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主題なき春のラプソディ  作者: 青山 樹
第三章 『未知の力』
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第九話 『笑えばええと思うで』

 真っ逆さまに、おれは落ちていった。

 自然界の法則に従い、当然のごとく。

 いや、今までの状況のほうが異常だったのだろうけどさ。

 しかしこれが正常とはいえ、これはない。


「ああああああっ! 死ぬっ死ぬっ! 落ちるうううぅ!」


「大丈夫よ。あなたなら必ずソレラシキー粒子を出せるわ」


 おれに寄りそうようにして、『少女』もソレラシキー粒子をまといながら落ちていく。


「無理無理無理! だいたい、どっからどうやって出すんだよ!」


 ここだ、とでもいうように、『少女』は自分の胸をたたく。


「言ったでしょう。意志は力を生む源だって」


 そんないいかんじのセリフでどうこうできる状況じゃないだろ。

 なんてことはもう言ってられないな。こうしている間にも地面はどんどん近づいている。

 ソレラシキー粒子を出さなければ、マジで死んでしまう。

 こんなアホみたいなことで死ぬのはごめんだ。

 おれは覚悟を決め、両手を前に突き出し、腹の底から声を出した。


「いでよっ! ソレラシキー粒子ぃっ!」


 しかし、何も起こらない。

 どうすりゃいいんですかね、と『少女』のほうを見る。

 『少女』はとっさにおれから顔をそらした。

 その寸前にちらっと見えた横顔は、少しふくらんでいるように見え、ほどなくして「ぷっ」と小さく吹き出すような笑い声が聞えた。


「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ! 殺せぇえ! もう殺してくれぇ! あ、やっぱ助けて。マジで助けて! 死ぬ! 死ぬ! いやだ、いやだ、ああああああぁぁぁっ!」


 地上に広がる大都市の姿がいよいよ目前にまで迫る。

 密集した高層ビル群と、その下に張りめぐらされた道路網が見えた時、おれの体を包むようにして青く輝く光の粒子が現れた。

 落下していたおれの体はギリギリのところで上昇に転じ、雲の上まで上ったところで静止した。


「残念ね。あと少しでいけると思ったんだけど」


 そう言いながら、『少女』はおれのそばに飛んでくる。


「はぁ……、はぁ……、そう、だね。ほんと、あと少しで、逝くところだったよ」


「せっかくだし、もう一度チャレンジしてみる?」


「おれを殺したいの?」


 冗談、と言って『少女』は笑った。


「まったく……。笑い事じゃないよ」


「あら、あなただって笑っているじゃない」


 そう言われ、おれは笑っていることに気づいた。

 さっき死にかけたばかりなのに、どうして笑っているのだろう。

 なんて考えるまでもないか。

 なんかもう、いろいろありすぎたんだ。


 あまりにも世界がとんでもなさすぎて、だからもう、笑うしかないんだ。


 だからといって、投げやりな気持ちや後ろ向きな気持ちで笑っているわけじゃない。

 とても前向きな気持ちで、おれは笑っていた。

 今ある悩みも、これからの不安も、どうにかなるさと思えるような、そんな心地よい高揚感と興奮が、おれの心と体を満たしていた。


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