彼女の死II
白石愛海が亡くなった翌日の夜、彼女の通夜が行われた。
気分が悪いと言って、私はそれに出席しなかった。
彼女の通夜には私以外のクラスメイト全員が参列していたと友達ーー円ーーに聞いた。顔が広かった彼女の通夜には、他のクラスの人たちも大勢来ていたらしい。
彼女を想い、みんなが涙を流している姿が想像出来た。特に仲のよかった子たちは、通夜が始まる前からずっと泣き続けていて、とても見ていられるものじゃなかったと、それも円が言っていた。
私は心底行かなくてよかったと思った。
決して仮病を使ったわけじゃない。本当に気分が悪かった。このままの状態で通夜に行っていたら、仲のよかった子たちさながらの青い顔をして涙を流していたと思う。大して白石愛海と仲がいいわけじゃないただのクラスメイトが、そんな反応をするのはどうかと思い、私は家に居ることを選択した。
昨日、先生から告げられたクラスメイトの死という衝撃の告白は、その日のうちに学校中に広まった。
死因は教えてくれなかった。
ただ一言、詳しいことはまだよく分からないと告げられただけだったが、クラスメイトが死んでしまったという現実を受け入れることに精一杯になっていた私たちは、その場で死因について追究する余裕なんてなかった。
もしも、事故や事件に巻き込まれたのならニュースになるはずだ、とその日とその翌日の新聞とローカルニュースをチェックした。だが、白石愛海に触れるものはひとつとして存在しなかった。
何処にも、白石愛海がいない。
時が経てば経つほど、色濃くなっていくあの光景。
逃げ場はないとでも言うように、あの日の光景が蘇る。
一体、誰がーー、
『白石愛海は死んだ』
誰があの黒板の文字を書いたーー?