六話
キャラの性格悩みました。
敬が部屋に入ると、アナスタシアに似た20代後半ぐらいに見える女性と、敬と同い年くらいの少女がいた。
敬はその少女を見ると固まった。 そして、少女の方も敬を見て驚愕に目を見開き、固まった。
その原因は少女の方にあった。 正確には、少女の服装に⋯⋯だが。 なんと、少女は下着姿で今から服を着ようとしているところだった。 今手に持っている服以外にも、その周りにたくさんの服が床に置いてあるところから見るに、服を試着していたんだろう。
え? え? どうしよう。 とりあえず後ろを向こう!
敬はそう考えるとすぐに後ろを向いた。
それから布の擦れる音が聞こえ、気まづい空気のまま待つと、肩を軽く叩かれた。 振り向くと、近くにアナスタシアがいたため、叩いたのはアナスタシアだと敬は理解した。
それから少女の方を見ると、アナスタシアを少し若くした感じの可愛い少女がいた。
その少女は、顔を赤くして敬を睨んでいる。
敬はその少女を見て、先程見た光景を思い出し、頬を赤くして目を逸らした。
そんな敬の様子を見て、女の子が憤った様子で、
「さっき見たことは忘れて!」
と、叫んだ。
「う、うん。 忘れるよ」
敬は曖昧な様子でそう言い、 「忘れようと思っても忘れられないよ!」と心の中で愚痴った。
少女は敬をじっと見てから溜息を吐いた。
「はぁ、もういい。 それでお姉ちゃん。 この人は誰なの?」
「この人は敬と言って、森で会ったのよ。 それで森から出るにはどっちに行けばいいかって聞かれて」
「それで拾ってきたの? お姉ちゃん。 今すぐ森に返してきて!」
少女はアナスタシアの言葉を遮ってそう言った。
「あ、あれ? 僕って捨て犬と同じ扱い⋯⋯?」
敬の呟きはスルーされた。
「それがね、敬は記憶喪失みたいなの」
少女は疑わしげに敬を見た。
「それ、本物なの? この敬って人に騙されてるんじゃないの?」
少女の質問に、アナスタシアは首を振った。
「いえ、それはないと思うわ。 だって冒険者について知らなかったし、城壁見て喜んだり、市場で子供みたいにはしゃいでいたのよ? それに、普通に会話出来てるし、記憶喪失で間違いないと思うわ」
敬はそんなアナスタシアの言葉に居心地悪そうにした。
「そうなんだ⋯⋯」
少女はそう呟いた。
そして、敬は頭を抱えたくなった。
改めて自分の行動を振り返ると、僕は何も間違ってはいないんだろうが、傍から観るとただの子供みたいだ。 それも、人の口から言われると、さらに精神的にダメージがある。
フルールはそんな敬を見て、優しく頬を撫でる。 それによって、敬はさらに惨めな気分を味わった。
「それでなんだけど、しばらく敬には家に居てもらおうと思って。 お母さん、いい?」
「ええ、いいですよ」
「えぇー、私は反対!」
「どうしてよ? ちょっと下着姿見られただけでしょ?」
「ちょっとって何! お姉ちゃんは見られてないかもしれないけど、私は見られたの! それに、本当に記憶喪失かも分からないし」
「多分大丈夫ですよ。 悪い人には見えませんし」
「むぅ」
「いいじゃない。 それに彼、強いと思うのよね⋯⋯」
アナスタシアは目を細めて敬を見た。
「そうなの? そんな風には見えないけど⋯⋯」
「だって魔物に襲われたって言ってたけど体に傷一つない。 武器も持ってないのに⋯⋯ね」
「そうなの? なら、優秀な魔法使いかもしれないんだ」
そう言って少女は敬に期待のこもった目を向ける。
うう、別に得意どころか、初めて使ったのつい最近なんだけど⋯⋯
