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主題なき春のラプソディ  作者: 青山 樹
第二章 『世界を救わんとする者たち』
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第一話 『世界を救うんもええやないか』

 委員長曰く。


「我々は長きにわたりナントカのアレを探し求めてきた。しかしナントカのアレについての情報は極めて少なく、それが物質的なものなのか、概念的なものなのかさえわからなかった。だが、それが必ず現れるということと、それを導き出す者が存在するということには確信を持っている。それらのことは『創世の書』に記されているからだ。創世の書については、君もある程度のことは知っているだろう」


「いや、全然知りませんけど。なんですか、そのうさんくさい名前の書物は」


「うさんくさいとは失礼な。太古より伝わる聖なる書物で、この世界の起源や、世界の根幹をなす様々な事象が記されているものだぞ。それを知らないとは……。まったく、最近の若い連中ときたら、もっと世界的な視野と意識を持つことを心掛けなければならんぞ。そんなことではこれから先の世界を生きていくことはできまい。そもそもだ」


「あの、だからそういうのいいんで、早いとこ話を進めて下さい。その創世の書とやらにはナントカのアレについてどう書かれているんですか」


「具体的な情報は現在でも判明してはいないのだが、ナントカのアレにはこの世界の秩序を維持する力があるらしい。秩序を維持するということは、すなわち世界の主導権を握るということだ。だからこそ、我々はナントカのアレを探し求めているのだよ」


「つまり、自分達の権力を確固たるものにするため、ナントカのアレが必要ってことですか」


「邪な意志を持つ者達の手に渡らないよう、我々が管理するだけだ。他意はない」


 いかにも邪な意志を持つ者が言いそうなセリフである。


「でも、ナントカのアレとやらには本当にそんな力があるんですかね。おれがその言葉を口にしたら、その場は一気に無秩序の混沌状態になりましたよ」


「それは君が口にした言葉であって、ナントカのアレそのものではない。その時の状況は我々も把握している。創世の書と同じくナントカのアレも一般的には知られたものだが、それは軽々しく口にしてはいけないものだ。例えるなら、恥部の名称を公衆の面前で叫んだり、恥部そのものを露出したりするのと同じようなことなのだよ。そんなことをすればどうなるか、君にもわかるはずだ」


「ナントカのアレって、そういう扱いなのかよ……」


 隣にいる『少女』はこちらに視線を送り「不潔ね」とつぶやいた。


 なんだろう……。

 心が少し、悲しくなった。


「いやでも、そうだとしてもおかしいですって。大騒ぎになるだけならまだ納得できるけど、暴動みたいになってましたよ。おれなんか親友には殴られるし、見知らぬババアには襲われるしでもう踏んだり蹴ったりだったんですから」


「うむ? 私の知る限り、君は踏まれても蹴られてもいないはずだが?」


「もののたとえです。そこをつっこまないでください」


「混乱の発生原因についてだが、すでに判明している。そしてそれが、君がここにいる理由につながるのだよ」


「どういう、ことなんです」


「そもそも力とは、それを操るにふさわしい資格と資質を持った者でなければ十分に効果を発揮することはできないのだ。幼児と実業家に同じ額の大金を渡しても、そこから生まれる経済効果は全く異なるだろう。それと同じだ。君には資格があり、資質があった。なのでナントカのアレという言葉をあの場で口にした瞬間に、世界は激変したのだよ。そして、その事実は、君が創世の書に記されているナントカのアレを導き出す存在、『救世の子』であることを示しているのだ」


「…………は? なんだって? キュウセイの子?」


「そうだ。創世の書にはこのようなことが記されている。世界が変革を迎え、人の世が存亡の危機に瀕するとき、世界の要となるナントカのアレを導くため救世の子らが現れる、とな」


「その、救世の子が、おれだと?」


「そうだ」


 アホか。というのがおれの率直な感想だった。


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