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主題なき春のラプソディ  作者: 青山 樹
第四章 『光の先へ』
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第八話 『※サブタイトル担当者不在』

 この黄金色の光の粒子はおれの体のどこからわきあがってくるのか。

 なんていうか、原因不明の腫れ物や湿疹ができたみたいですごく気持ち悪い。


「うわっ、なんだこれ、なんだこれ、気色悪っ!」


「落ち着いて。その光はソレラシキー粒子よ」


「え、これが? たしかにそれっぽいけど……、なんで急に出てきたんだ」


「創世の書に書いてあったでしょ。ここぞという時に何かしらの力に目覚めるって」


「えぇ……。もしかして、今のがここぞという時?」


「あなたはさっき、自分達に課せられた使命と運命に対し、断固として立ち向かうという意思を示したでしょ。好意的に解釈すればそういうことになると思うわ」


「ああ、そういうことか。ところでこれ、いつまで出続けるの? なんかちょっと体もだるくなってきたし、目もチカチカしてきてうっとうしいんだけど」


「だるいのは仕方ないわ。慣れないうちは体力を激しく消耗するものだから。心を落ち着ければ自然とおさまるはずよ。ソレラシキー粒子は意思の力なのだから」


 『少女』に言われた通り、おれは心を落ち着けるべく目を閉じて精神を集中させる。


 しずまれ、しずまれ。

 おれのソレラシキー粒子……。


 なんだか、自分がものすごくイタイタしい人間に思えてきた。

 しかしそう思ったことがうまく作用したのか、まぶたの裏に感じていた光が少しずつおさまってきた。

 そろそろ大丈夫かなと目を開ける。するとそれを待っていたかのように、舞台が大きく揺れ動いた。


「今度はなんだ、地震か?」


「ちがうわ。石像を見て」


 石像はぼんやりとした淡い光に包まれていた。そういえばこんなのもあったなと思った時、石像から目もくらむような閃光が放たれた。あまりのまぶしさに、とっさに目を閉じる。

 おそるおそる目を開いた時、石像の姿はそこになく、かわって別のものが現れていた。

 それを見た瞬間、おれは「マジかよ」と声をもらした。

 そこに現れたのは、人の形を模した巨大ロボットとでも形容すべきものだった。

 機械的な要素はあまり見られず、中世の騎士を思わせる白銀の甲冑をまとった巨人といったほうがいいかもしれない。またとんでもないものが出てきたなと、おれは呆然とした。

 そんなおれのそばで、長老が言う。


「これは教団が創世の書と共に守り続けてきた『白き救世の器』だ。現在の科学技術をもってもその仕組みを解明することができない高度な技術によって生み出された、神話の時代より伝わる超兵器……。そしてこれは、救世の子である君達にしか操れないとされている」


「さっき言ってたささやかな力って、まさかこいつのことなのか?」


「どうやらそのようね。というか、そうとしか思えないわ」


 喜びと興奮に弾んだ声で『少女』は言った。


「いいじゃない、いいじゃない。神話の時代から伝わる人型の超兵器。じつに素晴らしいわ! これに乗って宇宙へ行って、終末の光を破壊しろってことなのね。そういうノリなのね!」


「その通りだ。頼むぞ、救世の子らよ」


「いかにもお約束って展開じゃない! でも、それでいいのよ。わくわくするわ!」


 おれとしてはそのお約束を反故にできないものかと思うんだけど。

 まあ、『少女』が楽しそうだし、べつにいいか。


「にしてもさ、近未来的テクノロジーといい超能力といい神話時代の超兵器といい……。ほんとなんでもありなんだなぁ、この世界は」


「いいじゃない。なんでもありのほうが、世界はおもしろいでしょ」


「だね。なんでもありの世界なら、おれ達が世界を救ったって、かまわないだろうし」


 救世主になれる可能性を信じ、おれは白き救世の器を見上げる。

 ん? ちょっと待て。


「こいつの名前は、白き救世の器っていうんだよな」


「長いから『シロ』って呼びましょうか」


「うん、まあ、いいけど。いや、そこじゃなくて。わざわざ白きってつけてるってことは、まさかとは思うけど、他にも同じようなのが存在したりするのか?」


 その通り、と長老はうなずく。


「創世の書にその存在が記されている。どうやら創世の書と白き救世の器と対をなす存在として『滅亡の書』と『黒き救世の器』があるらしい」


「あるのかよ……。ていうか、滅亡するのになんで救世って言葉が一緒に出てくるんだ」


「生きることが救いとなる者もいれば、命を終わらせることが救いとなる者もいるということだ。そなたにも理解できないことではあるまい。より良く生きることと同じく、安らかな終わりを迎えるということも、人に救いをもたらすのだ」


「言われてみれば、まあ、そういうものかもしれないけどさ」


 言い知れぬ不安が心をざわめかせる。

 そうか、あるのか。黒き救世の器。

 てことは、おそらく……。


「なに、心配することはない。教団は長きにわたり滅亡の書と黒き救世の器を探してきたが、ついに発見することはできなかった。我々が発見できなかったものを新世界が発見したとは考えられない」


 おいやめろ。不吉なフラグをたてるな。

 おれの不安をはっきりさせるな。


「もし仮に新世界が黒き救世の器を発見できたとしても、彼らにはそれを動かすことはできないだろう。救世の器を動かすには、動力源と操作系統を担うために二人の救世の子が必要となるらしいからな。人の体で例えれば頭脳と心臓が必要になるのと同じだ。彼らのもとにいる救世の子は一人だけだから、動かすことはできまい。救世の器そのものを改良すればいいかもしれないが、それは不可能だろう。さっきも言った通り、我々の技術では解析できないほど高度な技術でつくられたものなのだから」


 ああ……。

 どうやら、覚悟を決めるしかないらしいな。

 せめて『親友』の無事を祈ろう。


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