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『カッパのドキア』吸血鬼ヴァンとの出会い。  作者: 湊 俊介


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8/13

他の視線と僕の視線

 森の奥で嗅覚を頼りに探し回ると琵琶の木を見つけました。お腹を空かせていたヴァンは琵琶をお腹いっぱい食べました。


 ドキアの分もちゃんと残してあります。だけど森を出ようとすると空が明るくて、ヴァンはその森で過ごすことにしました。

 

 日に当たってもすぐに死んでしまうわけではありませんが、数時間当たると酷い火傷のようになってしまいます。ヴァンはドキアの喜ぶ顔を思い浮かべるとにやけてしまいました。


 良い夢が見られそうだと、ヴァンはかき集めた葉っぱのベッドで眠りました。この日の昼間にドキアは村長との約束を破って森に来ています。


 ヴァンは目覚めると空腹とは別の衝動に襲われました。血が飲みたい。ヴァンは血が嫌いです。しかし吸血鬼の本能として体が血を求めているのです。こうなると血を吸うまでこの衝動は消えません。このままドキアに会ったらドキアの首元に噛みついて血を吸ってしまうかもしれません。


 吸血鬼は自分の影を切り離すことで自分の分身として操ることができます。自分が寝ている間に料理をさせたり、洗濯物を干させたりできます。


 しかし切り離している間、吸血鬼としての能力は半減しますし、指示を出せば出すほど血が飲みたくなるのです。だけど影を切り離して指示もせずにいると、血の飲みたくなる周期を半減することにヴァンはある時気が付きました。


 ヴァンはそれを利用してなるべく血を飲まなくてすむように影を常に切り離して逃げ出さないように小瓶に入れていました。影は放っておくと逃げ出して自我を持ち出してしまうのです。そうなるとどうなるかは……。


 ヴァンはなるべく体の大きくて血をたくさん吸っても死なない生物を探しました。それに寝ている間にひそかに吸う必要があります。血を吸わせてくださいと頼んで大人しく吸わせてくれる生物はいないものですから。他の吸血鬼は死ぬまで血を吸うのがほとんどですがヴァンはそれが野蛮な行為だと思っています。


その日、血を吸わせてくれる相手は見つかりませんでした。早く吸わないとヴァン自身、見境なく吸いたい衝動に襲われ始めます。このままじゃドキアに会うわけにいかない。


 永遠に続く喉の渇きに襲われながら、ヴァンは血を求めて歩き回りました。


三日後の夜にようやくヴァンは血を吸うことができました。クマのおじいさんが暮らす小屋を見つけたのです。クマのおじいさんが寝静まってから静かに入り込んで血を吸いました。おじいさんの手首に小さな切り目を入れてそこから吸いました。久しぶりの血の味に体は満足しましたがヴァンは眉間にしわを寄せながら最低限の血をもらいました。


喉の渇きは癒やされて、思考も鮮明になりました。ドキアに会いたい。ヴァンは今度こそと、日が昇る前にカッパの村に戻りました。村に戻るとお腹が鳴りました。血を探している間空腹なんてすっかり忘れていたのです。どうしてもお腹が空いたヴァンはポケットを見ます。


 ポケットにはドキアの為に取っておいた琵琶がありました。だけどこれはドキアの為とヴァンは我慢しました。そして畑に侵入しました。そして見つかって捕まってしまったのです。


村の安全が確認できて森に避難したカッパたちを呼び戻すようにと、長老は言いました。ドキア達が戻ると集会所にみんな集まりました。そしてみんなの前には、急いで作られた木の牢屋ができていました。


 そしてその中にいるヴァンをみんな見つめました。ドキアは後ろの方にいて前の方が見えません。こそこそ話すのが聞こえてきて誰かが捕まっているらしい、ということは分かりました。


「侵入者を捕まえた。この村の中で……。由々しき事態じゃ、一刻も早く対策をしなければこいつの仲間がやってくるかもしれん。


 処分するのが早いがどうやってこの村に、侵入してきたのかを聞き出さなくてはならぬ。今夜はもう遅い、明日この侵入者の尋問を行ってから村の掟通り、処刑する」長老の話が夜の静けさに広がります。


 そして長老は手を叩いて今夜は解散だと集会を終わらせました。みんなが散らけてきてようやく、ドキアは前の方が見えてきました。長老は牢屋の前に立っています。ドキアは気になって誰が捕まっているのか覗きに行きました。


 月夜の明かりと、牢屋の前にある松明の明かりだけで近づかないと分かりませんでした。ヴァン……。思わず声に出してしまいそうになるのを我慢しました。ヴァンは牢屋の中でぐったりとしています。


 ヴァンは倒れ込んだまま薄く目を開けていてドキアに気が付きました。するとニコッと笑って縛られた手を小さく振ります。

ドキアは周囲を確認しました。


 ヴァンが自分に対して手を振っているのを見られたら仲間だと思われてしまうと。運よく長老もドキアと同じく牢屋を覗きに来たカッパたちもそれには気が付かなかったようです。ヴァンと話したい。


 手を振り返したい。だけどリスクが大きすぎました。ドキアはきゅっと赤いくちばしを噛んでその場を離れました。一度も振り返りませんでした。ヴァンはそれを見ていましたが、とても傷つきました。


 ドキアの為に取っておいた琵琶を食べてしまえばよかったと意地悪なことも浮かんできました。


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