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●書籍化&コミカライズ化決定【SSS級スキル配布神官の辺境セカンドライフ】~左遷先の村人たちに愛されながら最高の村をつくります!~  作者: 天池のぞむ
第3章 伝説の神官

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第43話 潜入作戦、開始


 翌日――。


 湖畔で一夜を明かしたリドたちは王都グランデルの正門付近までやって来る。


 空からは小雨が舞い、地表付近では濃い霧が発生するという悪天候だったが、むしろこれはリドたちにとって都合が良いと言えた。


「それじゃあここからは王都教会の人間に見つからないよう、《アルスルの外套》を使ってグランデルに入ろう」

「はい、リドさん」

「改めて説明するけど、この神器を被っていれば外にいる人間から僕たちの姿は見えなくなる。でも、人にぶつかったり激しく動いたりすると認識されてしまうから、その点は注意して。あと、何かを動かす時は誰かが見ていないのを確認しよう」

「逆に雨が降っていて良かったかもしれませんわね、師匠。これなら人通りも少ないでしょうから、大通りでも人にぶつかる心配なく進めますわ」


 エレナが言って、リドやミリィもそれに同意する。


「よし、行こう」


 リドがアルスルの外套を広げ、その中にシルキーを抱えたミリィ、エレナと収まった。


 いつもならリドとの距離が近くなると狼狽(うろた)えるミリィも、今は重要な作戦の方へと意識が向いている。

 そのことがシルキーにとってはちょっぴりつまらないのだが、流石に空気を読んでか口には出さなかった。


 門の所にいた兵にも悟られること無く、リドたちは王都内へと足を踏み入れる。

 リドにとっては実に左遷された時以来となる帰還だ。


「久しぶりに王都に来たけど、随分と変わって見えるね」

「同感ですわ師匠。日中だというのに、どこか感じが違いますわね」

「何だか、物々しい雰囲気です……。霧がかかったりしているからそう思えるだけなんでしょうけど」

「まるで亡国のようだな」


 皆が言うように、今のグランデルは「活気に溢れた華々しい城下町」という印象から程遠かった。


 日中だというのに景色は暗く、どの家も窓を閉め切っている。

 アルスルの外套を被っていなければ、三人と一匹で歩くリドたちの姿はかなり目立っていたことだろう。


 自然と慎重な足取りとなり、リドたちは濃霧の中を進んでいく。


 幸いにもアルスルの外套の効果が解除されるような場面に遭遇することは無く、無事に王都教会の前へと辿り着いた。


 リドは建物の頂部に設置された女神像を見上げる。前に出された両手に陽の光が降り注いでいれば印象もまた違っただろうが、今はしとしとと雨が落ちるばかりだ。


「ここにドライド枢機卿がいるって話だけど……」

「奴の姿を見つけられても都合よく重要な機密を話しているとは限らないだろうし、できればかき集めているであろう黒水晶の方を見つけたいところだな」


 外套の中で互いに頷き合い、リドたちは教会の内部へと潜入を開始する。


「さて、蟹が出るか海老が出るか」

「…………シルちゃん、もしかして『鬼』と『蛇』ですか?」

「凄い。よく分かりましたわねミリィさん」

「ふふ、シルちゃんの言い間違いにも慣れてきました。シルちゃんがいつも通りだと何だか安心しますね」

「あんまり緊張し過ぎも良くないからね。ありがとうシルキー」

「おい、どういうことだ? 何でお前ら笑ってる? 何で吾輩は感謝されたんだ?」


 シルキーとしては真面目に言ったつもりだったのだが、どうやらリドたちの緊張をほぐす効果があったらしい。


 三人と一匹は王都教会へと足を踏み入れ、内部を探索していく。

 と言っても、元は王都神官を務めていたリドの案内があるため、手当たり次第にという感じではない。


 まずは大広間、聖堂と人がいそうな場所から確認していく。


「ドライド枢機卿の姿は……見えないね」

「黒水晶についても倉庫の方にはありませんでしたわね。まあ、そんなところには置いているはずもありませんが」

「となると、次に向かうべきは枢機卿が使用する執務室か」


 リドの提案に皆が頷き、次の行き先を決める。


 辺りを歩いていた神官に接触しないよう注意しつつ先を進むと、程なくして一際頑丈そうな造りの扉の前へと到着した。


「ここが枢機卿用の執務室だ」

「扉は……鍵がかかっていますね。ということは不在でしょうか?」

「ああ。中から人の気配も匂いもしないな」


 シルキーが扉に鼻を寄せてすんすんと嗅ぐ仕草をしながら呟く。


「しかし、奴が普段使っている部屋なら見ておきたいところだがな」

「でもどうするんですの? さすがにぶっ壊すわけにもいきませんし」

「なぁに、リドにかかれば鍵なんてかかっていないも同然さ」

「え?」


 シルキーが言い終えて、リドはいつの間にかある神器を召喚していたらしい。

 右手には荘厳な装飾の施された「鍵」が握られていた。


「リドさん、それってもしかして……」

「《ランドルフの万能鍵》っていう神器だね。もちろん普段は使用しないんだけど、これなら……」


 ――ガチャリ。


 周囲に人がいないことを確認しつつ、リドが扉にかかっていた鍵を解錠する。


「よし開いた。中に入ろう」


 こともなげに言ったリドに、ミリィとエレナは感嘆するよりも先に呆れていた。


 この人に出来ないことなんてあるのだろうかと、本当に大胆な行動をする人だなと、二人はそう言いたくなったが、今はまず調査を優先しようと切り替えることにする。


 部屋の中を探索し始めてから少しして、リドが嘆息混じりに呟いた。


「……めぼしいものは見つからないな」


 何かドライドの狙いを窺い知れるような資料などが見つかればと思ったが、そういう類のものは出て来ない。


 教会内に手がかりは無いのかと、判断しかけたその時、シルキーが目を細めて呟く。


「リド。その女神像の後ろ。恐らく何かあるぞ」


 シルキーの言葉で、一同は部屋に置いてあった人の背くらいの女神像へと視線を向ける。

 一見して女神像も、その後ろにある白塗りの壁もおかしなところは無いように思えたが……。


「あれ? ここに何か穴のようなものがありますわ」


 女神像をくまなく観察して、エレナが声を上げた。

 見ると確かに、背中側の羽の下あたりに穴がある。


「これは……鍵穴? だったら……」


 リドが再び《ランドルフの万能鍵》を使用すると、女神像の背後にあった壁面の一部が音を立てて沈んでいく。


 そこに現れたのは、地下へと続く隠し階段だった。



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