おっさん化
いつごろだろうか、自分に若さを感じなくなったのは、いつごろだろうか、自分より年下の子を見て若さを感じるようになったのは。年下の子と話していると尚更感じる。ましてや、年下の女子など、割るとキラキラしたものが飛び散るようなキラキラの塊だ。話していて自分がいかに、この世の摂理にしたがって『おっさん化』しているのを感じる。
いつごろだろうか、バイト前の昼ごはんは、バイト先まで行き道のバイパス沿いの牛丼屋になっていた。
そんな話をバイト先に年下のリンちゃんに話した時だ。「おっさんですね」と馬鹿にされ、笑われた。
僕は気がついていなかった。牛丼屋で牛丼特盛りの味噌汁・サラダセットをモリモリと鼻に汗をかきながら食べている男は、年下女子から見ると、おっさんだと。
年下の女子が一人で窓に無造作に動物の置物が並ぶ山小屋風の雑貨屋さんに入るように、牛丼屋に入れるわけがない。まず自分も牛丼屋で若い女性を見たことがない。
もしいたとしたら、どう思うだろう。「可哀想」なのか「格好いい」なのか、それはもちろん一人で食べに来ているこの外見によるだろうが、若い子であればあるほど驚くだろう。
今年成人を迎えた僕が1人、ランジェリーショップでブラジャーを片手に顔をしかめていたら、周りの女性陣はグラデーションされるように並べられた下着と僕を交互に見るだろう。女の牛丼屋と、男のランジェリーショップは、おそらくハードルの高さは一緒のはず。目の前で、僕をおっさんだと言った、リンちゃんも例外なく牛丼屋には1人で入れないと言った。
ただそんなリンちゃんでも、年下の子が若く見え、オバさんになったね、と友達と話すらしい。しかし、僕からすればリンちゃん達の若さは高校生とは違う若さ、高校生の若さを持て余していたときより、自分たちを綺麗に着飾っているリンちゃん達に若さを感じる。人間としての若さではなく女性としての若さを感じる。
なら、男はどうなんだ。高校生から大学生となり、変わるところはどこだろう。知的さが出ると言ったところか、筋骨隆々と体に男らしさが出るのか、男としての若さとはなんだろう。半分『おっさん化』している自分には分からない。
ただ一つ、僕と世間一般のおっさんとの違いとしては、若いからという限定されたものではないが、恋愛をしたいと思っている。ここ最近その欲がひどい。今、目の前のリンちゃんと話しているときもそうだ。
ただ、リンちゃんには彼氏がいる。それでも、せめてものの女子と喋りたい。リンちゃんの場合は喋るだけでいい。とにかく仲良くなりたい。友達になりたい。下心は一切無しで関わりたい。そんな気持ちでいるが、リンちゃんにはどう捉えられているのだろうか。
傍から見たら出会い求めているようにしか見えないだろう。もうどうしようもなくなって、彼氏がいる子にも手を出している輩にしか見えないかもしれない。それでもいい、ただリンちゃんには友達として遊んでくれるだけでいい、ただひとつ、わがままを言うなら、リンちゃんとまた1人、もう2人と、同時に仲良くなりたかった。女友達グループと仲良くなれば、友達として接してくれやすいし、こちらも、1人とじゃなければ、色々と誘いやすい。1人の彼氏持ちの女子を誘うなど、ハードルが上がるし、周りからの視線も痛い。そう思いながらも、リンちゃんと仲良くなろうと、今必死なのだ。たとえ、おっさんと扱われてもかまわない、むしろ血の気が多く、女に飢えている若い男とみられるよりマシだ。
恋愛経験の無さと、焦っている感じは年上の人から見たら若さなのかもしれない。