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悪役令嬢マリールイーゼは生き延びたい。  作者: いすゞこみち
アカデメイア/正規生編(15歳〜)
143/320

143 打ち合わせ

 婚約パーティをする事にはなったけどルーシーとセシリアも一緒にさせて貰う事にした。だって二人も婚約したのに私だけ発表って何か嫌だし。それに二人は実家が遠いから告知パーティもいつ出来るか分からない。それならどうせだし皆一緒にした方が良いと思ったのだ。


 だけど流石にアカデメイアでパーティをする訳にもいかない。校内には他の生徒も大勢いるし私達のパーティなんてすれば以前みたいに他の生徒達から憎まれてしまうかも知れない。私の実家は王都郊外でアカデメイアから割と近い。そこでうちでパーティになった。


 それで打ち合わせでセシリアとヒューゴ、ルーシーとバスティアンに先にうちに来て貰う事になったんだけど……。


「……マリー、私、今、死ぬ程、緊張、してるん、だけど……?」

「ん? セシリア、もっと気楽で大丈夫だよ?」


「そ、そんな事言われたって、無理!」


 そう言ってセシリアはヒューゴの腕にしがみついてしまう。だけどヒューゴは対照的に落ち着いた物だ。


「……マリー様、すまない。今回はマリー様のお父上もいらっしゃるのだろう?」

「え、うん。お父様も打ち合わせに出るって言ってたけど?」


「知らないだろうが俺達辺境伯家にとって英雄セドリック公は憧れの対象なんだ。我が国では直接戦争がないから一緒に戦う事も出来ないからな。かと言って国境守護があるから随行も許されない」

「でもヒューゴ、いつもと同じで凄く落ち着いてるじゃない?」


「……そうでもない……」


 そう言うとヒューゴは握り締めた拳を差し出した。だけど手を開くでもなし、一体何を見て良いのか分からない。それで首を傾げて見ているとゆっくり拳が開かれる。ぶるぶる震える指先が開かれていくと掌にぷつぷつと血が浮かんでいる。どうやら握り過ぎて爪先が掌に傷を付けてしまったみたいだ。


「た、大変、クラリス! ちょっと来て!」

「――え、はーい、何ですか?」


「ヒューゴが掌、怪我してる! 治療してあげて!」

「え? 怪我って……怪我する事ってあったんです?」


 そう言って奥からクラリスがぱたぱたと駆けて来る。それでヒューゴの手を見た途端呆れた声を上げた。


「……そんな強く握り締めてちゃダメじゃないですか! ちょっと奥に来てください! セシリアお姉ちゃんも顔色悪いです! お薬を準備しますから二人共一緒に来てください!」


「……う……すまん、クラリス嬢……」

「……うう……なんか、気持ち悪い……」


 それで二人はクラリスに連れられて奥の部屋に行ってしまう。後に残ったバスティアンとルーシーは顔を見合わせて苦笑した。


「……と言うかバスティアンは兎も角、ルーシーは意外と落ち着いてるね?」

「そりゃあね。マリーの叔母様は優しいの知ってるし。でも叔父様はちょっと怖いよ? 英雄って結局、軍人さんなんでしょ?」


 そう言ってルーシーはバスティアンの後ろに隠れてしまう。そんな彼女を見るとバスティアンは苦笑した。


「……ルーシー。英雄一族って軍属じゃないんですよ」

「え……そうなの?」


「軍属だと軍隊の指揮下で動く必要が出てきますからね。英雄は単独で行動する事が多いのでどちらかと言えば近衛騎士なんですよ。だけど陛下も命令出来ない王国唯一の存在です。なので多くの令嬢達がマリーさんの兄上、レオボルト様に今もまだかなり夢を見てるんですよね」


「ああ……そう言う事情あったんだ?」

「何せ王家と並び立つ存在ですから。そこに輿入れ出来れば令嬢達には最高の出世になります。まあでも魔法が使えなくなると知って諦める人が多い様です。やっぱり人間は一度手にいれた便利さを手放せなくなると言う事なんでしょうね」


 そう言ってバスティアンは笑った。だけどその影に隠れてルーシーは私を見ると苦笑する。それで何となく察した私も苦笑して返した。


 流石にバスティアンも出産前の痛み止めに魔法が活用されている事までは知らないみたいだ。まあどうこう言っても男の子だし。きっと将来結婚してルーシーに赤ちゃんが出来たら気付くんだろうな。


「……そうそう、マリーさん。ヒューゴ達は実家で既にパーティをしたらしいんですが問題はありませんか?」

「それは問題ないけど、そう言えば二人は実家に戻ってたよね?」


「ええ、冬季訓練がありましたし。それに二人の家はどちらも辺境伯なので両家が揃った状態で婚約式を執り行ったみたいです」

「へえ……って、辺境伯とか関係あるの?」


「例えばルーシーは伯爵家令嬢で僕が侯爵家なので彼女の実家では婚約式を行いません。うちでは彼女のご両親を招待しましたけど婚約式では普通両家の親は揃いません。爵位や地位が高い家が式典を請負います。まあ、貴族社会の常、と言う奴ですね」

「ふぅん……あ、じゃあルーシーも婚約式は終わってるんだ?」


「婚約式は元々身内だけでしますからね。流石にうちは簡易式でしたけど。でもマリーさんは古式だったんじゃないですか? 何せ公爵家同士で地位的にも契約をしっかりしないと不味いですし」


 それで苦笑して私は頷いた。だけど婚約式にも色々と決まり事があるだなんて全然知らなかった。そう言えばグレフォールに行った時も普通にバスティアンとルーシーが一緒だったけど、あれって婚約式を済ませたからシェーファー侯爵家側もルーシーを身内として扱ってたのかも知れないけど……やっぱり貴族社会ってよく分かんないな。


「ま、いいや。取り敢えずパーティの段取りと、招待する人を選ばないといけないのよ。私の人生初めてのパーティだからってお父様が物凄く乗り気でね? だから悪いんだけど二人共、付き合ってね」


 そう言うと私は二人を応接間に案内する為に先頭を歩き始めた。


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