「そんなことないと思うけど⋯⋯。 魔法は精霊のおかげだし」
「精霊魔法⋯⋯? 珍しい。 闘技場でしか見たことない」
「そうなの? でも、僕は精霊魔法しか知らないや。 普通の魔法見たことないもん」
「へぇ、なら魔法教えてあげようか? 精霊魔法使えるなら魔力はあるよね?」
「本当!? 魔力ならたくさんあるよ」
「よし、なら教えてあげる。 だから、私にも精霊魔法見せてね」
「うん。 あ、それで君はなんて名前なの?」
「私⋯⋯? そういえば言ってなかった。 私はアメリー」
「へぇ、それでそちらの女性は⋯⋯?」
「私? 私はアンナ。 アンナさんとか、お母さんでいいですよ?」
「そ、そうですか。 なら、アンナさんで」
「そうですか⋯⋯」
少し残念そうにするのはやめて欲しい。 それにしても、アメリーは許してくれたようで良かった。 これもフルールのおかげだ。
「あ、それでそちらは⋯⋯?」
敬はメイドさんにそう聞いた。
「私はソフィア。 呼び捨てで構いません」
さすがにそれはハードルが高い気がする。
「あはは⋯⋯ソフィアさんも僕のことは敬でいいです」
やっぱり美人の人には弱気に出てしまうものだろう。 それにしても、今更だが靴で家の中を歩くのは違和感がある。
「それじゃあ敬、庭に行くからついて来て」
アメリーはそう言って歩いていった。 敬もそのあとをついて行った。
「敬、精霊魔法使ってみて」
庭に出てすぐアメリーはそう言った。 それに対して敬は悩む。
と言われてもどの魔法を使おう。 庭を傷つけるのは悪い気がするし。 アメリーに聞いてみよう。
「アメリー。 どんな魔法を使えばいいのかな?」
「そうね⋯⋯なら、あの岩を壊してみて」
アメリーは庭にある少し大きな岩を指さしてそう言った。
「うん。 わかった」
敬はそう言うと、岩に指を向けた。 それからやり過ぎないように調整して風の弾を撃った。
風の弾が当たると、岩は砕けて飛び散った。
「凄い! 今壊れるのしか見えなかったけど、なんの魔法なの?」
アメリーは興奮気味に敬に聞いた。
「これは空気を圧縮して打ち出したんだよ」
「へぇ。 発動まで早いし無詠唱でこの威力なんて凄い。 それにしても、風属性の魔法なんだ」
「風属性だと何か問題なの?」
「別に問題はないけど⋯⋯風属性の魔法はそこまで威力出ないと思ってたから」
「そうなの?」
「うん。 風属性の魔法は相手を飛ばしたり、早く動いたりが多くて、こんなふうに壊したりするのは見たことない」
「そうなんだ⋯⋯じゃあ、次はアメリーが魔法を見せてよ」
「わかった」
アメリーはそれから聞きなれない言語の言葉を言い出した。 それからアメリーの前に雷が出て、木に穴を空けた。
敬は凄い!と思ったが、木の穴が空いたところから火が出ているのが見えて、慌てて風の弾を放った。
木にはさらに大きな穴が空く。
それを見て、アメリーは口を尖らせた。
「⋯⋯やっぱりそれずるい。 私ももっと威力出せるけど、詠唱しないと無理」
「それは⋯⋯」
敬は困ったような曖昧な表情をする。
「敬は私のパートナー。 強いのは当たり前」
フルールがアメリーにそう言った。
アメリーはフルールを見て、目を見開いた。
「⋯⋯妖精?」
「違う⋯⋯私は精霊。 精霊と間違えるのは不愉快」
「そうなの!? 私、精霊と話すの初めて!」
「光栄に思うと良い」
「⋯⋯⋯⋯精霊ってみんなこうなの?」
アメリーはなんとも言えない顔で敬に聞いた。 敬はそんなアメリーの様子に苦笑する。
