記録14:ショータイム再び
⚠今回はちょっとグロい表記があります。お気をつけを...
事務所に帰った僕達は、早速武器の取り扱い方を見た。
まず、僕の武器は仕込み銃のような物で、杖の支柱全体が消音器、そして持ち手の部分が、やや斜めっていて握りやすいグリップとなっている。持ち手の付け根にあるボタンを押し込むと、引き金が出てくる。
弾丸は9mm×19パラベラム弾のホローポイント弾だ。
火薬は少なめで、杖の石突の部分はビニールのようなもので覆われていて、発射したら弾丸がビニールを突き破ると言った仕組みのようだ。ちなみに、ウェルロッドMk.3ではなく、Mk.2なので、いちいち手動で持ちての端っこにあるボルトを引いて装填しなければならなくなっている。
ちなみに総重量1.5kgと結構重い。しっかり杖として使わないと腕が疲れそうだ。
そして問題なのがアレックスの武器だ。箱の総重量からして尋常じゃない重さ(50kg)だが、なんと弾薬が20kgだけだった。
そう、銃本体の重さが30kgということだ。
どんな弾薬を使えばそんなに重くなるんだと言いたいが、見た所、彼の銃は複合小銃のようで、説明書には、こう書かれていた。
【兵装:20mm口径弾使用の中折れ式ダブルバレルライフル 及び 7.62×51mm NATO弾使用のHK417】
武器の見た目は、上に中折れ式ダブルバレルライフルが、そしてその下にHK417が装着されており、各所にピカティニー・レールが装着されていた。
標準装備としてレーザーサイト、消音器(HK417のみ)、高倍率スコープ、フォアグリップ、特殊ストックが装備されていて、色々ゴチャゴチャしていたが、重いということは分かった。
それをアレックスは片手で軽々と持ち上げて、くるくる回してニッコリと笑って呟いた。
「パーフェクトだ、Waffenschmied(武器職人)。これこそ俺の至高の品だ」
口をぽかんと開ける私の前で、彼は銃を付属の大きな箱にしまい、携帯用ベルトを巻き付けて背負った。それも、いとも軽々と。
僕がぽかんと口を開けているのを見て、彼は笑って言った。
「俺じゃなきゃこんな武器は作らないさ。それに、これはサイボーグ用なんでな。お前のそれは人間用だ。大切に使えよ」
「あ、ああ、うん。大切にするよ」
僕は杖を突きながらアレックスに近寄った。彼は、銃を杖のように扱う僕を見て言った。
「そうだな。何かその銃にも名前をつけてやったらどうだ?俺はもう決めてるんだ」
「何ていう名前?」
「Wilde Kämpfer(狂戦士)さ。いい名前だろ?」
「まあ、確かに」
僕は自分の杖を見て、名前を考えた。数分間ずっとそこに立って考えていたので、アレックスもそろそろ退屈し始めた時、良い名前が僕の脳内に浮かんだ。
「...テミス。テミスってどうかな?」
「掟、法か。なかなか良いんじゃないか?」
「ふふっ、ありがと。じゃあ、そろそろ行こうか」
「どこに?」
「依頼者のぼったくられ先」
◆
僕達は、とあるキャバクラの前に来ていた。
アレックスは嫌そうな顔をして言った。
「こんな店、アジア人のどこが良いんだよ...」
「はいはい。そういう事言わないの。人種差別だよ?さ、入った入った」
僕は彼の背中を押して、キャバクラの中に入った。店はまだ昼間なので営業はしていなかった。変わりに、清掃員が掃除をしていて、彼らは僕が近衛隊の捜査許可状を見せると、顔を青ざめさせて店長を呼びに行った。
店長は若い男で、勿論慌てた様子で転がりながら出てきて言った。
「何の用でしょうか?」
「いや、小さなことだよ。国の法令に従わず、ここの店が異常に高い料金を請求するとの情報が入ったので、少し調査に来たまでさ」
「あの、通報者は男でしょうか?」
「え?ああ、そうだけど。それがどうしたの?」
僕が聞くと、店長は悲しげな顔で説明を始めた。
「実は、あの男は、俗に言う迷惑客なのです。この店に来ては女の子たちに過度に猥褻な行為を繰り返し、連絡先の交換を強要し、交換しなければストーカーするといった業務妨害をしてくるのです。だから、この店としても、その男が入ってこれないように料金を高く設定するしか無いのです。そんな男を、信じるか、信じないかはあなた次第ですが、ぜひ、一度お考え下さい」
彼が言い終わると同時に、アレックスが僕の腹の中に浮かんできた疑問をぶつけた。
「じゃあ、出禁とかにはしないのか?」
「彼にそんな事をすればかえって逆効果になり得ます。あんな男に、何をされるか分かったものではありませんから、料金を釣り上げて諦めさせるしか無いのです」
「それなら...って、もう時間切れか。アッシュ、気づいてるよな?」
分かっている。この店は、僕達をここで抹消するつもりだ。確実に何処かの組織の息はかかっている。これだけで十分な手柄になっているが、問題はここをどう切り抜けるかだ。足音と気配から読んでざっと十五、六人だ。二人で対処できるかは不安だし、相手がどんな武器を使っているかもわからない。アレックスのキャパにも限界があるだろうから、僕も戦わなくてはならない。
「じゃあ、強制的に差し押さえますね」
「そんな...もう少しお待ち下―――」
タァンッ!
