第十二話 『光』
すぐに週末の光へ目を向ける。
今まであったはずの光の輪が全て消えていた。発射口の奥にあるパラボラアンテナらしき装置のすぐ手前には、エネルギーの塊のようなものが形成されている。エネルギーの塊は少しずつその大きさを増していた。発射まで、あとわずかの猶予もないのだろう。
どうする……。
どうすりゃいいんだ、くそっ!
「おれがなんとかする」
『親友』の声が聞えた。今までとちがい、落ち着きのある冷静な口調だった。
「なんとかって、どうするつもりだ」
「あのエネルギー体のすぐ近くで、この黒き救世の器を自爆させるんだ。そうすればエネルギー体を誘爆させて、この衛星兵器そのものも破壊できるはずだ」
『親友』は発射口へ向かって機体を飛ばす。
「待てよ! そんなことしたら、お前はどうなるんだ!」
「覚悟はできている。それにこいつの起動には、おれも加担してしまったからな。だからこれは、せめてもの償いなんだ」
「お前……」
「悪いな、こんなことになってしまって。お前には散々迷惑をかけてしまった。さっきも言った通り、おれはお前がうらやましかったんだ。望んだ未来を、お前は手に入れることができたから。だからおれは、お前と一緒にいるのがつらかったんだ」
でも、と『親友』は続ける。
「お前の言う通り、おれはその先の未来を目指さなくちゃいけなかったんだ。なのにおれはそれをしなかった。それどころか、未来の可能性を捨てる道を選んでしまった。その結果がこれだ。全部おれの自業自得なんだ。だからせめて、この世界の未来は守ってみせる。きっとあいつらも、わかってくれるだろう……。早くここから離れろ。自爆したあと、お前達を巻き込まない保証はない」
『親友』の機体は発射口の中へ消えていった。
「これで私達は世界を救えるのかしら」
『少女』がたずねる。
おれは何も答えられない。
「私達はナントカのアレを導き出し、元の世界へ還れるのかしら」
おれは『少女』と目を合わせる。
おれの考えを察したように、『少女』はうなずいた。
「君まで巻き添えにするかもしれないよ。それでもいいの?」
「今さら何を言ってるの。私達は友達なのよ。そして彼があなたの友達なら、私もまた彼の友達ということになるわ。友達を助けるのは当然のことでしょう」
「……ありがとう。じゃあ、行こうか!」
おれ達は発射口の中へ進む。
こちらの動きに気づいたらしく、『親友』は言った。
「お前達は来るな! 早くここから離れろ!」
「うるせぇっ!」
『親友』を黙らせるようにおれは叫んだ。
「最初から最後まで一人であれこれ好き放題やって、挙句の果てには世界を救うために自爆するってか。ほんといい加減にしろよ、どこの主人公だてめえは! だいたい、あいつらって誰なんだ。前にも言ってたけど気になって仕方ねえよ。ほんと、お前に何があったんだ!」
おれ達は『親友』の機体の隣に並ぶ。
エネルギー体は、今にも発射されそうなほどに巨大化していた。
「ちゃんと説明してもらうからな。この世界でお前にあったこと全部。だから絶対に死なせない。おれ達は絶対に死なない。必ず生きて、元の世界に帰るんだ!」
おれはさっきやったようにソレラシキー粒子をつかって光の壁をつくりだす。
終末の光は反射用の衛星を使って様々な場所に攻撃できると長老は言っていた。つまりこいつが発射する光線だかビームだかには反射する性質がある。なら、さっき光線を反射したようにこいつの攻撃も別方向へそらすことができるかもしれない。
もっとも、それに根拠や確信はなかった。しかもこいつは新世界によってより強力なものに改良されているらしい。成功するかどうかはわからない。
でも、やるしかないんだ。
おれは全身全霊を込めて光の壁をつくり出す。黄金色の光の壁が現れると同時に、そこに青い光が重なった。『少女』も光の壁をつくるために最後の力を振り絞って協力してくれた。
さらに赤い光が重なる。『親友』も力を貸してくれたのだ。
やがておれ達の光は一つになり、無限の色彩を放つ光となった。
それを突き破るように、終末の光が放たれる。
おれは目をしっかりと開き、迫りくる光と向き合った。
この世界を絶対に守ってみせる。
この二人と絶対に生き残ってみせる。
そして、おれ達が生きるべき世界に戻り、生きるべき時間を生きるんだ。
未来に向かって。




