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悪役令嬢マリールイーゼは生き延びたい。  作者: いすゞこみち
アカデメイア/準生徒編(12歳〜)
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66 アレクトーの性質

 私の隠していた事情は私にとって大事な主要人物のほぼ全員に知られてしまう事になった。それで後日――と言ってもシルヴァン達に知られた翌日だけど、アベル伯父様の指示で私の部屋に事情を知った全員が集められていた。


 アベル伯父様、ローディ叔母様、それにジョナサンとエドガーのイースラフト王国のアレクトー家。お父様とお母様、テレーズ先生とフランク先生、それに私の友人のシルヴァン、バスティアン、ヒューゴ、セシリアとルーシー。リオンと私を含めると総勢十五人――だけどそこにはお兄様の姿だけが無い。


 アベル伯父様は全員を見渡すと呆れた様子でリオンにぼやいた。


「――あのなリオン……お前、色々と勝手にやりすぎ」

「ごめんアベル伯父さん。だけどこうしないともうリゼが限界だったんだよ」


 リオンがそう答えると伯父様はため息を吐く。そうして私を見ると頭を掻いて諦めた様子に変わった。


「……まあ、それも仕方ないけどな。お陰でこうして口止めをしなきゃならん――さて、ここにいる全員が嬢ちゃんの抱える問題を把握してる。その上で絶対に守って貰わねえとダメな事があるからこうして集まって貰った。今からそれを話すから全員、絶対に口外しないと誓って貰うからな?」


 その言葉に大人達は全員が頷く。だけど私やリオン、それにシルヴァン達は事情が分からず少し戸惑っている。特にアベル伯父様は隣国の英雄として相当な有名人だ。なにせイースラフト王国はこのグランドリーフ王国と他国の間にある国で国境線での防衛戦が何度も行われている。この国が平和でいられるのは実質、この伯父様の存在が物凄く大きい。だからこの国でもアベル伯父様を知らない人はいない。そんな超が付く有名人を前に緊張しない子供なんていないに決まっている。


 さて、アベル伯父様は私を見て話し始めた。


「――まず、嬢ちゃん……マリールイーゼが使える英雄の魔法については全員絶対に口外するな。知っている者同士であろうと話題に出すな。もしこれが他国の人間に知られでもすりゃあ絶対に大陸全体の火種になる。嬢ちゃんの力はそれ位常軌を逸してる。もし知られればそれを知るお前らも拉致誘拐や暗殺の対象になる。大陸中の各国から狙われる事になるからな?」


 そんな脅しめいた言葉にシルヴァンが目を剥いて反応する。


「ちょ……アベル様、それはどう言う事ですか? マリーの力は単なる未来視なんでしょう? それがどうしてそんな……」


 だけど伯父様はすぐにその問いに答えた。


「……あのな、シルヴァン。各国の神殿にいる姫巫女が何故厳重に守られてると思う? そりゃあ神託で未来を知る存在だからだ。当然命を狙われるから厳重に守ったり隠してるのが現状だがマリールイーゼの未来視は正確過ぎる。現状は自分の命に関わる事だけだが英雄の魔法は成長する。そんなもん本当なら今でも放置出来ねえんだよ。分かったか?」


 それを聞いて流石にシルヴァンも青褪める。だけどそれを聞いて私もやっと理解する事が出来た。


 以前、クローディア叔母様の旦那様、アーサー叔父様に養子縁組の話をされた事があった。あれはきっとこれが関係している。戦争の理由は資源だけど戦う為にも必要な情報リソースはその最たる物だ。知っているかどうかで戦争自体が起きない位に圧倒的な事もある。例えばアベル叔父様の存在みたいに。


 そっかー、アンジェリンお姉ちゃんとの勝負で王様が慌てたのってそう言う理由があったんだ。その後に私に謝りに来たのもきっとそっちの方が大きい。だって実際に体力のない私が訓練してる正規生を相手に完全完封しちゃったんだから。だけどまさか自分が国家機密状態だとは思ってもなかった。


 だけどアベル伯父様は真面目な顔で頭を下げる。


「……だから姪っ子が普通の人生を送れる様に頼む。もしこれが聞き入れられないなら俺達アレクトー家は大陸中の国全てを根絶やしにするしかなくなる。そうならない為に頼む」


 ……脅しだと思ったら、もっと酷い恐喝だった。だけど伯父様が言う事は不可能じゃない筈だ。だってアレクトー家は例え女だろうとそこにいるだけで魔法が使えなくなる。戦闘で使う軍事魔法も全部無意味になる。その上に英雄の魔法まで使われれば普通の人間は絶対に勝てない。だって実際に一族で最弱の私でもアンジェリンお姉ちゃんとの勝負で歳上の正規生を完封出来てしまう位に圧倒的な差があるんだもの。それが魔王と呼ばれた一族の由縁だ。


 だけど私にはそこまでする理由が分からない。酷い事を言えば私を幽閉するなり処刑するなりすれば一番簡単な筈だ。


 不思議そうに見つめる私を見てアベル伯父様は苦笑すると近付いてきて私の頭に手を置いて撫でた。


「なんだ、変か? 俺は国の為に戦ってる訳じゃない。大事な家族を守る為に戦ってるだけだ。けど国が身内を守らないなら国相手に戦う。言っとくけどな、アレクトーって家は元々家族を何より大事にするんだ。それをしなかったレオボルトは連れ帰って俺が鍛え直す。だから心配すんな。まだ子供のお前は幸せになる事だけ考えてりゃ良いんだよ」


 そんな伯父様の言葉にお父様とお母様、それにクローディア叔母様が無言で頷く。そして他の皆も納得した顔で頷いた。


 話は結局それだけだったけど、やっぱり私はお父様とお母様の子に生まれて本当に良かったと思った。


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