狭い室内に、ホローポイント弾の銃声が響き渡った。音が軽減されているとは言え、音の反響しやすい部屋の中じゃ、十分うるさい。
足元に穴が空いた男は腰を抜かして叫んだ。
「こ、殺せぇっ!」
笑笑とガタイの良い男たちが拳銃を持って物陰から出てきた。
その瞬間、アレックスがニヤリと笑って呟いた。
「イッツ、ショータイム」
僕がオフ泥居て彼の方を見ると同時に、彼はWilde Kämpferを取り出して、7.62mmの銃弾を乱射した。
完全に人体にはオーバーキルだ。
当たった人間はその部位が消し飛んでいる。
そして、アレックスはサイボーグなので、拳銃弾程度ではびくともしない。
僕は店主にテミスを突きつけて言った。
「生きて拷問されて情報を吐くか、ここで情報を全部い吐てから死ぬか、選べ」
男は震える顎で何とか言葉を作って、その唇の隙間から漏らした。
「わ、分かった。情報は全部吐くから、命だけは許してくれ!!」
僕は男をうつ伏せにして両腕に手錠代わりに結束バンドを巻き付けた。
それから、杖で頭を突いて気絶させた。
後ろを振り向くと、アレックスは、ほぼ全ての敵を片付けていて、残っている者も、もう虫の息だった。
治せそうなやつだけ手当をして、近くの公衆電話から近衛隊を呼んだ。
わずか数分で彼らは到着し、残っている死体ごと回収して行った。
近衛隊車両の背中を見送るアレックスに、僕は言った。
「さっきの、イッツ・ショータイムって、誰かから聞いたのか?」
彼は、少し不思議そうな顔をしたが、すぐにすんなりと答えてくれた。
「ああ、そうだな。今はもう十年間も行方不明で、連絡も取れていないんだが、その人は昔、俺の部隊の隊長だったんだ。EVが発足するとほぼ同時に失踪して、それから行方知らずって感じさ。イッツ・ショータイムって言葉は、その人が戦闘行動を開始する前に言っていた言葉で、俺は今でもお守り代わりに使っているんだ」
感慨深そうにため息を付くアレックスに、私が例の基地で出会った、あの女が同じ言葉を使っていたなんて言えないので、相槌だけしておいて、とりあえずその場は黙った。
アレックスは何かを思い出したように見せの中に戻っていって、従業員室に入って行った。
私も急いで後をつけていくと、従業員室の一室から、やけに異臭がして、その部屋が真っ暗になっていたのだ。私が非常用ライトを建物内から取ってきて点けると、そこには檻の中に鎖で繋がれた女性たちが居て、内、何人かは腐乱死体として息絶えていた。
残っている人間も、ほとんど話せていない様子だったが、その中で一人、声を上げた少年が居た。
やけに見覚えのある少年で、まだ十五歳程度の見た目をしていた。多分、最近見た行方不明者の少年だったはずだ。しかし、少年の見た目は、男と言うより、女に近く、俗に言う男の娘の部類だったのでよく覚えていたのだろう。
「ケテ...タスケテ」
彼はそれだけを呟き続けていた。僕が檻の南京錠を破壊しようとテミスを突きつけた時、アレックスが僕の手を掴んで制止した。
「冷静になれ、アッシュ。感情に突き動かされるな」
「...っ、そうだね。悪かった」
僕達は近衛隊の清掃班を呼んだ。
彼らは、ICUに入った医者のような防護服を纏った姿で現場に到着するなり、電動カッターで檻と鎖を切って人質を完全に解放して病院に搬送した。
死体はゴミ袋の中に無造作に放り込まれ、元々人間の一部だったと見られるヘドロのようなものも、ヘラでこすり取ってゴミ袋に突っ込んだ。
僕達はその一部を見ていたが、さすがに物も言わずに淡々と人間をゴミ袋に突っ込んでいく姿に吐き気を催し、一旦別の部屋に向かった。
パーフェクトだ、うp主。
お読み頂きありがとう御座いました。次回もこうご期待!
次回『真相解明』




