表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/17

お嬢様サッカーなんてできるか!

 前世であれだけ大きな夢を抱いてきたサッカーは、女に転生してからは一度も出来なかった。

 お嬢様として生きなければならないオレには相応しくないスポーツなんだ、と思っていたからだ。


 だけど、学園の行事ならいいんじゃないか?

 西園寺の家格的に女が趣味でサッカーをするのは変な噂が立つかもしれないが、学園の行事で仕方なく……ならいくらでも言い訳がきく!!


 希望を抱き、オレが目を輝かせながら黒板を眺めていると、不意にアキと目が合った。

 すぐに逸らされ、そんなアキの姿を見ると一気に冷静になる。


 サッカーなんてしたら、女になっても色褪せないオレの類まれなるサッカーセンスが学園中に大っぴらになり、アキに正体を気付かれてしまうかも……!


 香坂が言っていたように、アキが女のオレに興味がない可能性もなくはないが、気をつけておくに越したことはない。

 もし油断してアキに正体を気付かれてしまい、拗れに拗れたアキが本気でオレを捕まえにきたら、オレは逃げられる自信がない。


 そう思うと、あんなにやりたくて堪らなかったサッカーをすることが、途端に怖くなってきた。


 そんなオレの気も知らず、前の席に座る香坂が振り向き「やったな、サッカーあるぞ」と小声で言ってくる。


 香坂の言葉に渋い顔をしていると「やらねーの?」と問い掛けられ、周りのザワザワとした声に紛れながら「やりたいけどさぁ……」と小さく呟きアキをチラ見すると、当の本人はどうでも良さそうに壁にもたれかかっている。


 オレの様子で察したのか、香坂は「先生のことは気にすんなよ。サッカーしたくらいで気付かねーって」と励ましてくる。


 そのヘラっとした励ましを聞いて、確かにそうか!とすぐにふっ切れたオレは女子サッカーを希望し、以降の体育の授業では球技大会の練習という名目で大好きなサッカーが出来ることになった。


 やったぜ!サッカーやり放題だ!類まれなるオレのサッカーセンスに惚れるなよ、サッカー部!


ーーと、浮かれていたのも最初だけ。


 現実は、やる気はあっても力のない女子達に合わせて、本気でボールを蹴ることが出来ないストレスとの闘いだった。


 前世の経験から、女になっても運動神経は悪くないオレも確かに男の頃より力は弱まった。

 走るのも数秒遅くなったし、握力なんか信じられないほど低い。

 幸司が鞄に入れた鉄板もすげー重いし。


……にしたって、女子の力弱すぎねー!?


 パスをしても狙った場所に味方が間に合わない、ゴールを決めようと蹴ったボールがキーパーに当たって試合停止等……男だけでするサッカーとは訳が違いすぎて、オレの頭は混乱気味だ。


 本気になれないサッカーなんてサッカーじゃない……と体育を終えて落ち込んでいると、それに気付いた香坂が「なんだなんだー?サッカー、大好きだったんじゃねーの?」と軽い足取りで駆け寄ってくる。


 香坂の何気ない言葉で、オレの闘志に火がついた。


 そうだ、大好きなサッカーなんだ。

 今世ではもう叶えられない夢だが、前世のオレはこのスポーツで天下を取るつもりだった。

 そして可愛い彼女と結婚し、11人子供を作ってサッカーチームを作りたかったんだ。

 きっと、その中には女の子もいただろう。


 サッカーをやるのに性別なんて関係ない!

 まずは、オレが楽しむことだ!!


 気合を入れ直し、

「オレ……力の弱い女子達の中でも楽しくサッカーができるように、自主練する!!」

と宣言すると、事情を知らない香坂は訳が分からないまま「おう、がんばれ」と適当な返事をした。


 そしてその宣言通り、オレは毎日放課後に運動場で自主練習をした。


 だが、相手もいない練習ではなかなか思い通りにならず、

「くそー!一人だと練習になんねー!」

とオレは一瞬で()を上げていた。


 どうしても前世の記憶が入り交じって、女子に対するボールの蹴り方が分からない。

 優しく蹴ったら敵チームにボールを取られてしまうし、強く蹴ったら怪我をするかもしれない。


 力加減が分からない……!!


 一人運動場で頭を抱え唸っていると、

「西園寺、迎えの車が来てるぞ」

と声が聞こえ、見ると地面に転がったままのボールを足で踏んで止めている、アキがいた。


「一人で練習なんて、健気なもんだな」と呟きながらボールを眺めるアキに、

「え、ええ。どうせやるなら勝ちたいですから」

とお嬢様モードに切り替え答える。


 まさかオレのセンスから正体に気付いたのか?と冷や汗を流しアキの次の言葉を待っていると、

「その割にはあまり得意じゃなさそうだったが」

とアキはさっきまでの練習を見ていたような発言をした。


 ん?今下手くそって言ったか?と頭の弱いオレでもさすがに言葉の真意に気付き、「そんなことないです!私、サッカーは生まれつき得意なんです!」と返すと、それを聞いたアキはバカにしたように鼻で笑った。

 そんなアキに苛立ちを感じ、ふと思い出す。


 そういえば、昔のアキはスポーツ全般苦手だったよな?


 小学生の頃の話だが、勉強ばかりしていたアキは足も遅く、反射神経もなかったからスポーツは全て下手くそだった。

 そのせいで同級生たちによく弄られていたのを見たこともある。


 それでオレがサッカーを教えてやってたんだ……と思い出すと、懐かしさと共に一種の復讐心が湧いた。


「……先生、そこまで言うなら、私にサッカーを教えてくれませんか?」


 昔と変わらない鈍臭いお前の姿を、この目に焼き付けてやる。

こんにちは、鈴木です。


転生したら女だったんだが!?〜前世の幼馴染に言い寄られて困ってます〜 をお読み頂きありがとうございます。


評価・感想・ブクマをして頂けると励みになりますので、お気に召しましたら是非よろしくお願いします。


次回もお読み頂けるよう最善を尽くしますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