友達II
一人でやろうと思っていた犯人探しだったが、心強い友達も一緒になって探してくれることになった。それだけで肩の荷が下りたような気がした。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったため、これからのことは放課後に話し合おうということになり、私たちは騒いですみませんでした、という意味を込めて図書委員に頭を下げながら、そそくさと逃げるように図書室を出た。
静かで作戦会議の場所としてはうってつけだが、私たちのような、いちいちリアクションの大きい人間には合わない場所だと身をもって知った。次からは別の場所を使わないといけないみたい。
「放課後はファミレスだね〜」
教室までの道のりを小走りで走りながら、さも当然のように梓は言った。それに私と円は頷いた。ファミレスにカラオケ、ショッピングモール内にあるフードコート、高校生が長時間居座る場所なんてそのくらいに限られている。
カラオケは周りの音がうるさいし、絶対に梓が歌いたがる。ショッピングモールも色々なジャンルのショップがいっぱいで、梓がフラフラとそちらに流れて行ってしまう。どちらも梓が誘惑に負けてしまうのが目に見えたので、必然的にファミレスで決まりになるーー、ということを私と円が考えていることに梓は気付きもしないのだろう。
「ファミレスで期間限定のパフェ食べなきゃ〜」
小走りがスキップに変わり、梓の頭の中ではもくもくと放課後のプランが構築されているようだった。本来の目的はたぶん、ぐしゃぐしゃに丸められて端っこの方に追いやられてしまっているだろう。
基本的に本能赴くまま、己の欲を満たすことを第一優先に生きている。それが梓だと私は思っている。
「おいコラッ、すでに脱線してる! 遊びに行くんじゃないんだからね」
「ユイ落ち着いて、相手は梓だよ? パフェ食べて大人しくしてくれてる方が良くない?」
「……確かに……盲点だった」
円の発言に、目から鱗が落ちた。
変な作戦立てられるよりは、デザートに夢中になってくれている方が助かる。さすがに人が亡くなっているのだからふざけた案は出さないだろうけど、ドストレートに「クラスのみんなに聞き回る」とか真顔で言い出しそうで怖い。
私たちの会話を聞いて梓はスキップを止め、振り返った。頬を少し膨らまして、不満オーラ全開だ。こちらも負けじと目を細め睨みをきかせる。不満なのはこっちも同じなんだからな。
「ユイ顔怖い! いいじゃんそんなに怒んなくても。ファミレスなんだから何も頼まずに居座れないでしょ? それに、頭使うから糖分は絶対必要」
ビシッと人差し指をこちらに向けるその姿にさえも腹が立ってきた。円が私の腕を掴み首を振る。諦めろ、キレたら負けだ、と顔が言っている。
「あー、もう何でもいいや、パフェでもケーキでも好きなもの食べてくれ。その代わり、真面目に考えてよね? 私は本気で犯人探ししたいんだから」
「分かってるって! 任せて! 二人と違う視点から攻めていく予定だから」
見事なウィンクを決めた梓。漫画のようにキラリと星が飛ぶのが見えた。本人は決まった! と満足そうだが、こちらとしてはただ苛ついただけだった。様になっていることが余計に苛つくポイントだったりする。どこぞのアイドルかよ。
「ユイ、拳をしまって。まぁ梓の言うことにも一理あるじゃん?私たちにはない思考回路をお持ちの方ですから、ね?」
これは褒め言葉ではない、のだが、独特の思考回路をお持ちの梓は見るからに嬉しそうな表情をしていた。「ほら、みろ」とでも言いたげな、得意気な顔を私に見せつけてくる。
無駄な体力を消耗したくないので、もうツッコミはしない。スルーに徹することにした。嫌でも、放課後のファミレスで疲労が溜まる気がしてならない。今から気をしっかりと持っていないと。
前言撤回。肩の荷が下りる気配はなくなった。
前途多難。この二人……主に梓を引き入れて良かったのだろうか……。
廊下の窓から覗く空は、これからの私たちを表すように、どんよりと怪しい色をしていた。