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終わり始まるセカイ

作者: 能依 小豆

**プロローグ:僕は君を忘れない。**


——明日、世界は終わるんだって。最後はさ、君と一緒にいたいな。


 俺、高校一年生だった天之川あまのがわ ひかるはいつも通り一人で帰ろうとしていた。そんな俺に話しかけてきたのは、クラスが同じだった保科ほしな きらりだった。きらりとは、読んでいる本のジャンルが一緒だったこともあってよく話していた。だからこそ、彼女が、他の友達や家族より俺を優先することに俺は疑問を抱いていた。


「光くん。私はあなたのことが好きです。ほんとに大好きです。付き合ってください。あと一日しかないけど。」


周りの目線も気にせず、そう言ってくるきらりに、俺は、自分のことが好きな人なんていたんだな、なんて思ってしまった。


「うん。僕でよければ。一日だけ、よろしく。」


  ☆


 世界が終わる。それは一週間くらい前から各国のメディアが報道していて、全世界がほとんどパニックに陥っている。理由は、太平洋近辺に、バスくらいの大きさの隕石が、ほとんど光速で突っ込んでくるらしい。太平洋に面している国は全滅、そこから地球内部のマグマなどが大量に溢れて、氷河期と気温七十度くらいの近辺を交互にやってくるそうだ。そんな中、日本は、その報道をデマと主張し、当日のみ、国民の安全を考え、全ての施設、店舗を臨時休業にすると発表した。なので当然、学校は臨時休校だ。それなのに、彼女、きらりは俺と居たいと言い出したのだ。俺も、両親は何年か前に他界し今は一人暮らしだったので、予定もないし、付き合うことにした。その判断が合っていたのか間違っていたのかは分からない。


そんな悲しいセカイで俺ときらりの最後の二十四時間が始まる——


**最終日午前:二人の最後のひと夏**


昨日は遅くまできらりと話していた。外国の有名な映画を見たり、学校の話をしたり、俺の家にあった、日本酒を少しだけ味見してみたり。気づいたら寝ていたのだろう。机に突っ伏して寝ていた。お酒のせいか、少し頭が痛いような気がするが、大丈夫だろう。きらりは…大丈夫そうだ。安心そうな顔で寝ている。俺はそっと起きると時刻を確認した。今は八時過ぎ。いつもなら遅刻だが今日はそんなことはない。だって、学校も、なにも開いていないのだから。


軽くテーブルにあったものをつまんで朝食を済ますと、きらりも起きてきた。


「んー、おはよう光くん。…光くん⁉︎なんで私の家に⁉︎ってここ私の家じゃない…?」


「やっと気づいたのか。昨日の夜熱い一緒に過ごしたっていうのに。」


俺は少し面白くなってきたからちょっと茶化してみることにしよう。


「えっ、えーそんなことしましたっけ⁉︎」


彼女は記憶がないようにあたふたしている。実際に記憶はないのだが。なんだか可哀想になってきたので、そろそろネタバラシをしよう。


「ああ。日本酒を飲んでものすごく体が火照って暑かったからな。」


「え?日本酒?私たち未成年じゃ?ああ、そういえばそうでしたね。」


やっと思い出してくれたようだ。よかった。


「今日が最後ですね。光くん。」


「ああ。そうだなきらり。」


——世界が終わるまであと十六時間。


  ☆


俺らはのんびりと隣町まで来て、海沿いにいた。電車は全て自動で運転されているので特に問題もなく来れた。砂浜は温暖化の影響で幅が二メートルほどしかなくなっているが、それもこの世界が終わる原因なのだろう。僕らは海を眺めていた。僕たちはお昼ご飯を食べようと、街に歩き出した。が、コンビニやファミレス、スーパーなどは人がいないので開いていない。人がいるスーパーもあったが、その人はどうやら商品を盗難していたようだったのでそのまま通り過ぎたのだが。僕らはなんとか無人販売のコンビニを見つけ、おにぎりを買った。僕はおかかと鮭、明太子のおにぎりを買った。きらりは昆布といくらのおにぎりを買った。海辺で食べれるところを見つけ、そこでお昼にしようかと思っていた時だった。


「光か…?それに、え?きらりさん…?」


後ろから誰かに話しかけられた。


「ん?あぁ和也じゃないか。」


話しかけて来たのは俺の友達の三橋 和也だった。和也は家族と和也の彼女でどこかからの帰りのように見えた。僕が何をしていたのかを聞くと、彼らもご飯を調達していたらしい。


「そっちは何してたんだ?」


和也は俺らに尋ねた。俺らは最期の時を一緒に過ごすことを決めたことを話した。


「事情はわかったが、まさかお前ときらりさんがなぁ〜。結構クラスの中にきらりさん狙ってた人多かったからなぁ〜。でも俺には彼女いるから特に狙ってたとかはなかったけどな。まぁ、おめでとう。」


「あ、ありがと、な。」


僕はそんなことを言われるとは思っていなかったので、素直に嬉しかった。


その後、和也たちと一緒にご飯を食べた。そして、


「和也。僕みたいなやつと友達になってくれて、ありがとな。僕、地元離れてたから友達いなくて、嬉しかったよ。」


僕のありのままの言葉をぶつけた。これは本心だった。


「なんだよ、急に。俺だって、友達いなかったし、お前みたいな話が合う奴がいてくれてほんと嬉しかったよ。」


そっか。ぼくの高校生活も充実していたんだと改めて感じる。


「それじゃあな。もう会えないんだろうけど。」


「ああ。そうだな。それじゃ。」


二人とも「また会おう」なんて言わない。会えるかすらわからないのだから。そうして、僕らの最後の一日の午前中が過ぎていった。


——世界が終わるまで、あと十二時間。


**最終日午後:君も消えるんだね**


 波が岸に流れてくる音だけが響く。僕たちは砂浜の温かさで眠ってしまっていたらしい。気づくと午後四時を回ったところだった。きらりも今起きたようで、目を擦っている。


ふと周りを見ると、世界の終焉を見ようとしているのか人がまばらに集まっていた。僕らは海に向かって体を向けた。


  ☆


たくさんの思い出話をしていたら、もう夕方で、空には月が昇っていた。そして、肉眼で見てもわかるほどに速いスピードで移動する星があった。これが隕石だった。近くでその様子を見ていた人たちから小さなどよめきが起こった。


