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17.

 ネイサン様やモニカが学園に来なくなってから一週間、私は毎日ローラを交えてリアムと昼食をとり、放課後はしばらく二人で語らい、私の屋敷まで送ってもらうという生活をしていた。


 家に帰れば、お母様は「リアム様とどんな話をしたのか」と詳しく聞こうとしてくる。


 話しているのは世間話……その日学園であったことや、私が世話をしている花の事や、そんな他愛なことばかりだったけれど。


 今日は週末だったから、いつものようにリアムの馬車に乗せてもらって家についたところ、お母様が彼を引き留めた。


「リアム様、ぜひうちで夕食をご一緒しませんか?」


「お母さま、それは……」


 家での夕食に異性を招くとなると、親が公に関係を認めた――つまり、婚約したというような意味合いになってしまう。


 確かに、婚約の話を考えてくれとは言われたけれど、今のところ、まずはお友達からということだけど……。


 リアムは笑顔で「喜んで」と答えたので、私は慌ててしまった。


「そんな、こんな急なお誘いで申し訳ないです」


「いや、嬉しいよ。屋敷に戻っても叔父上は週末は特に不在が多くて、叔母とだけ食べるのも気まずいし」


「……そう?」


 それなら、一緒に食べたほうが良いかしら、そう思いながら玄関を入ると、お母様が「数日前から準備していたから、安心おし」と耳打ちした。


 ……その言葉通り、夕食はお客様を歓迎するいつもより大分豪華なものだった。



 ***

 

 お父様が帰って来てから、私たちは食卓を一緒に囲んだ。


「本当に美味しかったです」

 

 食後のお茶を飲みながら、リアムの言葉にお父様もお母様も嬉しそうに笑ったその時……、


「旦那様、玄関に……」


 執事が耳打ちをすると、お父様は血相を変えて椅子から立ち上がった。


「ちょっと失礼、食後のお茶を続けていてくれ」


 そう言って執事とともにそそくさと去って行く。

 私たちは何があったのかしらと顔を見合わせた。


 そして、しばらくすると……、私の名前を誰かが大きな声で言っているような声が聞こえて来た。この声は……! 思わず立ち上がると、玄関ホールへ走った。


「ルイーズ!」


 後ろからリアムがついてくる。

 玄関には、確かにお父様と対峙するネイサン様がいた。


「ネイサン様?」


 何でこんな時間に、私の家に直接ネイサン様が……、それに……。

 表情が動かせなくなる。……モニカも一緒……!? それだけではなく……、モニカの父親と思われる男の人も一緒にいた。

 いったい、何事だろう。


「ルイーズ!」


 私に気づいたネイサン様が名前を呼んだ。

 ……どんな顔で私に会いに来たのかしら。

 学園のホールで見つめられた時は、私を恨むような暗い目をしていたわ。

 恐る恐るネイサン様の瞳を見た私は、戸惑ってしまった。

 ――以前と変わらない、澄んだ青い瞳で私を見ていたから。


「……」


 何と言っていいかわからず立ちすくんでいると、


「ネイサン様! お引き取り下さい! ルイーズに謝罪したければ、まず国王陛下を通して、然るべき方法でしていただきたい!」


 お父様が大きい声でそう言って、ネイサン様を玄関の外に追い出してしまった。


「リアム様、お見苦しいものをお見せしました。ルイーズ、食卓へ戻ろう。まだデザートがあったはず」


 お父様は大きく息を吐くと、私たちに向き直って、何事もなかったかのように笑った。

 だけど、私は、聞かざるをえなかった。


「お父様……、ネイサン様は何を言いに来たんですか?」


 今さら、何を言いに?


「……モニカの言っていた、お前に関することは、でっちあげだったと。謝罪をしたいと言ってきた」


 お父様は大きなため息交じりにそう答えて、表情を厳しくした。


「今さら虫の良い。きちんと、公に謝罪させるから安心しなさい」



「学園のホールで君を責めたてたんだ。きちんと、皆の揃っている場で彼は謝るべきなんだよ」


 リアムも私の肩に手を置いてそう言った。




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