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主題なき春のラプソディ  作者: 青山 樹
第二章 『世界を救わんとする者たち』
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第八話 『戦うことが大事なんや』

 なんだか話がさらにややこしいことになってしまったが、それでも『親友』について情報が得られたのはありがたかった。


「君はあいつのことで何か知ってるの? もし知ってるなら、教えてくれないか」


「私も多くは知らないわ。ただ、上層部と言っていたことから、彼も私達と同じく委員会と関わっていることは確かでしょうね」


「じゃあ、おれ達の仲間なんじゃないのか? なんで襲いかかってきたんだ」


「委員会にも派閥があって、中には委員長の座を狙っている連中もいるの。彼と接触した上層部はその一つでしょうね。委員長よりも先にナントカのアレを手に入れれば、委員会における権力を自分達のものにできる。そのためには救世の子を自分達だけの手元に置いて、それ以外は抹殺するべきだと考えているのかもしれないわ」


「そういうことか。迷惑この上ない話だけど、一応筋は通ってるな」


「私が言うのもなんだけど、彼はそんな思惑なんてまったく知らないのでしょうね。ただ上層部に利用されているだけで、純粋にあなたを助けようとしていたのよ。…………そう、一度砲火を交えたからかしら。彼の一途な思いが、わかる気がする」


 『少女』は手を固く握りしめ、遠い眼差しをどこかしらへ向ける。


 交えた、のかな……。

 たしか、一方的に爆殺していたような気がするけど。


「まあでも、おれもそれは信じるよ。あいつは良くも悪くもまっすぐなやつだからさ」


「もしよければ、話してくれる? あなた達のことを」


 おれはうなずき、コーヒーを一口飲んで喉を潤した。

 コーヒーは少しぬるくなっていたけど、これはこれでというかんじだった。


「あいつはおれにとって一番の親友なんだ。幼稚園の頃からの付き合いで、今年の春からも同じ高校に通うことになった。まさしく十年来の親友ってわけだ」


「仲が良いのね。だから高校も同じにしたの?」


「いや……。あいつはちがう高校への進学を希望していたんだよ」


「ならどうして、同じ学校に?」


 ここから先のことを話すべきかどうか、おれは迷った。

 しかし『親友』と『少女』に接点がないというわけでもないので、おれは事情を説明した。


「あいつの家は勉強にやたらと厳しくてさ、本当ならもう一つ上のランクの高校に進学しなくちゃいけなかったんだよ。あいつもそれは理解していたから、受験勉強はずっとがんばっていた。だけど、思うように成績が伸びなくて、結局進学はあきらめたんだ」


 不思議なことに、その頃の『親友』の姿は今でもちゃんと思い出せた。

 受験勉強に必死だった中学三年生の頃。おれ達は毎日のように学校の図書室や自習室へ通い詰め、最終下校時刻までそれぞれの戦い、もとい受験勉強に励んでいた。


 あたたかな春も。

 燃えるような夏も。

 穏やかな秋も。

 しずかな冬も。

 おれとあいつは、いつも一緒だった。


 だからおれは知っている。『親友』が目標に向かってどれほどがんばっていたのかを。

 そして、その努力が報われなかった時の悲しみを。


「正直なところ、おれはこれからあいつと一緒に高校生活を送ることが不安だった。志望校を変えることが決まってから、あいつは普段通りに振る舞っていたけど、無理をしているのはすぐにわかったから。でもおれは、あいつに何もできなかった。いや、力になるどころか、おれはあいつを避けていたんだ。今日、あいつに会ったのも中学校の卒業式以来だったしね」


 重くなった胸の内を軽くしようと思いコーヒーを飲む。

 コーヒーはすっかり冷めていて、苦味と酸味が存在感を強烈に示していた。


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