僕らの前で波打つ太平洋に、一つの大きな隕石が落ちてきた。


「もう、終わるんだね。光くん。最後の時を一緒に過ごしてくれて、嬉しかったよ。」


きらりが、ふと思い出したように言う。


「僕も、きらりみたいな可愛い彼女と最後の時を過ごすことができて、嬉しかったし、楽しかったよ。」


僕らはそう言いあって、海を見る。海は青かった。海は水平線の彼方には隕石が落ちて、衝撃波や津波などが迫っているというのに、そんなことは全くないように平気な顔をしていた。そして、二分ほどたっただろうか。水平線の遥か先がオレンジ色に光った。その光は少しずつ、でも確実に大きくなってきた。そして、さらに二分くらいたった頃、光を近くで観に行こうとしていた船が光に飲み込まれた。少し、船員たちの悲鳴が聞こえた。次に、水中なら生き残れると考えたダイバーが飲み込まれ、少しの気泡が浮かんできた…気づくと僕はきらりの手を引いて海とは反対の方向に駆け出していた。少しでも遠くに。もしかしたら手前で止まるかもしれない。そんな奇跡に賭けて。途中でそれを止めたのはきらり自身だった。


「もう、いいよ。私たちは、助からない…」


そんなことは僕もわかっていた。わかっていても、走らずにはいられなかった。


砂浜にいた人たちが悲鳴と共に光に飲み込まれた。そこには足跡以外、残っていなかった。もうすぐ僕たちのところに光が届くというその刹那、きらりが口を開いた。


「ありがとう。大好き。」


その言葉を発し、きらりが僕に抱きついた瞬間、僕らは光に飲み込まれた——


  ☆


——起きなさい、光。あなたには守らねばならない人がいます。


「お母さん‼︎」


僕が飛び起きると、僕の全身に激痛が走った。その中で見た空は赤かった。地面を見ると、ひび割れて、崩れているアスファルトがあった。


「きらりっ…‼︎」


きらりは僕に抱きついていたから、僕とそこまで離れていないはずだ。


這うように歩くと、すぐにきらりを見つけた。きらりにはもうあまり時間は残されていないようだった。


「き、ら、り…」


僕が近くに行くと、きらりは少し動いて、少しだけ目が開いた。


「ひ、かる、く、ん…?」


僕は、なんとか立ち上がり、きらりを抱えて、おぼつかない足でゆっくりと歩いていった。その先には病院があった。だが、僕の体力はそこで限界を迎え、きらりを抱えたまま倒れ込んだ。あと少しで病院だというのに…。そこで僕の意識は途絶えた…


  ☆


見慣れない天井、割られて破片が飛び散っている窓ガラス、一定のリズムを刻み続ける電子音。意識が戻ると、僕はそんな部屋の中にいた。


「あー‼︎看護師さん‼︎光お兄ちゃんが起きたー‼︎」


声の主の方に顔を向けると、和也かずやの弟の和樹かずきだった。


「あら、大丈夫ですか?あまり動かないでくださいね?全身であの光を浴びたんですから。たまたまこの建物が戦争でも壊れないようにと、硬くつくられていてよかったです。津波が来なかったことも幸いでした。この世界にいるのは私たちだけかもしれません。」


看護師さんが現状を教えてくれる。


「おい和樹。なんで俺も呼んでくれないんだ?俺はこいつの友達だぞ?」


和也も来てくれたみたいだ。


「和也…き、らりは…?あと、お前の両親と彼女は…?」


僕は全身の痛みを感じながらも起き上がり和也に尋ねる。


「両親とあいつは下で食料を探してる。でも…きらりさんは、ここに来てすぐ、亡くなった…」


僕は和也が何を言っているのかが理解できなかった。きらりが死んだ?僕と一緒のところにいたのに、なんで怪我にこんな差があるんだよ。嘘だ。そんなの嫌だ。でもそんな考えも、実際にきらりを見たら、全部本当なんだとわかった。


「き、らり?ねぇ、僕だよ?光だよ?きらり、起きてよ…ねぇ…」


僕の視界がぼやけた。僕は気づいたら泣いていた。小学生の頃、両親を事故で失った時さえ、涙を流すことができなかったのに。


そんな僕らを赤い空と青い海が見つめていた——

※カクヨムさんにも投稿してます。ですがendが違います。

この世界は、小説が牛耳っている。能依 小豆です。初投稿です。前からこういう後書きに憧れてたんですよね。ほんとに。でも実際書くとなると難しいんですね。まあボクはあとがきは最後に読む派なのでネタバレとかはしたりしなかったりどっちでもいいんですけど、正直に言うなら後書きは後書きとして楽しみたいのでネタバレに使って欲しくないなっていうのはあります。なのでネタバレしません。本作は結構短編ですし誤字脱字とかも多いと思うので「そんなもんか」と思っていただけるとありがたいです。え?ネタバレじゃないかって?ボク的にはセーフです。それではまたいつかお会いできればと思います。

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