「さぁ⋯⋯? 僕、フルール以外の精霊に会ったことないし」
「フルール? それがその精霊の名前?」
「そう。 フルール様と呼ぶといい」
「絶対に言わない。 ⋯⋯精霊って人にこんな接し方するの?」
「そんなことはない。 お前だけ」
「どうして私だけなの?」
「敬を厄介者扱いしたから」
「そんなの仕方ないでしょ! 下着見られたし」
「まあまあ。 その辺にしとこ?」
敬は優しい声でそう言った。
蒸し返されると面倒だ。
「アメリー。 その人がしばらく家に住む客人かい?」
突然、聞いた事のない声が聞こえた。
敬は声のした方を向くと、そこには二十代~三十代くらいに見え、筋肉がかなりあるイケメンがいた。
「うん。 そうだよ、お父さん」
アメリーはその男性をお父さんと呼んだ。 ということはアメリーの父親だろう。 ちゃんと挨拶しなゃな。
「初めまして。 しばらくお世話になります」
「うん、俺の名前はケネス。 よろしく。 それにしても、凄いの魔法だったね。 記憶を取り戻したときが楽しみだ」
敬はその言葉を聞いて気まづそうにした。
はぁ、うしろめたさを感じる。
「そうですか⋯⋯」
「ああいや、気にする事はないよ。 それで君は剣を使えるのかい?」
「いえ、使えません」
「ああ、記憶がないなら当然か。 ごめんね。 変なことを聞いた」
「こちらこそすいません⋯⋯」
何も悪くないのになぜか謝ってしまった。 リア充オーラのある人には初めから弱気に出てしまう。 これは、根暗の人なら誰でも味わってしまうんではないだろうか? 味わってない人は一人でも大丈夫!とか言う少し性格がきつい人だけだ。
「はははっ、だから気にする事はないって。 それで剣の扱い方を教えてあげよう。 魔法だけだと、何かと不安だろう? それに、娘と一緒にパーティーを組むかもしれないんだ。 強くなって困ることはないだろう?」
⋯⋯確かにそうだ。 僕も強くなりたいし、断る理由なんかない。
「お願いします」
「ああ、勿論だよ。 それでなんだけど、一度模擬戦をしてみないか?」
「模擬戦⋯⋯ですか?」
「そうだよ。 魔法と剣ありのね。 まぁ剣と言っても木剣だよ」
それは僕のいい経験になりそうだ。
「はい。 お願いします!」
「よし、それじゃ木剣取ってくるから少し待っててくれ」
そう言ってケネスさんはどこかへ行った。
「大丈夫なの? お父さん、かなり強いよ?」
アメリーの表情は真面目だった。
敬はそんなアメリーを見て苦笑する。
「別に大丈夫だよ。 実戦って訳でもないしね。 それにフルールもついているし、簡単に負けるつもりもないしね」
「それでも心配だよ。 だって敬ってひょろひょろな体してるもん」
「うぅ⋯⋯。 そう言われると心にくるよ」
敬はそれから無言なフルールの方を向いた。 いつもなら大丈夫、敬は勝つと言いそうなものだが、今回は無言だった。
そんなフルールの様子に敬は首を傾げた。
「どうしたの?」
「敬は強い。 でも、今回は模擬戦。 全力を出す訳には行かない」
「そうだね⋯⋯」
「そう、だからしっかりと制御しないと不味いことになる」
敬はそれを聞いて少し顔を青くする。
ドラゴンのときのようなことをすれば大惨事だ。 気をつけなければ。
「まぁ、大丈夫だよ。 ⋯⋯それに、フルールもいるだろ?」
「うん、私と敬なら問題ない」
「うん。 そう来なくっちゃ」
敬は初の対人戦に胸を膨らませた。
次回の戦闘シーン全然自信ないです⋯⋯。 まぁ気楽に書きますので、気軽に読んでください。