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主題なき春のラプソディ  作者: 青山 樹
第四章 『光の先へ』
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第三話 『イタいもんやで中二病は』

 最も力のある者が、自分にとって都合よく世界の秩序や仕組みをつくる。

 たぶんそれは、どんな世界でも同じことなんだろう。

 なら、教団がそう動いてもおかしくはない。


 顔は見えないけど、おれは委員長の満足そうな表情を感じた。どうやら、当たっていたらしい。


「なぜそう思うのか、話してみたまえ」


「創世の書ってのは教団にしか内容がわからないんだろ。じゃあ、教団の言ってることが本当に創世の書に書かれているかどうかなんて、誰にもわからないじゃないか。教団にとって都合のいい解釈や、でっちあげがあってもわからない。確かめようがないんだから。うまく言えないけどさ、誰かが一方的につくった秩序に従って生きるのは、それがわかっているにせよわからないにせよ、間違ったことなんじゃないのか?」


「私もそう思うわ」


 『少女』が言う。眠そうにしていても、どうやらちゃんと話は聞いていたらしい。


「そもそも創世の書なんてどこの誰がつくったのかもわからないし、そんなものに基づいてつくられた秩序に黙って従うのはつまらないじゃない」


「なるほどな。やはり君達は、救世の子というわけか……」


 委員長は腕を組み、ため息をつく。


「今、この世界が直面している問題はまさにそれなのだ。時代がたつにつれ、この仕組みそのものに限界が来てしまった。教団の存在や創世の書の原典こそまだ明らかにはなってないが、委員会と結社の関係と、それを操る黒幕の存在に気づいた者達は確実に増えていった。やがて彼らは、自分達を中心にした新しい世界をつくろうと動き始めた。委員会や結社からもそれに同調する者が現れ、その勢力は増していった。そしてついに、彼らは自分達を『新世界』と称して、委員会や結社に次ぐ第三の勢力として現れたのだ」


 委員長の正面に、海に浮かぶ三日月型の島の映像が映し出される。結社の拠点だった島だ。たしかこの島は何らかの攻撃を受けて消滅したはずだ。


「もともと教団が立てた計画では、この島は委員会の特殊部隊が占領する予定だった。しかしこの島は、委員会が極秘に開発していた新兵器の攻撃によって消滅してしまったのだ」


 映像が切り替わり、宇宙空間に浮かぶ巨大な建造物が映し出される。

 雪の結晶を思わせる六花のような形をしていて、周辺部分にはソーラーパネルらしきものが大量に取り付けられていた。建造物の中心部は円形の空洞になっていて、その奥にはパラボラアンテナのような装置が空洞のふたをするように設置されている。


「これがその新兵器だ。太陽光を主なエネルギー源としたクリーンな巨大衛星兵器。中心部の発射口からは強力無比な破壊光線を発射できる。しかも、大気圏上に多数配置された反射用の衛星を使えばいかなる地点も攻撃可能という優れものだ」


「なんでそんなおっかないもんをつくったんだ!」


「これはもともと新世界に対する抑止力としてつくったものなのだ。どうやらこれの開発に関わっていた者の中に、彼らとつながっていた者がいたらしい。おかげでこの兵器のコントロールは奪われてしまい、結社の拠点は攻撃されて消滅したのだよ」


 アホのお手本みたいな話だった。本末転倒とはまさにこのことだ。


「更に困ったことに、新世界はソレラシキー粒子に関するテクノロジーも入手したらしい。それをこれに応用し、より強力な破壊力を持ったものにしてしまったのだ」


「どのくらい、強力なものになったんだ?」


「我々が試算したところ、少なく見積もっても全人類の半分くらいは死滅させられるほどの力はあるだろうな」


「まさに世界の終わりじゃねえか! どうすんだよ、おい!」


「ちょっといいかしら」


 真剣な顔で『少女』は委員長に言う。


「この兵器に名前はあるの?」


「いや。まだ名前は付けられていない」


「今はそれどころじゃないって!」


「あら、名前は重要よ。そうね…………『終末の光』なんてどうかしら」


「いやだから、どうかしらじゃなくてさ。そういう悪ノリはよくないって」


「さて、この終末の光なのだが」


 委員長は話を続ける。どうやらこの兵器の名前は終末の光に決定したようだ。


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