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主題なき春のラプソディ  作者: 青山 樹
第三章 『未知の力』
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第十三話 『今までの連中も大概ろくでもない連中やったけどな』

「はっはっは。ずいぶんと派手に暴れてくれたではないか、結社の諸君」


 それは聞き覚えのある高笑いと合成音声だった。

 まさかと思いながら目を開けて中央にあるスクリーンを見る。

 そこに映し出されていたのは、委員長の姿だった。やはり今回も首から上は途切れている。


「おいおい、これは一体どういうことだ? なんであんたが出てくるんだよ」


 すると委員長は得意げに胸を張った。


「我々の情報網を甘く見てもらっては困る。結社がよからぬ動きをしていることはすでに承知していたのさ。本部を守るために戦うこともできるが、それでは無意味に被害が拡大してしまう。なので今回は、気前よく諸君らに本部をくれてやることにしたのだよ。もっとも、委員会の中枢機能はすでに別の場所へ移転してあるがな。たとえるなら結社の諸君は、空き家に空き巣へ入ったようなものなのだよ。はっはっは」


「てことは、何もかもあんたの手のひらで転がされていたってことか?」


「じつに、まったくもって、その通りだ」


「じゃあ、彼女が結社の一員だってことも最初から知ってたのか。結社の動きをつかむために、わざと泳がせていたんだろ」


「ん? あー…………、まあ、な」


「てめぇ、くそっ、ふざけんな! なにが、まあ、だ! 今思いついただろ!」


「はっはっは。そんなことは些細なことさ。それより、我々もタダで本部をくれてやるつもりはない。代償として、これを頂いていこう」


 スクリーンの映像が切り替わる。

 青く澄んだ海に浮かぶ、三日月型の島が見えた。何かの基地として使われているらしく、山や森におおわれた島のところどころには、研究所らしき建物や電波塔らしき建造物など大掛かりな施設が見える。


「あれは結社の本拠地よ」


 『少女』が言う。なるほど、たしかに秘密基地的なかんじがしないでもない。


「まずいわね。本部への総攻撃で人は完全に出払っているから、今の本拠地は無人の状態よ。攻撃を受けたら、簡単に占領されてしまうわ」


「留守番くらい置いとけよ! 結社にはアホしかいないのか?」


「仕方ないわ。結社なんてしょせんは秩序についていけないダメ人間の掃き溜めなんだから」


「そんなひどいこと言っちゃダメだって」


「はっはっは。敵のいない敵基地を攻撃するというのもふざけた話だが、まあたまにはいいだろう。さあ、全軍出撃だ! その島を我々の新たな拠点に――」


 委員長の言葉が終わらないうちに、上空から島に向かって光の束が一直線に降りそそいだ。

 何事だと思った瞬間、すさまじい爆発音がノイズと共にブリッジ全体に轟き、スクリーンは強烈な光を映し出してまっ白な輝きを放った。

 その刹那に、おれは見た。

 島を飲み込むように広がっていく、巨大なエネルギーの塊のようなものを。

 スクリーンの映像がもどった時、そこに見えたのは荒れ狂ったように渦を巻く海だけで、さっきまであったはずの島はどこにもなかった。


 何が起こったのかはすぐに理解できた。

 なんらかの攻撃によって、島が消滅したのだ。


 耳障りなノイズと共に、委員長のうろたえた声が聞こえてくる。


「どういう、ことだ……。これは。あれはまだ、未完成の、はず…………。なに? まさか『彼ら』が?」


 意味ありげな言葉が聞えた時、艦のどこかから爆発音が聞え、ブリッジが大きく揺れた。スクリーンの映像も途切れる。


「今度はなんだ?」


「敵襲よ。でもこれは委員会ではないわ。おそらく、『彼ら』によるものね」


「いや『彼ら』って誰だよ! もういやだ! もうやめてくれ! これ以上変なのを増やすな!」


 そう叫んだ時、ブリッジの正面を何かが横切った。

 またろくでもないものが現れたんじゃないだろうなと思いつつ目をやると、やっぱりろくでもないものが現れていた。


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