表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢マリールイーゼは生き延びたい。  作者: いすゞこみち
アカデメイア/正規生編(15歳〜)
116/319

116 セシリアの異変

 三人でリオンの部屋に行くとクラリスが一人でいた。すぐに立ち上がると申し訳なさそうな顔で扉まで駆け寄ってくる。それでリオンが首を傾げて尋ねる。


「……あれ? クラリス、どうしたの?」

「あ、えっと……今、セシリアお姉さんが来てて……」


 それで私はキッチンの扉を見た。ルーシーが私の部屋で一緒に生活している事はセシリアには伝えてはいた。いつでも会いに来てとは言ったけどセシリアは余り乗り気じゃなかった。二人は喧嘩もそれなりにした事があったらしいけど恋愛で揉めた事がないらしい。それでどう顔を合わせれば良いのか分からず戸惑っているみたいだった。


 だけど今来ているって事は二人共黙ったままでまともに話も出来ていない気がする。ルーシーだって自分だけ周囲から嫌われてるみたいに思い込んでいたし、セシリアだってあの調子のままならまともに話せないだろう。それが気になって仕方がない。それで私は決心するとリオンとマリエルに言った。


「……ごめん、私、ちょっと様子見てくる」

「え……でもリゼ、二人で話をさせた方がよくない? 下手にリゼが入ると逆に話せなくなったりしないかな?」


「それなら……私もちゃんとお話したいです。ルーシーさんやセシリアさんに自分の口で説明したいです。ルイちゃんに全部任せっきりは誠実じゃない気がするから」


 そしてマリエルも少し考えると口を開く。マリエルの気持ちも良く分かる。だってもし私の所為で二人が同じ事になれば多分私も同じ様に自分で釈明させて欲しいって考えるし。だけどそうやって三人顔を突き合わせて悩んでいるとキッチンの扉が突然開いた。


「――クラリス、気を使わせてごめん……あ……」


 入ってきたのはルーシーだ。だけど室内の私達、特にマリエルを見た瞬間身体がびくりと震えて固まってしまう。そのまま俯いたままで動こうとしない。それでどうしようかと迷っているとマリエルが顔を上げて立ち上がると動かないルーシーの元に駆け寄った。


「……ルーシーさん。確かに私はバスティアン君が好きですけど異性として好きなんじゃありません。頼れる先輩として、人間として尊敬出来るって意味の好きです。だから何か聞きたい事があるんだったら幾らでも私に言ってください。何でも答えますから」


「……本当に、バスティアンの事、好きじゃ……ないの?」

「好意はありますけど恋愛じゃありません。そう言う意味ならむしろルイちゃんの方が持って帰りたい位に好きです」


 ……おいおい。マリエルは私をそう言う目で見てたの? 緊張感をほぐす為だとは思うけど真剣な表情過ぎてちょっと冗談に聞こえないのが怖い。だけど取り乱すかと思っていたけどルーシーは意外と冷静なままだった。俯いたままホゥと息を吐き出すと小さく呟く。


「……そっか。じゃあ、マリーが言ってた通り……だったんだ……」


「ですから大丈夫です。私はルーシーさんからバスティアン君を取ったりはしません。それに私も今の処、誰かと恋愛なんてしてる余裕はありません。変に目立っちゃいましたけど、多分私はこれからも誰も好きになれないと思います。だから安心してください」


 だけどそこでまたマリエルが気になる事を口にする。恋愛なんてしてる余裕がない? これからも好きになれない? それって一体どう言う意味なんだろう。それが私には理解出来なかった。


 マリエルは主人公で攻略対象を相手に恋愛関係になるのが私の記憶にある展開だった。なのに目の前にいる彼女はそれを根底から覆す事を言っている。実際、マリエルの人気はかなり凄いし男子に限らず女子にも結構人気がある。


 だけど考えてみたらそれ自体が変だ。乙女ゲームの主人公は基本的に『男子』にはモテるけど『女子』とは余り絡まない。多分普通なら主人公と友達になれるのは恋愛で対立しない相手だけだ。なのに彼女は普通に男女隔てなく人気がある。あの男前過ぎる衝撃が凄かった事も原因だろうけど明らかに本来の展開から乖離してしまっている。


 そして二人の様子を眺めているとルーシーが顔を上げて私を見て思い出したかの様に話し始めた。


「あ……そうだ、マリー。セシリアがなんだか変なの」

「え……変?」


「うん。何だか全然話そうとしないし、何か考え込んでいきなり泣き出したりするの。クラリスが気を利かせて私と二人にしてくれたんだけど、ずっとそんな感じで……私、どうすれば良いか分からなくなって、それでクラリスを呼びに来たんだけど……」


「……え、セシリアが? 今もまだ泣いてるの?」

「うん……今までにそんなの、私も見た事がなかったから……」


 ルーシーにもどうすれば良いか分からないらしい。二人は確か幼い頃から友人で私相手よりも余程色々と話せる仲の筈だ。ルーシーが一つ歳下な事もあるけど元々一人っ子で甘えん坊な処があって世話焼きのセシリアがお姉さんみたいな立場にある。そんな彼女が泣き出して何も話せないと言うのは明らかに異常だ。


「……ルーシー、私もセシリアと話してみても良い?」

「ルイちゃん、私も行く。何となく私が絡んでる気がする」


 私がそう言うとマリエルが私の袖を摘んで言う。それで私も頷くとルーシーとマリエルと一緒にキッチンの扉をくぐった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