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主題なき春のラプソディ  作者: 青山 樹
第四章 『光の先へ』
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第二話 『それでは委員長のお話です(笑)』

 委員会と結社を操っていたのが、同じ人物?

 なんだそりゃ。そんな世界規模のマッチとポンプがあるもんなのか?


「……マジで?」


「もちろん、マジで。ちなみに私は最初、教団に救世の子として迎えられたの。だから委員会と結社のどちらにも自由に行き来ができたのよ」


「ちょっと待って。それじゃあ、この前君が話してたことはなんだったんだ? 委員長や指導者に条件付きで自由を認めさせたって話は」


「半分は本当のことよ。そういう話をした相手が長老だったというだけ。でも、あの時はまだここまで話すわけにはいかなかったのよ。あなたをここに、教団の聖地に連れてくるまでは」


「じゃあ、この前の委員会と結社の戦いは、何だったんだ?」


「言ってしまえば一人じゃんけんみたいなものね。もちろん、ちゃんとした目的と理由はあるのだけど」


「とにかく、全部説明してくれ。一体何が目的なんだ。あんた達はおれをどうしたいんだ?」


「それについては長老が直接話すことになっているわ」


 『少女』は指導者のほうを見る。指導者はうなずくと、緑色に輝くソレラシキー粒子をまといながらどこかへ飛んでいった。


「じきにあの子が長老を連れてくるでしょう。それまでに話しておきましょうか。私達が、委員会と結社、そして教団が、何を目的としているのかを」


 おれと『少女』の間に委員長の立体映像が立つ。


「古の時代より、教団は創世の父が遺したとされる創世の書を守護してきた。創世の書に記されている神聖言語を解読し、その内容に従って人の世をつくり、人々を治めてきた。人々は創世の書を神の化身として崇拝し、その解読ができる唯一の存在である教団に絶対的な権威を認め、教団はその権威を背景に人々を治めてきたというわけだ。創世の書に記されている内容は口伝によってのみ継承されていたことから、教団以外の者がそれを知ることはできず、教団の権威は長きにわたり保たれてきた」


 いちおう重要そうな話なので、おれはがんばって頭を働かせながら話を聞いた。


「やがて時代が進み、人々が広い範囲にわたって社会や国家を形成するようになると、教団は表舞台から姿を消した。教団はあくまでも神聖な領域に属するものであり、世俗との関わりが深まれば権威が衰えるおそれがあったからだ。しかし世俗とのつながりを断ってしまっては、創世の書に従い人の世を動かすことはできない。なので教団は自分達の活動を代行させるために世俗における権力機構をつくった。それが現在の委員会の原型となったのだ。君も知っての通り、委員会の役割は世界における秩序を維持することである。そしてその秩序とは、創世の書に従って教団が導き出してきたものなのだ」


 たぶん『少女』はこの話を以前にも聞いたことがあるんだろう。

 だから今、『少女』は眠そうに目をこすっているのだ。

 おれは奥歯をしっかりと噛みしめ、あくびをおさえこむ。


「しかしその秩序とて完璧なものではない。人間とはもともと不完全な存在であり、その人間がつくる世界も、やはり不完全なものでしかないのだ。どこかでほころびは必ず生まれてしまう。それが大きくなりすぎると世界は乱れ、秩序は崩壊し、教団や創世の書までも失われかねない。世界の道標たるものが失われるということは、世界の終わりに他ならない。それを防ぐために教団は、秩序に抗う者達、秩序に救われなかった者達をまとめるための仕組みをつくった。それが現在の結社の原型となったのだ」


 『少女』は口元を手で隠し小さくあくびをすると、ひざを折って座った。

 委員長の話とは全然関係ないけど、おれはこういう女の子座りが大好きだ。


 今、この時、『少女』の膝枕で眠ることができればどれほど幸せだろう。


「教団は委員会と結社という二つの組織を使って世界を動かし、導いてきた。秩序を維持するために委員会を使い、結社を使って秩序の崩壊を招く危険性を把握し、必要に応じて二つの組織を戦わせながら秩序の革新を行ってきた。個人から国家に至るまで、この世界を構成する様々な要素は委員会か結社、つまり教団のもとにまとめられた。すべては創世の書に従って世界をつくり、同時に世界の暴走と破滅を防ぐためのことだ」


 とうとう我慢できなくなり、おれは大きくあくびをした。

 そして、漠然と頭に思い浮かんでいたことを委員長に言う。


「なんていうかさ、それってたんに、教団にとって都合のいい世界をつくってるだけなんじゃないのか?」


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