時には想像もしなかった光景。

 冷え切っていた辺境の地が、こんなにも温かい場所になるなんて。


 馬車を降りると、ガストンが涙目で駆け寄ってきた。


「リリアナ様! ご無事で! 王都でドラゴンを倒したって噂、本当ですか!?」


「ええ、まあ。でも一番活躍したのはスノーとアレクセイ様ですよ」


「いやいや、リリアナ様の祈りが届いたって聞いてますぜ! さすが俺たちの女神様だ!」


 わっと歓声が上がる。

 女神様だなんて、くすぐったい。

 アレクセイはそんな光景を見て、満足そうに頷いた。


「皆、聞け!」


 アレクセイが声を張り上げると、一瞬で静まり返る。


「我々は帰還した。そして、このリリアナこそが、これからのヴォルガード領を支える女主人となる。……公爵夫人として迎えるつもりだ。文句のある奴は前に出ろ」


 シン、とした沈黙の後。

 ワァァァァァァァッ!!

 爆発的な歓声と拍手が巻き起こった。


「おめでとうございます!」

「最高です!」

「今日は宴だ!」


 私は顔が沸騰しそうになった。

 プロポーズ、まだちゃんと返事してないのに!

 でも、アレクセイの真っ直ぐな瞳を見たら、断る理由なんてどこにもなかった。


「……よろしく頼むぞ、公爵夫人」


 彼はニヤリと笑い、私の腰を抱き寄せた。


「はい、覚悟しておきます。貴方の胃袋は、一生私が握り続けますからね」


 私は精一杯の強気な笑顔で答えた。

 北風が吹いているはずなのに、体中がポカポカと温かかった。

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