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第10話 相棒が怒ると超怖いぞ(※シルキー談)


「さて。さっきの人が言うには、酒場に行けば詳しい情報を知ってる人がいるかもってことだったけど……」


 リドは街の人間から聞いた情報を元に、大通りの先にある酒場へとやって来た。

 その後ろを付いてきたミリィは、何やら祈りを捧げながら独り言を呟いている。


「ああ、女神様……。この愚かな私をお(ゆる)しください……」

「おい、むっつりシスター。早く付いてこいよ。日が暮れるぞ」

「シルちゃん、その呼び方はやめてぇ……」

「ねえシルキー。『むっつり』って何?」


 純朴なリドの一言が突き刺さり、ミリィはがくりと肩を落とした。


 シルキーの方は「知らないでいた方がコイツのためだ」と言うばかりなので、仕方なくリドはその話題を掘り下げず、酒場に入ることにする。



 酒場の中は昼間だというのに繁盛しているようだった。

 鉱夫と思わしき無骨な男が卓を囲っており、賑やかな空気で満ちている。


 リドはその中を抜けて酒場の店主らしき人物に声をかけた。


「あの、すいません」

「ん? 何だボウズ。子供に酒は出せねえぞ」


 酒場の店主がそう応じると、辺りから嘲笑とも取れる笑いが起こる。

 それでも、リドは気にせず店主に向けて話しかけた。


「お聞きしたいことがあるんです。鉱山の発掘などで、最近になって変わったことはありませんでしたか?」

「変わったこと?」

「はい。例えば何か毒性を持った鉱物が発見されたとか」


 ――ガタン、と。


 リドが発した言葉に反応して、酒場にいた客の内の数名が立ち上がる。

 そしてそのままヅカヅカと酒場の床を踏み鳴らし、リドの元へとやって来た。


「おいおい。ガキが滅多なことを言うもんじゃねえなぁ。この土地の鉱山に関しちゃエーブ伯が管轄されてるんだ。変な噂を立てようってんなら痛い目みてもらうぜ?」

「別に変な噂を立てようとは思っていません。ただ、この鉱山から麓に続く河川に何か良くないものが流出している可能性があるんです。僕たちはそれを確かめに来ただけで――」


 リドがそこまで言うと、目の前にいた男たちの目つきが鋭いものへと変わる。


 他の客は心当たりが無いようだったが、リドへと迫ってきた男たちの方は明らかに何かを知っているのだろう。というより、リドの言ったことがそのまま図星だったのかもしれない。


 リーダー格の男が殺気立った様子でリドを睨みつける。


「ハァ……。ガキが余計なことを嗅ぎ回りやがって。……おい、このガキをとっ捕まえろ。おっと、そっちの嬢ちゃんは中々の上玉だな。後で使うから連れて行け」


 その命令を受けて、後ろに控えていた男がミリィの手首を掴んで持ち上げた。


「ヒヒッ、こいつは確かに上玉だぁ。この後が楽しみだぜ」

「や、やめてくださいっ!」


 ミリィは必死に抵抗しようとするが、屈強な男の手を振りほどくには至らない。

 それを見て、リドが男たちに静かな怒気を向ける。


「ミリィから手を離してください。でなければ、容赦しません」

「クハハハッ! お前みたいなガキが俺たちに(かな)うと思ってんのかよ。やれるもんならやってみやが――」


 男の声が途中で途切れた。

 と同時に、男は酒場の外へと吹き飛んでいく。


 その時、リドが振るった大錫杖――《アロンの杖》の軌道が見えていたのは、酒場にいた者たちの中でシルキーだけだった。


「おがっ――!」

「ぷぎゅっ――!」


 続いて一人、二人と同じように吹き飛ばされ、最後にミリィの腕を掴んでいた男だけが残る。


「は……? えっ?」


 残った男は状況が理解できずに、吹き飛ばされていった仲間とリドの顔を交互に見やる。

 やがて、仲間を吹き飛ばしたのがリドの仕業だと気付いたのか、男は慌ててミリィから手を離した。


「へ、へへ……。悪かったよ。許してく――」

「許しません」

「ぶげっ――!」


 リドが冷ややかに言い放つと、やはり男は変な声を上げて酒場の外へと吹き飛んでいった。


「ふぅ。ごめんミリィ。怪我は無い?」

「は、はい。ありがとうございます。でも、リドさんが何をしたかまったく見えなかったんですけど……」


 リドがミリィの手を取って立ち上がらせるが、当のミリィは何が起きたか分からず困惑した表情を浮かべている。

 それは酒場にいた他の客も同じで、呆気に取られてその様子を見ていた。


「やれやれ、馬鹿な奴らだ。滅多にキレない相棒を怒らせるってんだから。まぁ、自業自得だな」


 吹き飛んでいった男たちが酒場の外で仲良く積み重なっているのを見て、シルキーが溜息交じりに呟く。



 そうして、小一時間ほど経った後――。


 目を覚ました男たちはリドに恐れおののき、知っていた情報を全て吐き出すことになるのだった。



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