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第49話 改装再開!

「さあ、改装再開よ」


 次の日、アデレードは気合を入れ直す。と言ってもアデレードが出来ることは殆どないが。ゲアハルトに以前言われたことを考慮し、メグと相談して1階の北側2部屋を客用の風呂などの共用部分に改装することに決めた。その辺りはまた、大工と相談する必要があるだろう。


「あとは家具も、ね」


 前の家主は曲線が好きだったのか、残された家具も猫足だったり、植物文の有機的な装飾が施されていたりと製作するのに時間の掛かる物が多い。調度品全体の調和を取る為には、やはり同じような物を作ってもらう必要がある。


「でも、まだ何か足りない気がするのよね……」

「改築が終わって部屋に家具が揃えば、泊まるには申し分ない気がしますけど」

「それよ!」


 アデレードのはっとした様子にメグは首を傾げる。


「何がですか?」

「確かにただ泊まるだけなら、家具があれば充分なのだけれど、壁に絵でも飾ればもっと素敵になると思うの」

「絵、ですか……」


 問題はどうやって調達するかだ。そもそも村の中で絵を売っているところなどないし、有名どころに依頼するとしても時間がかかる。


「でも、どうせ飾るならここでしか見られないものの方が、有名な画家に描いてもらうよりも良いと思うのよね……この辺りに画家なんて居ないわよね?」

「画家ですか? うーん、そういう方はいらっしゃらないと思います」

「そうよね……そう簡単にはいかないわよね」


 どこかで頼める画家探さなきゃ、とアデレードが考えていると、ふとある少年のことを思い出した。春先に絵を一心不乱に描いていた姿。


「テッド……そう、テッドはどうかしら?」

「テッド、ですか。確かに画家を夢見てる子ですけど……でも、プロの画家じゃありませんよ?」

「良いじゃない。ここは高級ホテルってわけではないのだもの。有名画家の絵でなくとも、来た人が暖かい気持ちになれるような絵なら、その方が似合うと思うの」


 そういうわけで、アデレードはメグの案内でテッドの家へ向かった。


「こらっテッド、あんた絵ばっか描いてないで、家の手伝いしなさい」

「母さんの言う通りだぞ。一銭の金にもならないんだから、家手伝うか農作業でもしろ」


 テッドの家の前で夫婦の怒る声が聞こえてきた。メグは苦笑いし、説明する。


「テッドはいつもこうなんですよ。絵の構想か何かが思いつくと、描かずにはいられなくて、壁とか布とか何にでも描いちゃうんです。それで、いつも両親に叱られてるんです」

「まぁ、本当に絵を描くのが好きなのね」


 アデレード達が家のドアを叩くと、母親が出てきて、目を丸くする。


「あら、お嬢さんにメグちゃん。どうしたんだい?」

「テッドにちょっと頼みたいことがあって」

「えっ?」


 家に上げてもらい、アデレードが説明する。


「テッドの絵を飾りたい、ねぇ……」

「でもなぁ、テッドはプロでもなんでもない。ただ好きで描いてる子どもの絵ですよ」

「そうですよ。人様の家に飾ってもらえるような代物じゃありませんよ」

「僕、出来るよ!」

「お前は少し黙ってなさい」


 父親にたしなめられ、テッドは不貞腐れた顔になる。


「勿論、報酬はきちんとお支払いしますわ。それにテッドの絵は、とても上手いと思います。純粋でてらいがなくって」

「持ち上げないで下さい、お嬢さん。画家なんて分不相応な夢なんて見させちゃいけねぇんだ。農作業の合間に絵を描くくらいなら良いが、大変な思いをするだけだ」


 父親はそう言ったが、室内にはテッドの描いた絵がいくつも貼ってあった。山の絵、遊ぶ子どもの絵、農作業する大人の絵。どれも、対象に対する彼の愛情が感じられる。それに絵具や道具も置いてあった。余裕のある生活でもないのに、それらを揃えるというのは、愛情の表れだろう。

 息子の熱意を叶えてやりたい気持ちと将来を案じる気持ちが両親の中に入り混じっている。


「私がテッドに絵を描いて欲しいのは、この地の自然や人を暖かい眼差しを込めて、ありのままを描いていると思うからなの。これは、どんな有名で技術のある画家にだって出せないものですわ。だから、ホテルに飾るのにぴったりだと思うの」


 アデレードがテッドの描いた絵を見回す。


「何かを一心に極めようとせずにはいられないものを持っている、というのは与えられし一つの才能だと思います」

「お嬢さん……」

「勿論、それだけで大成するかと言えば、それは別ですけれど……職業としての画家は自分の好きな物ばかり描いて成立するものじゃないわ。依頼があって、注文通りに仕上げることが求められるの。どうかしら、テッドが画家としてやっていけるかどうか、これで試してみるというのは?」

「父さん、母さん。僕にやらせてよ。これで上手く出来なかったら、画家になるのは諦めるよ」

「テッド……分かった」


 両親は複雑な表情を見せたが、テッドの好きなようにやらせてみることにした。


「僕、一生懸命に描きます。よろしくお願いします!」



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