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悪役令嬢マリールイーゼは生き延びたい。  作者: いすゞこみち
アカデメイア/正規生編(15歳〜)
180/321

180 コレットの召喚

 調査の結果、ベアトリス・ボーシャンの遺体とされていた物は使用人の一人の物だった事が発覚した。まさか歯から遺体が本人かどうか分かると思っていなかったらしくレンジャーギルドは大騒ぎになったらしい。


 クラリスは元々お医者様の家で育って一緒に診察について行く事も多かったから確認方法を思い付けたんだろう。昔は鉛入りの白粉を使う事が多かったから歯の診察を受ける令嬢が多かったそうだ。最近は鉛入りは禁止されているけどやっぱり歯を気にする貴族令嬢は多い。当然医者の手元には診断書が残っていて、それが入れ替わりの決定的な証拠となった。この世界にも司法解剖みたいな物はあるみたいだけどそう言う診察記録との照合までは行われていなかったらしい。まあ掛かり付け医も皆バラバラだし仕方無い事なのかも知れない。


 アカデメイアでは全校生徒を対象にした面談がテレーズ先生主導で行われる事となった。学外活動に出る生徒を中心に部外者からの接触があったかどうかを確認する為だ。孤児院の職員も部外者扱いですぐにレンジャーギルドが実在するかをチェックする。それらの結果、なんと三〇人以上の生徒が身元不明の部外者と接触していた事が判明した。


 だけどジーン・ノエル――ベアトリス・ボーシャンの行方は依然として不明のまま。あちこちの孤児院にもその名前自体が無い。きっとあちこちで偽名を使っていたんだろう。それらしき人物の姿も見当たらず結局最初と変わらず首謀者は不明のままだ。但しベアトリス・ボーシャンには主犯容疑が掛けられる事となった。


 そして問題はそこから後だ。コレットに対して王宮の審問会から召喚状が発行されてしまった。何せ唯一はっきりしている容疑者と直接接触した上にその実妹だ。状況だけ見れば明らかに怪しい。召喚期日の前日の昼下がり、その事を話しに来たお父様に私は思い切り突っ掛かっていた。


「――お父様、コレットは何も知りません! なのにどうして召喚状なんて出てるのよ⁉︎」

「……ルイーゼ、少し落ち着きなさい」


「だってもう明日なんでしょ⁉︎」

「そうだね……少しその後の詳細を話しておこうか。件のベアトリス・ボーシャンは最低でも四人、火事で亡くなった使用人達を含めると二〇人以上を手に掛けている。ここまで大きくなるとどうしようもないんだよ」


「……え……四人? 三人じゃなくて?」

「ボーシャン家の火災は恐らくベアトリスによる放火だ。それでボーシャン子爵夫妻、入れ替わった使用人、それと別件で男爵家令嬢が焼死しているがこれもベアトリスによる物と推測されている。恐らく同じ油を使ったのだろうね。遺体の損傷状況が似過ぎていたんだよ」


 そんな事、私は全然考えていなかった。考えてみれば当然だけどボーシャン家は火災で大勢亡くなっている。あの先輩が放火したんだろう。だけどそれ以上に今回の事自体が私の所為だと思い知らされる事になった。


「……元々、王国が運営するアカデメイアの施策で公爵家令嬢のお前が命を狙われたんだ。国も当然事態を重く見ている。ベアトリス・ボーシャンは既に王国反逆罪が適用されている。あのコレットと言う少女は相当酷い扱いを受けていたらしいが実の妹で関係を否定出来ない。一応レンジャーギルドから報告書が提出されているが尋問すべきだと言う声も多い」


「……そんな……コレットを尋問するの?」

「勿論、その場には私も立ち会うからね。無体な事はさせないよ」


「お父様、私もコレットと一緒に審問会に出る事は出来ませんか?」

「それは不可能だよ。被害者の同席は原則許可されない。ルイーゼ、例えお前が大丈夫だと言ってもね。慣習とは理由があって出来た規則だよ?」


 お父様にそう言われて私は何も言い返せなかった。メリアスの家で起こったジェシカ・ゴーティエ先輩の事件も全部私だけの問題だと思っていたけど実際はそうじゃなかった。私の立場は確かに貴族社会では有利に働くけど逆に何かあった時は大問題に発展する。公爵家令嬢の肩書きはこんな事が起きると保護される立場になる。自分で動けなくなってしまう。


 それにレンジャーギルドに手伝って貰うと言う事は私達が調べた情報が全部王国側に筒抜けになると言う事だ。ロックさんは確かに調査結果を教えてくれるけど私達が突き止めた事も全部報告する。ロックさんは私の護衛だけどレンジャーギルドは国の管轄組織だ。そこに所属するロックさんが手に入れた情報は当然全部レンジャーギルドに還元される。


 私は必死に何か出来ないかを考えていた。こうなってしまうともう私がコレットの為に直接出来る事がない。困った時は相談して欲しいと言ったのに彼女の為に出来る事が無いのは心苦しいのを通り越して辛過ぎる。


「……お父様。じゃあ責めて、明日コレットが連れていかれる前に会ってお話する位は出来ませんか?」

「うん? そうだな……まあ、それ位なら話を通して置くよ」


「……有難う御座います」


 お父様にお礼を言うと私は隣のリオンの部屋に向かう。きっとコレットはアカデメイアの生徒達から色々噂される。責めてそれ位は何とかしないと私が我慢出来ない。召喚状が出た時点できっとコレットも知らなくて良かった事を全部知らされてしまっているだろう。


 出来る限りの事はしないと――そう決意すると私は扉をノックした。


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