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11月18日、昼 ファミリーセブン南池袋店 ①

◇◇


 11月18日、午後1時30分――

 

 常連のおじさんと入れ違いでお店に入ってきたのは、長坂洋子さんだった。


「こんにちは。智子を迎えにきました」


 そう切り出した彼女の視線は、既にここからは死角となっているイートインスペースに向けられている。

 きっと智子さんからのメールを見て、自分から迎えにきたのだろう。

 

「はいっ! イートインスペースでお待ちです!」


 素直にそう告げると、彼女は清らかな川の流れのように透き通った声で言った。

 

「浅間さんには申し訳ないのだけど、私の代わりに智子へ『家に帰るように』とお伝えいただけるかしら?」


「え? せっかくここまで来られたのに、一緒に帰らないのですか?」


 意外な言葉に目を丸くする私。

 しかし彼女はまったく意に介さずに、滑らかな口調で答えた。


「ふふ、私にはこれからお見送りをしなくてはいけない人がおりますので」


 それを聞いて、ふと智子さんの言葉が思い出される。

 

――俊太も家にやってくるって、お父さんがお母さんに話しているのをコッソリ聞いたから。


 きっと洋子さんが『お見送りをしなくてはいけない人』とは俊太さんのことだ。

 つまり智子さん言う『大人同士の大事な話』というのが、終わったに違いない。

 俊太さんは恥ずかしがり屋だから、お店の外で待っているのだろう。

 

 そう考えた私は、小さく頭を下げると明るい調子で言った。

 

「はいっ! かしこまりました! では、すぐに伝えてきますね!」


 洋子さんは、ニコリと笑みを大きくする。

 

「ありがとう、浅間さん。やっぱりあなたはいい子ね」


 油断しきっていたところでふいを突く洋子さんの褒め言葉。

 私は弾かれたように彼女に背を向けると、真っ赤に染まった顔を見せないようにした。

 

 そして、目線を智子さんの待つイートインスペースの方向へ向ける。

 ドキドキと高鳴った胸の鼓動を、大きな深呼吸で整えた後、一歩踏み出した。

 

 ここまでは何の違和感も感じなかった。

 

 このまま私が智子さんと二人でカウンターへ戻ってきた頃には洋子さんはお店からいなくなっていて、智子さんはそのまま一人で帰宅の途につく。

 

 十人いれば十人全員が、そうなると信じて疑わないはずだ。

 

 しかし……。

 

 私が二歩目を踏み出した瞬間に、事態は一変したのだった――




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WEBアマチュア小説大賞
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