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『カッパのドキア』吸血鬼ヴァンとの出会い。  作者: 湊 俊介


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6/13

ルールを破って

そして数日間ドキアはおとなしくしていました。森に行けないなら空腹をしのぐのにキュウリを食べなくてはいけません。息を止めてかじって飲み込みます。


しばらくドキアはおとなしくしていました。我慢してキュウリをかじって我慢して同年代のカッパたちの横で川を眺めて、我慢してヴァンに会いに行きませんでした。

 

そしてドキアは寝不足になりました。お昼はヴァンは森から出られないから、夜に心配して会いに来てはくれないかと少しだけ期待していました。みんなが寝静まった後も池の外に耳を澄ましていました。


 茂みが動く音がすると思わず期待して胸が高まりました。音の方を見ると小さな光る眼がドキアを見ています。ただのモグラです。ヴァンはきません。ドキアが勝手に期待しているだけですから。


 三日も我慢するとドキアは限界を迎えました。明日は森に行ってしまおう。ドキアは期待することをやめて寝不足にならないように早く寝ました。朝ご飯のキュウリを脇腹に隠して、長老が部屋にいることを確認します。初めは川に行っていつも通りのフリをします。そして自然にそこから離れて森へ向かいました。


 ペタペタ、ペタペタ。急いで走ってドキアは一度転んでしまいました。だけどヴァンに会える楽しみで痛みなんて感じませんでした。


 森を通って秘密倉庫を目指しました。その場所が見えてきてもヴァンの姿は確認できませんでした。蓋を開けてみるとリスが眠っていました。リスは目を覚ましてドキアの首元に駆け上がります。


「ごめんよ、寂しかったかい。ここに来るの禁止されたんだよ」ドキアがリスの鼻先をくすぐるとリスは嬉しそうに鳴きました。


「ヴァンを知らない?木苺の方かな?昨日は来てた?」リスに聞いてみても答えてはくれませんでした。二人は木苺のなるところを目指しました。いなかったらどうしよう。その不安は的中してしまいヴァンはそこにもいませんでした。森の中を探してみました。どこかで寝ているんだろうと名前を呼びながら探しました。だけどドキアはヴァンとは出会えませんでした。


ドキアが森に来なくなったから、どこかに行っちゃったのかもしれない。どこか遠くへ、綺麗な景色と美味しいものを探しに行ったのかもしれない。一人で。もうヴァンには会えない。何となくそんな気がしました。 そんな気がしてドキアは悲しくなりました。


また一人だ。この悲しさをどうしたらいいのかわからなくてキュウリを投げつけました。キュウリは木に当たって二つに割れました。踏みつけたい。そんな気分でしたが食べ物を粗末にするのは良くないと割れたキュウリを拾って食べました。


 そうすると目が熱くなってきて嗚咽がこみあげてきてドキアは大きな声を上げて泣きました。それが止まるまで長い時間がかかりました。


 次の日も森へ抜け出してみてもヴァンはいませんでした。次の日も、その次の日も、そしてそれは長老にばれてしまいました。


「わしの言うことが守れないのかね。ドキアよ。お前の父と母はお前のために危険なこともして守ったというのに」


 長老はドキアが何も知らないと思っています。だけどドキアは長老が、お父さんに危険な仕事を命じたことを知っています。自分のことを災いをもたらすと言ったことを知っています。だけどそんなことどうでもよくなっていました。


「ごめんなさい。美味しいドングリが食べたくて行っちゃいました。もう行きません」


 ドキアは不貞腐れたように長老の前から去りました。言われなくてももう森に行くことは止めようと思っていました。悲しくなってまた泣いてしまうだけだから。ドキアは眠りました。何も考えないようにと目を閉じました。だけど眠れなくて起きているとホラ貝の音が聞こえてきました。

一回……。村で何か起きたようです。みんな一斉に池から起き上がります。

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