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『カッパのドキア』吸血鬼ヴァンとの出会い。  作者: 湊 俊介


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親切心はギブアンドテイク

「おーい。大丈夫かい?助けてほしいかい?」ドキアが諦めかけると上から声が聞こえてきました。


 他の生き物と関わらないように、そうも思いましたが状況的に頼るしかありませんでした。ドキアはすぐに返事をします。


「穴に落ちちゃったみたいで、一人じゃ外に出られないんだ。助けてほしい」


 ドキアに声をかけたのはアヒルの親子でした。お父さんアヒルは穴の中に手を伸ばして「まだ届かないな」と言って息子アヒルを呼びました。


 息子アヒルはお父さんを伝って穴の中に、お父さんアヒルの手をつないでドキアの少し上まで降りてきました。


「つかまって」息子アヒルはドキアに言うとドキアはその手につかまりました。小さくてふわふわした手でした。「よし、せーの」お父さんアヒルは一気に引き上げてみんな穴の中から飛び出るように抜け出しました。


アヒルは黄色い毛に覆われた体でくちばしと足は同じ青色をしています。息子アヒルはお父さんアヒルを小さくしただけで同じ見た目をしていました。違うのはお父さんアヒルの頭の上には竹とんぼみたいなものが付いているのです。それもくちばしと同じ青い色をしています。


ドキアはアヒルを見たのは初めてです。でも助けてくれたからには悪い生き物じゃないと思いました。ドキアは二人に近づいてお礼を言いました。


「僕はカッパのドキアです。助けてくれてありがとうございます」そう言って頭のお皿を下げました。


「いやいや、この世界では困ってたらお互い様ですよ。ギブ・アンド・テイクの関係で成り立っているのですから。私はアヒルのビリーです。こっちは息子のベリーです」


 ベリーはドキアよりも一回り小さいです。ベリーはビリーの後ろに隠れて恥ずかしそうにドキアを見ていました。ベリーもありがとう、とドキアは言いました。


「ちょっと急いでいるのでそれじゃあ」とドキアは村へ帰ろうとしました。ですがビリーがドキアを引き留めます。


「ちょっと待った。この世界はギブアンドテイクの関係。私たちはあなたに穴から助けるというギブをしました。それならあなたは私たちにテイク、同等かそれ以上の物をくれないといけません」


「だけど僕、急いでいるし何も持ってないよ」ドキアは困りました。


「あなたが急いでるかどうかは、私たちには関係のないことです。穴の中に落ちたままでは、その急いでいる用事にすら行けなかったのです。何もないなら穴の中に戻ってもらいますよ」


「だけど、僕……」


「あるじゃないですか。頭の上に荷物が」ビリーはドキアの頭の上を指しました。

「これは僕の荷物じゃないんだ。これを届けなくちゃいけないんだよ。日が昇る前に」


「それも私たちには関係のないことです。これはあなたと私たちの話です」


 ドキアはどうしたらいいか分からなくて泣き出しそうになりました。いっそのこと逃げてしまおうか、川まで行けばドキアは逃げ切れる自信がありました。ドキアは後ろを確認しました。すると考えがバレているのかベリーが小さい体で手を広げてドキアを睨んでいます。逃げられそうにありませんでした。


ドキアは観念して頭の荷物を下ろしました。


「全部はあげられないから、ちょっと待ってて」ドキアが中身を出そうとすると二人はドキアを押しのけてリュックの中を漁りだしました。漁りながらビリーは言いました。


「ギブ、アンドテイク。あくまで同等の取引が私たちのポリシーです」ビリーは黄色い羽根の手でリュックの中の物を見ていきます。ですが思ったより気になるものが無かったのか口数が減っていきます。そしてよりにもよってヴァンの影が入った瓶を見つけて目を光らせました。


「これは、面白い。勝手に蠢く黒い何か。まるで生きているようです。気に入りました。あなたラッキーですね。この意味の分からないものとギブアンドテイクにしましょう」「それだけはだめ。それを届ける約束をしているんだ。お願いだから他の物にしておくれよ。それ以外なら何でもいいから」


「ほかに気に入るものはありませんでした。これを渡すか穴に戻るかどちらかですね」


ドキアは自分でも思いも寄らない行動にでました。まだ荷物漁りに夢中だったベリーを捕まえたのです。そして握りしめて逃がさないようにしました。


「ベ、ベリーを返して欲しかったらギブアンドテイク。その瓶と交換を」ベリーは苦しくてドキアの腕の中で暴れます。


「それは、ギブアンドテイクじゃないですね。卑劣で暴力的な行為です。私たちだってあなたから、その荷物を奪うことはできました。しかしあえて助けることでギブアンドテイクを成立させる私たち親子のポリシーです」ビリーはまったく焦らずに淡々と言います。


「そうだそうだ、そのために必死に穴を掘ったんだ。ポリシー、ポリシー」ベリーはドキアの腕の中で騒ぎました。


「穴を掘っただって?これは君たちが掘ったのかい」ドキアは騙されていたことに気づきました。ビリーはさっきまでと違って、頭に手を当ててやってしまったという顔をしています。


「だから黙っていると言ったのです」ビリーがそういうと瓶を地面に置いてドキアの方に蹴りました。ドキアは瓶を受け取ってベリーを放しました。するとビリーの頭の竹とんぼはすごい勢いで回転して宙に浮き始めました。


ベリーはビリーの足につかまって一緒に飛んでいきます。「せっかく、いいカモがいたと思ったのにお前のせいです」


「ごめんよ、父さん」二人は夜の空へ飛んでいきました。ドキアは荷物をまとめて急いで川に向かいました。もう寄り道はしないと、ドキアは誓いました。


 夜明けは近そうです。月はもう山の方へと帰ろうとしていました。ドキアは急いで川まで戻って川上へ泳ぎました。


そして順調に村の近くまで帰ってきました。


 漆の壁が遠くに見えてきました。疲れ切った足にも力が入って早足になりました。しかし突然村の中からホラ貝の音が聞こえてきてドキアは足を止めました。ホラ貝の音は一回鳴らされただけで止まりました。

村でまた何か危険が起きたのかもしれません。


 もしくはヴァンに何かあって暴れているとか。ドキアはさらに急ぎ足になります。出てきた小穴の場所にたどり着くとドキアは力が抜けてしまいました。


 小穴が大穴になっていたのです。ここまでヴァンの言う通りにやってきて上手くいきましたが一番初めの肝心なことを忘れていました。


「穴を抜けたら外に穴を隠す用の板があるからそれで必ず隠すんだ。じゃないと他の生き物がそこから匂いを嗅ぎつけて入ってくるかもしれない。おれがそうだったから、塞がないと腹をすかせた生き物にすぐ見つかっちゃうぜ」


ドキアは急いで村に向かいました。


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