四話
すいません。 設定を変えてたら遅くなりました。 ちょっと魔法のところが曖昧ですが、そのうちしっかりと決めていきます!
敬とアナスタシアは少し歩くと、森を出た。 森の外には草原が広がっていて、魔物が所々にいるのが見えた。
「ふぁ〜、凄い。 草原だあ」
敬は感心したようにそう言った。
そんな敬の様子を見てアナスタシアは苦笑する。
「あなた本当に記憶がないのね⋯⋯草原見てそんな反応する人初めて見た」
「あぁ、まあ目が覚めたら森にいたからね。 少し出れたのが嬉しかったんだよ」
「そうだったのね⋯⋯そういえば、敬は魔物と遭遇しなかったの?」
「したよ?」
「武器も持っていないのに、よく生き延びれたね」
「ああ、精霊がね」
「⋯⋯それ、さっきも言っていたけど、精霊と契約しているの?」
「うん、森で会って契約したんだ」
「いいなあ。 私も精霊と契約したい」
「どうして契約したいの?」
「だって、精霊と契約したら強くなれるじゃない」
「アナスタシアは強くなりたいの?」
敬がそう聞くと、アナスタシアはキョトンとした様子で敬を見た。
「当たり前じゃない。 敬もそうでしょ?」
「僕は⋯⋯」
僕はどうなんだろう。 僕は生きたい。 魔物のいる世界では力がないと死んでしまうかもしれない。 それに、フルールに弱いところは見せたくない。
「僕も⋯⋯僕も強くなりたい」
アナスタシアは敬を見て笑顔になった。 それから口を尖らせ不満そうな顔になった。
「でも敬は契約してるじゃない。 でも、契約してればいいってわけじゃないし、強くなる方法はいくらでもある。 別に問題ないか」
アナスタシアはそう言って元気になった。 敬はそんなアナスタシアを見て苦笑すると、ふと疑問に思った。
「どうしてアナスタシアは強くなりたいの?」
「私? 私は⋯⋯お父さんとお母さんみたいな凄い冒険者になりたいの」
「冒険者⋯⋯?」
「そう、冒険者。 魔物を倒したり、悪い人を倒したり、ダンジョンに潜ったり。 昔からお父さんとお母さんの自慢話を聞いているうちに、私も冒険者になりたくなっちゃったの」
「そうなんだ⋯⋯」
「うん。 それで敬は? 敬はどうして強くなりたいの?」
「僕は怖いからだよ。 森で魔物達に襲われて怖くってね。 それで強くなりたいんだ」
「あはははっ、やっぱり理由なんてそんなものよね」
「そうだね。 僕もその冒険者ってのを目指そうかな」
「別に冒険者は目指さなくてもなれるよ?」
「へ?」
アナスタシアはそんな俺の様子を見て苦笑する。
「冒険者には誰でもなれる。 でも、冒険者にはランクがあって、私は最高ランクのSランク冒険者になりたいの」
アナスタシアの表情は真剣で冗談を言っているようではなかった。
「そうなんだ⋯⋯。 なれるといいね」
「ええ、そのために頑張るわ」
敬とアナスタシアはそれから会話しながら歩いていった。
少し歩いていると、石で出来た城壁が見えてきた。
「うわぁ〜、すごいなあ」
敬はそう言って感嘆の息をもらした。
「そうかな? それより早く行こ」
そう言ってアナスタシアは歩いていった。 その後を敬は慌てて追う。 城壁の門の前まで来ると、兵士が何人もいた。
その兵士はアナスタシアを見つけると、敬を見てニヤニヤしながら近づいてきた。
「おう、アナスタシアちゃん。 そっちの坊主は見ねえ顔だがボーイフレンドかい?」
その言葉にアナスタシアは顔を赤くした。
「違うわよ! この人は敬って言って記憶喪失なの」
そう聞くと兵士は表情を固くした。
「アナスタシアちゃん。 それは本当なのかい? 騙されてないか?」
「多分本当よ。 だって嘘を吐いているようには見えないし、さっき話していたけど、物事を知らなさすぎるのよ」
「⋯⋯そうなのか。 それで、そっちの坊主はこっちで預かればいいか」
兵士の言葉にアナスタシアは首を振った。
「敬はうちで預かるわ。 もしかしたら私のパーティーに入るかもしれなし」
アナスタシアがそう言うと、兵士の息をもらした。
「へぇ。 それは将来が楽しみだな。 坊主も暇だったら来いよ。 剣の扱い方を教えてやる」
「えぇっと、はい」
敬は曖昧な返事をした。 剣⋯⋯か。 僕は持ったこともないな。 それでも、やはり冒険者になるなら必要なのかな? もし必要ならここに来よう。
「それじゃあ行こう敬」
「そうだね。 それではまた今度」
「おう、またな」
また話したくなるような人だったな。 日本ではあまり大人と話さなかったら新鮮に感じる。
敬はそんな事を考えながらアナスタシアについて行った。
門を抜けると、石や木などで出来た家があった。 敬はそんな町を見ながら歩いていたため、アナスタシアと少し距離が出来ていた。 アナスタシアはそんな敬を見て溜息を吐くと、苦笑して少し遅めに歩いた。
