第二話 『どう転ぶかわからんもんやで』
ごく普通の一般人であるおれが、救世の子?
そんなバカげたことが、中二病の限界を突破したようなことが、現実の世界でおこるわけがない。
フィクションの世界でも今時こんな話はないだろうさ。
ははっ、ウケるわー。
そしてないわー。
百億歩譲って『救世の子(笑)』なら、微粒子レベルでありえるかもしれないけど。
そんなおれの心境を察したのか、委員長は言う。
「これは事実だ。君の発言がきっかけとなってあの騒動が起こり、その影響は世界各地に広まって、世界規模で変革の兆候が見られようとしている。君という鍵が新たな世界へと続く扉を開き、今ある世界は扉の向こう側へ引きずり込まれてしまったのだ。君が受け入れる受け入れないに関係なく、これが事実であることは変わらない」
「……それで、おれがその救世の子であるとして、これから先はどうなるんです? まさかおれを生贄にしてナントカのアレを召喚するとでも言うんですか?」
「そんなことはしない。そもそもどうすればナントカのアレを導き出せるのかは、我々にもわからないのだ。創世の書は失われし神聖なる言語で記されていて、そのすべてが解読されているわけではないからな。それらしい記述もあるにはあるが、確信を得るに至るにはまだまだ時間がかかるだろう。しかしさっきも言った通り、救世の子がナントカのアレを導き出すことは確かなことだ。というわけで、君の今後についてだが、しばらくは委員会の保護下にはいってもらうことになる」
「利用方法はわからないけど利用価値はあるから、とりあえず手元に置いておくってことですかい」
「そういうことだ。もちろん無理に引き止めはしない。どうしても嫌だというのであれば元の場所へ君をかえそう。混乱と無秩序と不条理がうずまく、元の場所へな」
おれは深くため息をついた。
「あなた達に保護してもらうしかないようですね。あんなところにかえされたら、命がいくつあっても足りゃしない」
「賢明な判断だ。すでに君の存在は公になっているから、今後は様々な勢力が君を狙うことだろう。だが心配することはない。いかなる脅威からも委員会が君を守ると約束しよう。なに、委員会の力は絶大だ。どのような勢力であれ、恐れることはないさ」
はっはっは、と委員長は得意げに笑う。
おいやめろ。それはフラグだ。
予想外の攻撃を受けて「バカな! こんなはずでは……」とか言っちゃうはめになるぞ。
そんなお約束なことあるわけないじゃないかと思いたいのだが、もう十分すぎるくらいに非現実的なことが起こっているので、そうなる可能性は否定できない。
まったく、何が起こるかわかったもんじゃないからな。




