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第十八話 「強さの証明」

 二体のうち、赤い鱗を持つ赤蛇(ヴァーミリオン)が私の方へ向かってくる。

 噛みつこうとしているというより、こちらを丸呑みにするかのように大口を開けている。

 私は体内の魔素を操作し、肉体活性を促す性質に変化させた。


(【超人的な時間(アブ・ノーマル)】)


 急激に体が軽くなり、私はすかさず赤蛇(ヴァーミリオン)の噛みつきを跳び越える形で躱す。

 横を一瞥すると、ディルも同じく身体強化魔法を使って、青蛇(セルリアン)の攻撃を回避していた。

 不意にディルと目が合い、お互いに頷きを交わす。

 今回の作戦の肝は、赤蛇(ヴァーミリオン)青蛇(セルリアン)を分断すること。

 奴らの連携が厄介なので、それを阻止しつつ、各個撃破を狙うというものだ。

 そのために私たちは、事前に考えていた作戦を実行することにした。


(性質は岩。形状は壁。【可視された境界線(ボーダー・ライン)】)


 地面に手を突き、魔素を流し込んだ瞬間、土の中から岩の壁が飛び出した。

 それは赤蛇(ヴァーミリオン)青蛇(セルリアン)を分断するように、奴らの間に分厚く大きく聳え立つ。

 同じくディルも地面に手を突き、岩壁の魔法を発動させて、二重の巨大な壁が赤蛇(ヴァーミリオン)青蛇(セルリアン)を二分した。

 これで簡単には合流ができない。得意の連携もできないはず。

 これからこの森を農園や畜産に利用するため、あまり荒らしたくはないけれど、二体を一緒にさせないための苦肉の策だ。


「シャアァァァ!!!」


 こちら側に残った赤蛇(ヴァーミリオン)は、仲間と分断されたことに憤ったのか鋭い目つきで睨みつけてくる。

 青蛇(セルリアン)の方はディルが倒してくれると信じて、私は目の前の敵に集中することにした。


(性質は水。形状は(つるぎ)。【晴天を映す水刃(ブルー・リフレクト)】)


 かざした右手に青い魔法陣が展開されて、そこから水で生成された剣が顕現する。

 それは意思を持ったように切っ先を赤蛇(ヴァーミリオン)に向けて、独りでに飛来した。

 カンッ! と甲高い音と共に、水の剣は鱗に弾かれてしまう。


「……硬い」


 話に聞いていた通り、奴の肉体を覆っている魔装はかなりの硬度があるらしい。

 下手な魔法では簡単に弾かれてしまう。

 今の魔法も、一応は四階位魔法なんだけど。

 これがこの魔物の討伐が難航していた理由の一つ。

 確かにこれだけの魔装を持っている魔物は他で見たことがないし、倒すのは困難だろう。

 となれば、それ以上に強力な魔法で奴を仕留めるしかない。


「シャアッ!」


 赤蛇(ヴァーミリオン)は地を素早く這って、こちらに襲いかかってくる。

 私も魔装で肉体を守っているけれど、さすがに丸呑みにされたらひとたまりもないので奴の攻撃は躱すしかなかった。

 身体強化魔法で得た超人的な跳躍力で赤蛇(ヴァーミリオン)を跳び越えて、後ろ側の地面に着地する。

 奴の猛攻によって森の木々がまた押し倒されて、大量の土煙が舞い、激しい地響きが起きていた。

 離れている開拓兵たちの元にも衝撃が伝わり、狼狽える声が聞こえてくる。

 これ以上、森を傷つけさせるわけにはいかない。長引かせれば開拓兵たちにも攻撃が及ぶ可能性がある。

 手早く、確実に、私の全力をぶつけるんだ。


(性質は炎。形状は大玉。【灼熱の球体(フレイム・スフィア)】)


 体内の魔素を操作し、一つの魔法を発動させる。

 続け様にもう一つ、別の魔法を発動させた。


(性質は爆発。形状は礫。【爆裂する小さな礫(マテリアル・バースト)】)


 巨大な火球を撃ち出す火炎魔法と、大爆発を起こす小石を生成する爆発魔法。

 この二つの魔法を掛け合わせて、別の新たな魔法に変化させる。

 魔法を同時に使う並列発動を応用した、二種の魔法を融合させて別の魔法に昇華させる『複合発動』。

 四階位魔法による複合発動は、規模が大きすぎて危険があるため滅多に使うことはないけれど、今は赤蛇(ヴァーミリオン)と一対一の状況。

 近くに人がいなくてよかった。


(【小さな太陽(リトル・フレア)】)


 赤蛇(ヴァーミリオン)に向けた右手の人差し指に魔素が収束し、指先に赤い魔法陣が展開される。

 そこから光を放つ小さな礫が飛び出し、こちらに迫っていた赤蛇(ヴァーミリオン)に直撃した。

 刹那――


 強烈な光が視界を覆い、凄まじい爆音と熱風が周囲に広がった。

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