6.
「ローラ? どうしてここに?」
「どうしてって、学園であんなことがあって、それでルイーズったら、あのリアム様と出て行って……、どうなったのかと思って、心配で屋敷に来たの! そうしたら、あなたってば、いつまでたっても戻ってこなくて……、リアム様と何をしていたの?」
「――滞在中の離宮に招いてもらって、一緒にお茶をしていたわ」
ローラの勢いに気圧されつつそう答えると、彼女は「まぁ」と大きく叫んで口を押えた。
「家にお招きいただいたの? 二人っきりでお茶をしたの? それだけ?」
「そうね。庭園を散歩して……薔薇の花がとても綺麗だったわ」
私の友達は「はぁ」と大きく息を吐いた。
「ホールでネイサン様に『婚約破棄』を叫ばれて、モニカだったっけ、あの商人の娘を虐めたとかあることないこと言われたって聞いて……、あなたのことだから、気に病んで倒れていないかと思ったら……『薔薇の花が綺麗だったわ』って……、安心したわ」
「心配してくれて、ありがとう、ローラ」
私は彼女に微笑んで、それから気になっていることを聞いた。
「皆……私がモニカのドレスを破いたり、彼女を虐めたって信じてる……かしら」
「あなたのことをよく知ってる人は信じたりしないわよ。あなたがそんなことするような性格じゃないって知ってるもの」
ローラはそう言ってうな垂れた私の髪を撫でた。
「だけど……平民クラスの人たちや、あなたをよく知らない人たちはどうかしらね。ほら、ネイサン様の婚約者に選ばれたあなたに反感を持つ人たちも少しいるじゃない」
「私……反感持たれてたの?」
「鈍いわね」とローラは呆れたような顔をした。
「何であんな成績が良いだけの子がって言う人たちがいないことはないわ。――全く、あなたの良さがわからないなんて馬鹿な人たちだけど」
ローラは大きなため息を吐いた。
「とにかく、そのあたりの人たちはあることないこと言うかもしれないわ。――でも、あなたがやったのを見た、とか証言した人たちの言っていることも統一性がないし……、きっとモニカが何か手を回して証言させたんでしょう。証拠もないし、あなたがやっていないって、早々にはっきりするはずだわ。ネイサン様だって、『確認する』って宣言したわけだし、曖昧にはできないわ」
友達は私を抱きしめた。
「しばらく学校を休んでもいいんじゃない? 私も休むから、私の家の別荘にでも一緒に行く?」
「ローラ……、ありがとう」
私は友達の気づかいに感謝した。それもいいわね……でも。
「リアムに、『また学園で』って挨拶してしまったから、明日は行くわ」
そう言うと、ローラは「リアム?」と私の呼び方に首を傾げ、すぐに悪戯っぽい顔になった。
「ルイーズ、リアム様と二人っきりで何を話したの?」