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●書籍化&コミカライズ化決定【SSS級スキル配布神官の辺境セカンドライフ】~左遷先の村人たちに愛されながら最高の村をつくります!~  作者: 天池のぞむ
第5章 獣人族の里

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第64話 【SIDE:牢獄】裏で語る者たち


「これはラクシャーナ王。ここの者に面会ですか?」

「ああ、ドライドの奴が目を覚ましたって聞いてな」


 ヴァレンス王国の王都、グランデル――。


 ラクシャーナはその一角にある囚人収容施設を訪れていた。


 先の騒乱事件を引き起こした主犯にして、元王都教会の責任者を務めていた人物――ドライド枢機卿が意識を取り戻したとの報せを受けたためである。


 ラクシャーナは看守の案内で奥の牢へと歩を進める。


「よう。目を覚ましたようだな」

「……ラクシャーナ王、ですか」


 そこには囚人服を纏ったドライドがいた。


 リドたちに反乱の計画を阻止され、こうして牢に入れられてはいるが、漂わせる面妖な雰囲気は変わりがない。


 かつての騒乱事件の際には自分の体に黒水晶を取り込み魔物化したとの報告があったため、意思疎通できないことをラクシャーナは危惧していたのだが、その心配もないようだ。


「どうされましたか? 私の処刑の日取りでも決まりましたか?」

「減らず口を。その胡散臭い感じは変わっていないようだな」


 ラクシャーナは冷ややかな視線を向けると、ドライドは微かに口の端を上げた。


「今日はお前に聞きたいことがあって来た」

「ええ。黒水晶のことについてでしょう」


 即答したドライドにラクシャーナは少し面食らった様子を見せるが、すぐに気を取り直して再びドライドに話を振る。


「分かっているなら話は早い。お前が各地にばら撒いていた黒水晶について、洗いざらい吐いてもらうぞ」

「他ならぬラクシャーナ王の頼みです。お話しましょう。……ああ、その腰に差している剣は必要ありませんよ」

「……」

「フフ。今の私に抗う力はありませんから。拷問という手段はお互いに面倒なものでしょう?」

「チッ……。本当に減らず口を」


 牢に入れられている状態にもかかわらず食えない奴だと、ラクシャーナは剣の柄に伸ばしかけていた手を下ろす。


 場合によっては力づくでもと考えていたが、その必要はないようで拍子抜けした感すらあった。


「ところで、ユーリアには尋問しなかったのですか? 彼女も私と一緒に収監されたかと思うのですが?」

「ああ、お前の秘書官か。確かにあっちはお前よりも早く目を覚ましたがな。お前に対する忠義を口にするばかりで、こっちの質問に対してはさっぱり口を閉ざしたままだ」

「確かに、彼女ならそういう対応を取るかもしれませんね」


 ドライドは予想通りとでも言いたげに声を漏らす。


 ちなみに、リドに左遷を命じた人物である大司教ゴルベールも同じ施設に収監されていたのだが、そちらは牢の中でブツブツと意味不明なことを呟くばかりで会話すらままならない状態だ。


