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起 

ついやってしまった。

いや、つい殺ってしまったというべきか。

何を考えているんだ、私は。

やけに目の前は明瞭で頭がゆだりそうなのか冷えているのか分からない。

俺の目の前には鮮烈な赤が広がっている。




最初はどうという事はない、ただの意見の相違であった。

それがヒートアップした結果が目の前に広がる現実だ。

どうしよう。

頭の中では出頭するべきなのは分かっている。

自分はカッとなった結果人を殺してしまったわけで、それはどんな事情であれ許されない事だ。

だが、そんなことをしたら、俺の人生はおじゃんだ。

けど、自分は出頭するべきで・・・


頭の中で意見が堂々巡りを続ける。

どうすればいい。

どうすればいい。

どうすればいい。

そうやって悩んでいる間にも血が広がる。

私は急いで風呂場に死体を運んだ。


風呂の浴槽内に死体を運んだ私は、少し落ち着いた。

出頭するべきであるが、出頭したくはない。

そのような外道の考えが浮上してくる。

なんともあさましく、どれだけ自分が可愛いのか。

それでも、私は出頭はしたくない。

ここまで自分が醜いとは思わなかった。

けれど今はそんな自分探しをしているべきではない。

今自分がやるべきことは何か。

分かっている、それならやるべきことは一択だ。


死体を隠す。


それをすれば、殺人の罪の上に死体遺棄だ。

太陽の下を堂々と歩くことは二度と出来ないだろう。

けれどバレなければやってないのと一緒だ。

それが、頭の中ではそれが最も正解であるように感じた。

そんな訳が無いのに。


私は現実逃避している頭と共に、周りの状況を確認した。




私は閑散とした住宅街にあるアパートの一階に住んでいる

壁は厚く騒音被害はない。

隣りの住人はあまり家に帰っている様子はなく、毎朝ゴミを出しに行ってるときに見かけることもない。

前回顔を見かけたのは、2ヶ月も前だったように思い出す。

彼は昼の11時頃に部屋にきた。その時間帯はここらの人通りが少ない時間帯だ。

彼が私の部屋にきたというのを見た目撃者も少ないだろう。きっとそうだ。

また彼と私の家は20分程の距離にあり、その間を移動する為だけに使う公共交通機関もない。

状況を整理しているうちにさっきよりも冷静になってきた。

とりあえず警察が私の部屋にたどり着くまでには時間がかかるだろう。


それなら遺体遺棄はどうするべきかを考えなくてはならない。

地面に埋めるというのはよろしくないだろう。

埋めた後に腐っていき、その結果掘り返され発見される。そもそも自分の持っている土地はない。

ならば、海だろうか?それも死体が打ちあがったら終わりだ。何より腐敗ガスで海上に浮いてくる。

どうするべきか・・・

ネットで調べるのも履歴にそれらしいものが残るのはよろしくない。


切断して少しずつ可燃ごみとして出すのはどうだろうか?


頭におぞましい考えが閃く。

しかし、それしかないように思う。

目の前の友人であったものを見る。


私は工具箱からノコギリを取り出した




まずは首から上を切り落とした。

血が蛇口から流れる水のように流れた。

酷い吐き気と匂いが私を蝕む。

それでも、やると決めたならやりきらなければならない。

覚悟は決めた。既に首を落としてしまったのだから、止まれない。

少しすると、血が流れる量が少なくなった。


そこからは一瞬であった。

まるで夢現な状態であった。気づいたら友人はただの肉片になっていた。

そこまできて、なんとなく屠殺場で働く人はスゴイなと感じた。

当分は肉は食べれそうにない。


風呂場は真っ赤であった。

まさに殺人現場。

テラテラ光る血がどこか私を糾弾しているように感じた。

命だったものが私を糾弾する。

これから一生お前は罪と共に生きるのだと言っている。

私はその声が非常に怖くて直ぐにシャワーで流した。

こびりついて水では簡単には流れなかった。




切り分けた肉片を袋に入れて冷蔵庫に入れて腐らないように処理した。

処理をした友人の肉はスーパーで買った肉と同じだった。

後は少しづつ捨てていくだけ。

そう捨てていくだけ。

少しづつ捨てればバレない。

バレないでくれ。

きっとバレない。

怖い。

怖い。

怖い。

手が震える。

本当に周りに聞かれていないだろうか。

本当に見られていないのか?

少し前まで友人といた部屋はやけに静かで。

私は誰かに見られているように感じた。

ああ、怖い。

ここは監獄だ。

ここから出たくない。




体が震え続け、一日中芯が凍るような寒さの中で、気づいたら日が昇っていた。

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