5.アナレナ様とルーカス様
ようこそいらっ
「どうもー、アナレナでーす」
「どもども、ルーカスでーす」
「二人合わせてアナr」
バタン。
ドンドンドン
「開けてくださーい。もうしませーん」
エリザベートですわ。おすわり、ステイ、シャラップ。
で、なんですの、さっきの茶番は。はあ? 夫婦漫才をやりたい?
勝手にやれ、ごきげんよう。
はあー、本当になんですの?
大阪のコテコテ漫才が好きで?
いつか夫婦漫才するのが夢だったのに?
喪女のまま悪役令嬢に転生しちゃって?
ヤケクソで婚約者に漫才の魅力をガチ語りしたら?
王子も沼ったと。
ようございました。お二人で夢を追求してくださいませ。ごきげんよう。
いやいやいや、なんでうちにきた? 勝手に二人でやりゃーいいじゃん。
ああ、試しに侍女に見せたら陛下に呼び出しを受けたと。
ふぅー、いやー、あのですね、笑いというのは最も難しい技術が必要な芸ですよね。文化によって何を面白いとするかが変わりますし。大阪のコテコテ漫才は、西洋ファンタジー風味の世界観では受け入れられないでしょうよ。
二人でこっそりやればいいじゃないですか。ええー、笑いを取りたい?奴隷に見せれば……。媚はイヤだと。
分かりました、こうしましょう。王族にどなたかご病気の方はいらっしゃる? 皇后陛下? それは好都合ですわ。
アナレナ様は確か、悪役令嬢でありながら聖女でもありますわよね?教会でも夢でもなんでもいいですから、神託を受けたことにしてください。
皇后の病を治すには笑いが必要だと。二人が掛け合う形式の『漫才』が最も効果的だと。
まずは冒険者ギルドに依頼を出してください。『漫才』に挑戦するパーティーを複数募るのです。そして彼らに『漫才』を見せ、基本概念を教え、習得させるのです。
技術が上がった時期に、王都で『漫才大会』を開催し、勝者には賞金を与えればよいでしょう。王族や貴族はもちろん、平民にも観覧させます。
その大会に、アナレナ様とルーカス様が出ればよろしいでしょう。模範となるため、恥ずかしながらも率先してやっているという体をなせば、堂々と漫才ができますわ。
え、わたくしにも登壇しろと?
なんでやねん。いい加減にしなさい。
どうもありがとうございましたー。