 もっとも、ゴルベールの場合は先の騒乱の具体的な計画を知らされていなかったため、ラクシャーナも情報源として期待していなかったが。


「とにかく、こちらが質問する側だ。まずあの黒水晶の性能を教えろ」

「ふむ。性能、ですか?」

「とぼけても無駄だぞ。あれが単なる石じゃないことは分かってる。リド少年たちからも、お前があの石を飲み込んだ後に魔物化したって聞いてるしな」


 その言葉を受け、ドライドは目を伏せる。

 それは昔のことを懐かしむような、そんな目つきだった。


「リド・ヘイワース神官か……。思えば、彼には手ひどくやられたものです」

「お前にとってはまさに天敵だったな。自分の組織にいた少年が最大の障害となるとは思っていなかっただろう」

「ええ、本当に。まさかあそこまでの力を持っているとは思いませんでしたよ。仲間の少女たちに力を授けたのも彼でしょう。本当に、恐れ入る」


 ドライドが本心から言っているように感じられて、ラクシャーナは憮然とした表情になる。


 自分がやられた相手のことを素直に称賛するという、ある種の潔さをドライドが持っていたと知って、どこか辟易とした思いだった。


「それで? お前は黒水晶の性能を熟知していたんだろう。そうでなきゃ色々と辻褄が合わんことがあるからな」


 ドライドはラクシャーナの言葉に小さく首肯する。


 そして、不敵な笑みを浮かべると静かに口を開いた。


「王も察している通り、あれは単なる石ではありません。現象としては魔物の多発化や、それを取り込んだ生物に変異を引き起こすということになりますが」


 それは知っていると、ラクシャーナは頷く。


 続きを催促される前に、ドライドはまた言葉を続けた。


「結論から言いましょう。あれはその内に膨大な魔力を取り込んだ石なのです」

「魔力を?」

「ええ。魔力はスキルを使用する際に必要となるなど、特異な現象を引き起こす源になるとされていますが、厳密な定義は省きましょう。私としては、神官としての能力……即ち天授の儀もこの魔力によるものなのではと推測していますが」

「……続けろ」

「とにかく、黒水晶を巡って起こっていた諸々の現象は内包する魔力によるものなのです」


「つまり、お前が魔物に変異したのも黒水晶に含まれる魔力を取り込んだためだと?」

「その通りです。もっとも、あれは私の持つスキルを応用したものなので、他の者がやろうとしてもできない芸当なのですがね」

「そうかい」

「各地で魔物の多発化が相次いでいたのも、黒水晶が持つ魔力が要因です。魔力の影響を受けて凶暴化する魔物や変質する魔物などは多くいますからね」

「……」


「更に続けましょう。黒水晶を採掘する際に、鉱夫が毒に侵されるといった現象が起きていましたが、それも漏れ出た濃密な魔力に当てられたためなのです。私の実験により、黒水晶の持つ魔力は水に浸すことで安定化することが分かっていますが」

「なるほどな。確かに道理には合っている」


 ラクシャーナは顎に手を当て、ドライドが語った話の内容を吟味する。


 つまり黒水晶は膨大なエネルギーを溜め込んだ石ということなのだろう。


 ラストア村に蔓延していた鉱害病も、厳密には魔力が影響していると、そういうことだろうとラクシャーナは結論付ける。


 魔力の影響を受けて魔物が凶暴化したり変異したりすることはあるが、採掘した直後を除き、それ単体では何か害を及ぼすものではないということだ。


(それなら、リド少年たちに任せたように回収さえしてしまえば脅威は無くなる、か……)


 ラクシャーナはそのように考え、改めてドライドを見やる。


「もう一つ聞かせろ。お前は何故あの黒水晶を集めていた?」

「おや? リド・ヘイワース神官には話したのですがね。彼から聞いたものと思っていましたが?」

「聞いたさ。お前が黒水晶をばら撒き各地で魔物の多発化を引き起こしていること。それを王家の仕業に見せかけようとしていたってことはな」

「フフ。ではその件について問うことなどないでしょう」

「いや。お前がリド少年に話したのはあくまで手段までだろう?」

「……ほう?」


 ラクシャーナの問いかけの意味することに気づいたのか、ドライドは僅かに顔を上げ、そして興味深げに笑みを浮かべた。


「相手の思惑を見極める際に肝要なことは、手段と目的を取り違えないこと。俺の師が口酸っぱく言っていた言葉だ。それに、お前が単純な権力だけを求めるような輩だと俺には思えなくてな」

