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主題なき春のラプソディ  作者: 青山 樹
第三章 『未知の力』
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第二話 『ええかげんやけどそれっぽい力』

 さて……どこからつっこめばいいものか。


「おれをここに連れてきたのは、あんたなのか?」


「そういうことになるな。結社の手によって、君はここに連れてこられた。つけ加えると、君が保護されていた委員会の地下施設を襲撃したのも我々だ」


「おれと一緒にいた女の子はどうした。無事なのか?」


「彼女は君と同じく我々の手のうちにあるものと思ってくれてかまわない。もっとも、無事かどうかは君のこれからの行動や態度によるかもしれないがな」


 あどけない子どもの顔に、不吉な笑みが浮かぶ。


「どういうことだ。お前らの目的は何だ。なぜおれを連れてきた」


「それは君自身もよくわかっているのではないか? 我々も一般人をさらうほど暇ではないからな」


「……ナントカのアレを、手に入れるためか」


 正解、というように指導者は軽快に指を鳴らす。

 すると指先から緑色の光の粒子が火花のように飛び散り、音もなくこちらへ飛んできて、おれの周囲にふわりと漂った。


「委員会と同じく、我々結社も世界規模の組織だ。大は国家から小はニートにいたるまで、あらゆる勢力を傘下に組み込んでいる。そんな我々にとって、君という救世の子を見つけ出すなど造作もないことなのだよ」


 だが、と指導者は続ける。


「規模こそ委員会に並ぶものの、その実力はかなり劣る。長きにわたり結社は委員会と対立を重ねてきたが、正面から挑んだ戦いで勝てたことはほとんどない。せいぜい奇襲を成功させる程度のものだ。もっとも、我々とて力を得るための努力は重ねてきた。その結果、我々はこの力を生み出した」


 光の粒子はおれを中心にして渦を巻くように動き出す。

 その直後、おれの体はふわりと浮かびあがった。

 それは引っぱられるような感じではなく、吊られているかんじでもない。

 まったくの未知の感覚にさらされ、おれは困惑すらできなかった。


 そんなおれの様子を満足げに眺めながら、指導者は言う。


「遠い昔から魔法や超能力の類は語り継がれていたし、現代では科学技術によってそれらを実現できる段階に迫ってきた。我々結社は最先端の科学技術をはじめ、精神学、脳科学、生物学、地球物理学、宇宙物理学、宗教学、神話学、民俗学などあらゆる分野の研究と開発をすすめ、人類が持つ新たな力の可能性を発見し、その発現に成功した。人の体を思いのままに操るサイコキネシスや、意識に干渉できるテレパシー、透視や千里眼いった超能力的な力を、独自のテクノロジーとして獲得したのだよ」


 そんなバカな、とは言えなかった。

 現におれは宙に浮いているのだから。


「そしてこの光の粒子こそが、人類に新たな力を発現させるエネルギーにして、人が秘めていた未知なる力の源泉、『ソレラシキー粒子』なのだよ!」


「悪ふざけにも程があるわっ!」


 なんだそのアホみたいな名前は。この先一生忘れられなくなったらどうしてくれる。


「ふむ。あまりにも突拍子もない現実に、頭がついていけないようだな。まあせっかくだ。美しい夜景でも眺めながら外の空気を吸い、頭を冷やしてくるといい」


「おい、お前まさか――」


 と思ったときにはすでに手遅れで、おれは開きっぱなしの天窓から外へ飛ばされた。


 その後のことは、もう、むちゃくちゃだった。

 このまま一気に大気圏外へ突入するのではというほどに急上昇したかと思うと、今度は急降下して雲を突き破り、空間の認識ができなくなるほどにあっちへこっちへと振り回された。

 風は激しく空気は冷たく息をすることもままならず、星空と軍艦らしき巨大な飛行物体と大地に広がる大都市群の光が目まぐるしく視界をよぎっていく。

 そんな状況下でおれの体や命を保証しているのはソレラシキー粒子とかいう正体不明の謎エネルギーで、まあおれにとっては生身同然の状態だった。


 いや、もう……。

 ほんとマジで、生きた心地がしない。


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