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●書籍化&コミカライズ化決定【SSS級スキル配布神官の辺境セカンドライフ】~左遷先の村人たちに愛されながら最高の村をつくります!~  作者: 天池のぞむ
第6章 さらなる発展

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第76話 雨と決意


「それじゃシラユキ。数がちっとばかし多いですが、お願いするです!」

「ピュ、ピューイ!」


 ムギが麻袋をシラユキの足に巻き付ける。


 その袋の中に入っていたのは、《ユーリカの里》で開かれる収穫祭に関する招待状だ。


 ラストアやファルスの町、王都グランデルといったヴァレンス王国の各地や、ここブルメリアの中でも《ユーリカの里》の近隣に位置する村々に向けてと。


 シラユキが運ぶ手紙を介することで、遠方とも連絡を取り合えるようになっていたリドたちは、収穫祭を機に《ユーリカの里》に人を招くという計画をいよいよ実行に移していた。


「さて、これで大勢の人が来てくれると良いですわね」

「きっとたくさん来ますよ! これまでも手紙でやり取りしてたらこの里に興味を持ってくれる人が多くいましたし!」


 ミリィが意気揚々と胸の前で手を握り、周りにいた里の獣人たちも自信あり気な笑みを浮かべている。


 近頃はリドたちだけでなく、里の獣人たちも目まぐるしい活躍を見せていた。


 その理由はリドが里の改革の合間を縫って行った天授の儀にある。


 元々高い身体能力を持つ獣人族だ。


 リドが行った天授の儀により、今では里の防衛や周辺の魔物討伐、施設の拡充に近隣の道の整備など、多方面でその力を発揮するようになっていたのだ。


「しっかし、この里もだいぶ変わってきたよなぁ。こりゃミリィの姉ちゃんたちが見たら驚くぞ、きっと」

「本当に、貴殿らのおかげだな。先日リド殿に行っていただいた天授の儀の成果も素晴らしいものであった。辺境の土地にある一つの村に過ぎなかったラストアが聖地として認定されたのも、頷きしかないな」


 飛び立つシラユキを見送りながら、族長であるウツギもまたリドたちに感謝の意を告げる。


「ナノハのお姫さんがラストアに来て、ぶっ倒れた時にはどうなることかと思ったもんだったが……。これも『雨降って地濡れる』ってやつだ」

「……シルキー様。その言葉、たぶん間違っていますね。雨が降って濡れるのは普通かと」

「ん、そうか? じゃあ『近頃の行い』ってやつだな」

「日頃の行い、ですね……」


 そろそろナノハも慣れてきたようで、思い切り言い間違えているシルキーの頭を苦笑しながら撫でていた。


 収穫祭まではあと三日。


 それまでに万全の態勢でおもてなしをできるよう、そして来てくれた人たちに楽しんでもらえるようにと、リドたちはまた今日も里の整備に取り掛かる。


   ***


 その日の午後――。


「あ……」


 顔に何かの感触があり、リドは空を見上げる。

 どんよりと曇った空。そして湿気を帯びた生ぬるい風。

《ユーリカの里》に、ぽつりぽつりと雨が降り始めていた。


   ***


「雨、やみませんねぇ……」


《ユーリカの里》に滞在することになってから用意された家屋の中で。


 ミリィが外に振る雨を見上げながら呟く。


 雨脚は徐々に強まり、屋根が叩かれる音も段々と強くなっていた。


「吾輩、雨はあんまり好きじゃないぞ。このフサフサでカッコいい毛並みが重たくなってしまうからな」

「そんなにボヤくものじゃありませんわよ、シルキーさん。後で私がブラッシングして差し上げますから」

「うむ、くるしゅうない」

「やれやれ、ですわ」


 シルキーとエレナのやり取りを見てリドは笑みを浮かべたが、外に降る雨はより一層激しさを増しているようだ。


 地面には水溜りができ、その中に大きい波紋が広がっている。


(前に設置した漁場とか橋とか、大丈夫かな? そう簡単には壊れないと思うけど。収穫祭も間近に迫ったこの時期なのに……)


 窓の外を見上げながら、一向に止む気配のない雨にリドは焦燥感を募らせていった。


「失礼します」


 不意に扉が叩かれ、そこから姿を現したのはナノハだった。


 雨除けの外套を身に纏い、駆けてきたためか少しだけ息を切らしている。


「皆さんお集まりでしたか」

「ナノハさん。雨、大丈夫でしたか?」

「ええ。近い距離でしたから」


 ナノハが被っていたフードを取ると、獣耳がピンと立つ。


 そんな姿ですら絵になるなと、ミリィやエレナは呆けた表情を浮かべていたが、すぐに雨を拭くための布をナノハに手渡した。


 それから暖炉の薪の量を増やし、ミリィが温かい紅茶を淹れ、皆で卓に着く。


 そうして一同は間近に迫った収穫祭について簡単な確認を済ませていった。


「しかしあと三日か。それまでに雨、止むといいんだけどね」

「そうですわね師匠。せめて皆さんが来る時には晴れていないと、山道なんかを歩くのも大変そうですわ」


 しとしとと振り続ける雨音を聞きながら、リドとエレナは紅茶を啜る。


 ふと何かが気になったようで、シルキーがぴょんと卓の上に飛び乗り、ナノハに話しかけた。


「そういえばナノハのお姫さんよ。稲って雨が降っても大丈夫なものなのか? せっかく実が成ったのに雨で全部地面に落ちちゃったりしないか?」

「ええ。稲は力強いですから、これくらいの雨であれば問題ないと思います」


 それはリドたちも懸念していたことだったため、ナノハの言葉に皆がほっと胸を撫で下ろす。


「ただ、あまりに強くなると良くないですね。ここ数年ではそんなことはありませんでしたが、昔は収穫前に大嵐が来て、その年の稲が全て駄目になってしまったことがあって……」

「うげぇ、そりゃマズいな。収穫祭なのに収穫できるものが無いなんて本末転倒もいいとこだ」

「そうですね。そもそも嵐になったら、招待した方たちが来れなくなるでしょうし。そうなれば収穫祭も……」


 良くない想像を浮かべてしまい、リドたちは揃って沈黙した。


 静寂の中に暖炉の薪が爆ぜる音と強くなる雨の音が響き、より不安を掻き立てられる。


 そうして沈んだ空気が流れる中、シルキーが切り替えたように声を上げた。


「ま、お天道さんの気まぐれを考えても仕方なかろう。雨が降りゃ地は固まるんだろ? なら、とりあえずメシでも食って元気出すとしようぜ」

「おお、シルちゃんが言い間違えていません」

「シルキーさんも成長しましたのね。私、嬉しいですわ」

「んむ。何だか微妙に馬鹿にされているような気がしなくもないが、まあ良しとしよう」


 ピンと尻尾を立てて言ったその姿が可愛らしくて、皆が笑顔になる。


「はは。やっぱりシルキーはシルキーだね」

「湿気た面しててもしょうがないしな。前向きにいくとしようぜ」

「そうだね。その通りだ」


 強くなる雨を見ながら、しかしリドは顔を上げる。


(シルキーの言う通りだ。まずは自分たちにできることをしよう)


 そうして、リドは降り続く雨に負けないように決意を新たにした。



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