95.カトリン2
お久しぶりです。ええ、おかげさまで無事子供も産まれまして、もうすぐ一歳になります。
はい、驚くほど安産でした。といいますかですね、産まれる直前まで妊娠してると気づいておりませんでした。ええ、本当に、たまげました。
エリー様がおっしゃるには、体を鍛えてると筋肉でお腹が大きくならない、まれにそんな女性もいる、ということでしたわ。はい、まあ鍛えておりましたし、鍛えすぎて月のものが止まったのかと思っておりました。
ともあれ、母子共に元気すぎるぐらいですし、ダニーも子育てきっちりやってくれるんで、特に困ったことはありません。
はい、そうなんです、女の子なんです。これで、ふふっ、この子をエリー様のお子様の侍女兼護衛にするという野望がねぇ、ええ、うまくいけばねぇ、ふふふっ、母娘共に仕えるなんてことがねぇ。
はい、それはもう、もちろんですとも。エリー様もよくおっしゃってますから。娘の自由意志で決めるべきことです。娘が他の道を選ぶなら、それを全力で支えますとも。まあ、まだ一歳ですからね。
ああ、そうそう、そうなんですよ。バーバラさんがよく助けてくれて。立派な助産師になるんだーって、張り切ってましたよ。まあ、あたしの場合は、安産すぎるし、母子共に強すぎて、あまり参考にならなかったでしょうけれど。
エリー様がバーバラさんと一緒に少しずつ仕組みを作られて。ええ、今ではそれぞれの村や町に助産師がいて、そう、悲しい思いをするお母さんが減ってきております。赤子を産んで、育てるというのはね、庶民にとっては大変ですからね。たくさん産んで、大人になるのは少し、というのはねぇ。不幸ですよ。母体もぼろぼろになりますしね。
そう、薬草茶の栽培も順調で。ええ、フェンヒェルという薬草がいいらしいですよ。母乳の出がよくなるそうです。残念ながらアタシのときには間に合いませんでしたが。うちはヤギの乳で代用でしたね。もう今は飲んでませんよ。なんでも食べるもんで、ええ。
そうなんですよ、食べるのが大好きで。どんどん大きくなって、一歳には見えません。ありがたいことです。
「あら、バーバラさん、いらっしゃい。はい、あたしは元気ですよ。あの子も元気でね、ちょっと食べすぎじゃないかって心配になるけど」
「カトリンさん、多分大丈夫だと思います。食べる子は食べるし、食べない子は食べないそうです。太りすぎだと食事量を見直さないといけないですけど、どんどん背が伸びてるなら気にせず食べさせていいはずです」
「まあ、太ってはいないけどね。ものすごい速さでつたい歩きしてるからね、むしろほっそりしてきたぐらいだよ。最近ずっと椅子の足を噛んでてねぇ、その顔がちょいとアレなんだよ。ダニーはデレデレしてるけど、あたしはあの顔はちょっと怖いよ」
「えーっと、それは歯が生えそうでかゆいのだと思います。マヌエッタさんが噛むおもちゃの試作品をくださいました。ちょうどよかったです。使い勝手をまた教えてください」
「いつもありがとうね。なんか伝書鳩みたいにして悪いんだけど、このあとデータさんとこに行くんだろう? データさんにこのリンゴ持って行ってくれないかい? リンゴなら食べられるんじゃないかと思ってね。ホントに心配だよ」
「分かりました。データさんが食べられるといいですね。では、行ってきます」
バーバラさんはまだ若いのにたいしたもんだよ。読み書きも必死で練習して随分上達したみたいだし。助産師やお母さんたちに聞きながら冊子も作ってるらしいし。エリー様からの助言だったそうだけどね。お母さんたちのちょっとした疑問が解決できる冊子になるといいね。
子供を産んだこともない女に助産師が務まるわけない、そんなことも言われてたみたいだけど……。そんなこと言ったら、医者は全ての病気にかからなきゃいけなくなってしまうのにね。まあ、バーバラさんはがんばりやさんだから、なんとかするでしょう。見守ってあげましょう。