「……」

「お前が黒水晶を各地にばら撒き、王家の信用失墜を狙っていたのはあくまで目的を達するための手段。本当の目的はその奥側にある。違うか?」

「……」

「だから俺は聞いているんだよ。お前は何のために黒水晶を集め利用していた? いや……」


 ラクシャーナはドライドを見下ろし、そして告げる。


「――お前の裏には誰がいる?」


 その言葉を聞いたドライドは目を閉じ、それから肩を震わせた。


 愉快な仮説を受け、どこか歓喜すら感じているのではないかと思わせる、そんな反応だった。


「ククク、なるほどなるほど。歴代のヴァレンス王家の中でも稀代の国王と称されるだけのことはある。素晴らしい慧眼です」

「お前なんかに褒められてもこっちはちっとも嬉しくないんだよ。話すのか話さないのか、はっきりしやがれ」

「フフ。これは失礼」


 ドライドは白髪を掻き上げ、それからゆっくりと口を開いた。


「ラクシャーナ王。申し訳ありませんがその問いには答えられません」

「何故だ? さっき拷問は互いに面倒だと言っていたのはお前自身だろう?」

「話せない理由があるのです」


 ドライドはそう言って服の袖を捲り上げる。


 そこには何かの紋様を記したかのような痣があった。


「それは?」

「聖痕と呼ばれる印です。これがあるため、私は先程の問いに答えることができない。いや、答えようとすれば物言えぬ存在になると言った方が正確でしょうか」

「……何かのスキルによるものか? だとしても何故?」

「具体的に誰か、というのはお答えできませんが」

「構わん。話せる範囲で話せ」

「とある信仰を掲げる『教団』によるものです」

「教団だと?」

「おっと。掘り下げて聞かないでくださいよ。これでもギリギリなんですから」

「……」


 ドライドの余裕ある笑みを見ているとその真偽の程は定かではないのだが、今聞けるのはここまでかと、ラクシャーナは一つ息をつく。


(教団か……。こりゃまた厄介そうな因子が出てきたな)


「王よ、せいぜいお気をつけください。足元をすくわれませんように」

「はんっ。お前に心配される筋合いはないぞ」

「これは失敬」


 ドライドは言って、また不快な笑みを浮かべる。


 今はこれ以上話せることも無さそうなので、ラクシャーナはドライドのいる牢を後にしようと踵を返す。


 と、ラクシャーナの背後から声がかかった。


「リド・ヘイワース神官。私の時もそうであったように、彼がまた教団の障害となるのでしょうか」

「……」


 そんなドライドの言葉を背に受け、ラクシャーナは収容施設の外へと向かった。


   ***


「ふぅ……」


 外に出て、ラクシャーナは大きく息をつく。


(リド少年たちとも共有したいところだが、実際に出てきたのは教団という意味深な単語だけだ。この状態で伝えてもな……。とりあえずは内々で調べてみるしかないか)


 現状でいくら考えても徒労に終わりそうでラクシャーナは悶々とする。


 酒でも煽りたい気分だと、そう思った。


「王よ、何か掴めましたかい?」

「ん?」


 ラクシャーナの元に近づいてきたのはバルガスだった。


 どうやらラクシャーナが出てくるのを待っていたらしい。


 熊のように大きな体を揺らしながら近くまでやって来る。


「バルガスか。……ああ、そうだな。厄介そうなことも含めて、色々と聞けたよ。不確定すぎて何とも言えんがな」

「ほう? それはそれは」

「まあなんだ。伝えたいことはあるが……」


 ラクシャーナはそう言ってバルガスの方へと向き直る。


 ドライドと話していた時の空気感から解放されたためか、それとも気を許せる友人と会えたからなのか、降り注ぐ太陽の熱が妙に心地よかった。


「とりあえず、酒に付き合え――」





●読者の皆様へ


第1部での黒幕の再登場でしたがいかがでしたでしょうか?

幕間的なお話ですが、個人的にどうしてもやりたかった話です(^^)


次話からはまたリドたちのお話となりますが、楽しんでいただけるよう頑張ります!



・面白かった

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など、少しでも思ってくださった方は、

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ぜひよろしくお願い致します……!


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