市場に入ると、敬は見たこともない食べ物や物があり、アナスタシアに興奮気味に聞いていった。 その様子はまるではしゃいでいる子供と、そんな子供を暖かい眼差しで見る親子のようだった。
「やっと着いた」
「あははっ、ごめん。 ⋯⋯それでここがアナスタシアの家?」
アナスタシアの家に着いた時にはもう夕暮れだった。 アナスタシアは溜息を吐き、そんなアナスタシアを見て敬は申し訳なさそうな様子だ。
敬がアナスタシアの家を指さして聞いた。
「そうよ?」
「あはは⋯⋯そうなんだ」
敬は少し緊張した面持ちになった。
それも仕方ないだろう。
今敬が見ている家は、豪邸と言っても差し支えない家だった。
こんな豪邸なんて聞いてないよ! マナーとか知らないし、それで怒られたりしたらどうしよう。
「敬、大丈夫よ。 別に貴族って訳でもないし」
アナスタシアは固まっている様子の敬を見兼ねてそう言った。
それでも敬は信じられなようだ。
「本当に大丈夫だよね? 僕怒られたりしないよね?」
すると、アナスタシアは少し迷った様子で、
「⋯⋯怒られはするかもしれない」
「えぇ⋯⋯。 行きたくないなぁ」
「はぁ、いいから来なさい」
アナスタシアはそう言って敬を引っ張っていった。
アナスタシアがドアを開けて中に入ると、メイド服を着た女性がいた。
そのメイドは敬よりも歳上に見える。 キリッとした顔をしていて、真面目そうな印象を受ける。
敬はその女性が珍しいのか、じっと見る。
凄い! メイドさんだ! メイドのコスプレした人も見たこと無かったけど、今目の前にいるのは本物のメイドさんだ!
「お帰りなさいませ。 アナスタシアお嬢様」
メイドはそう言ってお辞儀をした。 それからはとても気品を感じられた。
「えぇ、ただいま。 お母さんとお父さんはいる?」
「デール様はルイ様と出かけられました。 アンナ様はアメリー様のお部屋にいらっしゃいます。 それで、そちらのお客様は⋯⋯?」
メイドは敬の方を見てそう聞いた。
「えぇっと、この人は敬って言って、さっき森で会ったの。 それについては今からお母さんと話すわ。 ソフィア、ついてきてくれる?」
「はい。 かしこまりました」
「それじゃ、お母さんの所に行くわ。 敬、ちゃんとついて来てね?」
アナスタシアは家の中をキョロキョロ見ている敬に呆れたようにそう言った。
「う、うん。 ちゃんとついてく」
アナスタシアの言葉に敬は少し焦ったように頷いた。
それからアナスタシアとメイドの後ろを少し離れてついて行く。
それにしても緊張するなあ。 こんな豪邸に入ったのは初めてだし、マナーとか全く知らない。 怒られたりしないよね⋯⋯?
「敬、大丈夫。 私もいる」
フルールが何かを勘違いしたのかそう言った。
確かにそうだ。 フルールがいれば怪我とかをする心配はあまりない。 でも、なんか違う。 初対面の人と話すのは理由もなく緊張するし、その人が怒るなんて聞けば尚更だ。 でも、フルールの言葉を聞いて少し安心できたし、少し緊張が解けた気がする。 今の僕にはこれほど信用できて、心強い存在は家族以外で他に居ない。 もしフルールと出会えなければ、僕は魔物に殺られていたかもしれないし、精神的にもやられていただろう。 そう考えると、フルールには感謝してもし足りない。
「フルール。 本当にありがとう」
フルールは首を傾げた。
「お礼いらない。 私が敬を助けるのは当然のこと」
フルールが真面目な顔でそう言うと、それが可笑しく感じて、敬は苦笑した。
「それは頼もしいね。 さすがは僕のパートナーだよ」
敬はフルールの真似をしてそう言った。
すると、フルールは首を傾げた。
「パートナー?」
「ああ、ごめん。 図々しかったかな?」
敬が少し慌ててそう言うと、フルールは首を振った。
「違う。 少し疑問に思っただけ。 パートナーって何?」
「パートナーは仲間とか相棒とかって感じだったと思う」
「そう⋯⋯パートナー。 うん、気に入った。 これからは契約者じゃなくパートナー」
「気に入ってもらえて良かったよ。 不満なのかと思って焦っちゃった」
「心配いらない」
「⋯⋯敬、さっきからブツブツ言ってどうしたの?」
アナスタシアがそう聞いてきた。 メイド改めソフィアさんも不思議そうにこっちを見ている。
敬は焦って手を振った。
「ううん、別になんでもないよ」
「そう? それでついたけど、ちゃんと入ってきてね?」
敬はアナスタシアの確認の言葉に頷いて返した。
アナスタシアはドアを開けて入っていく。 その後ろをソフィアが続き、敬も緊張した面持ちで入っていった。