合わさる
ザザザ
雨の音?
ベッドの中。
外を見るが、雨は降っていなかった。あ、ラジオから。電源落としたはずだったんだけどな……。忘れてたのかな……。
雨の中を誰かが走っている。いや、走る音とゆっくりと追いかけるような足音。
息が上がる音に、漏れる声を止めようとする息づかい。
……なんだろう……
ラジオドラマっていう奴?
息を引くような悲鳴と、強烈に何かがぶつかり抜けるような、嫌な音。
雨以外の、水音。ねっとりとした嫌な音。
時計を見る、深夜零時を少し回った頃だった。
朝起きると、ラジオは完全に切れていた。昨夜の音は、避難グッズの中に潜ませていたラジオで、遊んだせいかもしれない。周波数に合わせて、ダイヤルを回すということが面白かったのだ。
『雨の日に起きる連続殺人事件』が流れていた。きっとそれのせいで、嫌な夢に繋がったのかもしれない、と思った。
もう一度、ラジオに視線を向ける。
手動充電式のラジオの電源が完全に落ちているということは、もう今日は鳴らないということ。
私はラジオをそのままにし、気にせず出勤した。
ザザザ……ザザザ…
雨の中、私は傘も差さず、合羽も着ずに、外にいた。
暗くてじめっとしたその隙間から、私はじっと蹲り、じっと何かを窺っていた。
何かから隠れて、何かから逃げているのは確かだ。
だけど、それが何からだったのかは分からない。
ねっとりとした汗を掻いて、目が覚めた。
辺りはまだ暗い。手を伸ばしてスマホを弄ると、枕元で爪にかつんと、熱くなった金属にぶつかった。
充電のシッポを付けたスマホをいじり、ライトを付ける。
零時過ぎ。
ラジオは、黙って切れていた。
母に勧められるままに購入し、必要ないかと避難用リュックから取り出したから、ラジオが怒っているんじゃないだろうか、ともう一度避難リュックの中にラジオを押し込み、再び就寝する。
空から雨が落ち始めていた。
ザザザ……ザザザ…
エレベーターが到着する音、上昇音。
まただ……起き上がった私は、避難リュックを乗せている靴箱を眺めた。
あの中から、聞こえてくる。
スマホの表示は零時を少し過ぎた頃。
そっとベッドから下りる。爪先がフローリングに恐る恐るたどり着き、胸の前で手を握りしめながら、そっとリュックに近寄る。
ザザザ……チーン……
到着音。
雑音に混じる靴音。
慌ててリュックの奥のラジオを引っ張り出す。
なんで?
暗闇の中に、ラジオが動いて、赤いランプを光らせている。
充電はとっくに切れていたはずなのに……
雑音と共に、近づく靴音。
振動と共に、響く衝撃音。
雑音に混じった呼吸音。金属製の引っ掻き音。ノブが鍵に引っかかる。
合わさった……。