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悪役令嬢マリールイーゼは生き延びたい。  作者: いすゞこみち
アカデメイア/正規生編(15歳〜)
203/319

203 再び孤児院へ

 テレーズ先生から許可が降りた日の午後、早速私達は孤児院『メリアスの家』に向かって出発していた。


 理由は簡単で一応まだ何かある事を警戒する為で後日にすると何か計画を練られる可能性があるからだ。午前中に申請が通った事を聞いてすぐに午後出発すればすぐには対応される事もない。まああくまで一応ね?


 そしてメンバーは以前と同じで私とリオン、クラリス、それにマリエルとマティス、セシルの六人だ。それ以外に今回はヒューゴがいる。


「……だけどヒューゴ、構わないのか? セシリアもいるし別に残ってもよかったと思うけど……」


 リオンが遠慮がちに尋ねる。それを聞いてヒューゴはさも当然と言った顔ですぐに返した。


「もしセシリアが起きていれば必ず来た筈だ。そのセシリアが来れないのなら俺が代わりに同行すべきだ。恐らくセシリアもその方が喜ぶ」


 相変わらずヒューゴは配慮の方向性が普通じゃない。きっとセシリアもヒューゴが一緒にいてくれたら喜ぶだろうけど、その後絶対こっちに合流しようと考えそうな気がする。今、リオンの部屋にはバスティアンとレイモンドの二人が残ってるし伝える様にお願いしてある。セシリアは場所を知っている筈だし追い付いて来ようと思えば簡単に来れる筈だ。


 そして同行条件の護衛の騎士は、驚いた事にレオボルトお兄様だった。


「……だけどメリアスの家か……随分久しぶりだな……」

「お兄様はあの孤児院、よく知っているの?」


「うん、マール。父上と一緒に良く訪れていたよ。あの孤児院の子供達は人懐っこくて余り大人を警戒しないんだ。だから父上と僕で逃げる訓練も指導してる。孤児を狙った誘拐や人身売買も裏ではあるからね?」

「……へえ……そうだったんだ……」


 そんな話をしながら私達は孤児院に到着する。前もってテレーズ先生が連絡を入れてくれたらしく職員の女性達が私達を迎えてくれた。子供達も前に一度会っているからそれ程警戒していない。だけどそこにお兄様が入った瞬間、それまで割と大人しかった子供達が一気に押し寄せてきた。


「――皆、久しぶりだね。元気にしてたかい?」


「……レオ様! やっと来てくれたのね!」

「レオお兄ちゃん、寂しかったよう!」


 うお……なんか凄え……と言うかお兄様を囲んで集まってるの、大半が女の子だ。てかこれ、人懐っこいとか大人を警戒しないんじゃなくて単にお兄様が人気あるだけじゃないの? 男の子も数人いるけど完全に女の子達に囲まれていて近付けないみたいに見える。まあお兄様、かなりのイケメンだしなあ……お父様と同じで子供に対しては本当に優しいし。その上英雄として有名だから男女問わず子供には大人気みたいだ。


 そんな風に全部お兄様に持っていかれた感じで脱力していると突然小さな人影が駆け寄ってきて私のお腹に抱きついてくる。油断していた所為で身構えていなかった私はその勢いに一瞬呼吸が出来なくなった。


「……ごふぅっ……」

「姉ちゃん!」


 それで倒れかけた私を慌てて支えてくれたクラリスが抱きついてきた相手に向かって声を上げる。


「だ、大丈夫ですかお姉ちゃん⁉︎ もう、レミ君、お姉ちゃんはひ弱なんですからそんな抱きつき方をしちゃダメです!」


 ……クラリス、言い方……。だけど抱きついてきたレミは私の身体から離れようとしない。顔だけを上げて今にも泣き出しそうだ。


「ルイ姉ちゃん、僕、心配してたんだよ!」

「……ごめんね、レミ。私もちょっと色々あったんだよ……」


 まだ痛い脇腹をさすりながら私は何とか答える。だけどレミは私の腰にしっかりしがみついて離れない。だけどあの時初めて会ったのにそんなに心配してくれてたとは思ってなかった。小さな頭を撫でてやるとしがみついていた腕から少し力が抜ける。それで私は昔の事を思い出していた。


 あー……レミってちょっとリオンに似てるんだ。初めて会った頃の五歳だったリオンに。ちょっと意地を張ってたり不意に弱い処を見せたりする処が。まだ五歳なのに変な処で大人ぶった考え方で必死に大人であろうとする辺りが。色々我慢して聞き分けが良い子でいようとする部分が。


 勿論性格が似てる訳じゃないから実際はかなり違うけど、甘えたいのに甘えられなくて我慢してる処が凄く似てる。これはこの孤児院の子全員がそうなのかも知れないけど懐いてくれるのが何だか嬉しい。思わず隣にいるリオンを見ると彼は不思議そうに首を傾げる。そしてしっかり抱き返すとキョトンとしたレミが首を傾げる。それで私は笑って尋ねた。


「……ねえ、レミ? 今からまたお菓子とか作ろうと思うんだけど、レミも手伝ってくれる?」

「……うん!」


「よーし、それじゃあ早速キッチンに行こっか!」

「分かったよ!」


 元気良く答えるとレミは私の手を引っ張っていく。その後ろ姿を眺めながら私は今日、ここに来て良かったと思った。


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