異世界召喚
光が収まりようやく目が開けられると思った夏はざわざわと騒ぐ無数の気配を感じながら落ち着いて目を開き目の前の光景にやっぱりなと思う反面現実味がないなと思っていた。
純白の壁に少し赤が混じった柱、窓に使われているのはステンドガラスだろうか?とても綺麗な絵や模様が外部からの光によって写りだされている。中世のヨーロッパの大聖堂を思わせるような建物だが地面にある自分達が呼び出されただろう魔方陣が描かれており自分達の知っている大聖堂ではないことを示している。
この状況下を理解できず取り乱すもの、「勇者召喚か!?」と喜ぶもの、生徒を落ち着かせようとする先生の姿等が見られた。やはりと言うべきか、この場所に教室にいた全員呼び出されてしまったようだ。
夏はさっき叫んだのは雪だと確信し、真っ先に合流して現状について話し合った。取り敢えず雪のテンションは最高峰に達していると言っても過言ではない。何せ夢物語と思っていたのが現実になり得そうなのだから。しかし、混乱しているクラスメイトや先生は喜びより困惑などの方が強いだろう。また、気になるのが周囲を囲むようにいる人たちだ。
二十~三十人位であろうか?ローブを着込んだ怪しげな者達が様々な杖を両手で自分達を支えて疲労しているように見える。
この中でかなり目立つものが3人。鎧を着込み剣を腰掛け如何にも騎士と言ったものが2人。そして一番目立つ豪華な衣装を身に纏い、80代位の老人が此方に歩みよってきた。ただ、他とは違い圧倒的な覇気を醸し出していて普通の老人とは呼べないだろう。
そんな彼が身なりに合う幽玄で落ち着いた声音で夏達に話しかけてきた。
「よくぞ、よくぞ来てくれた勇者様。私はセタス・ロス国国王レオハルト・バッカスと申すもの。此れから宜しく頼みますぞ。」
そう言って、レオハルトと名乗った老人は屈託の笑みを浮かべた。
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現在、夏達は場所を移動し、数メートルはあるテーブルが多く並んだ大広間に通されていた。
歩いたことにより落ち着きを取り戻したのか、または先生が奮闘したお陰なのかは分からないが大広間に着いたときには騒いでいるものは居なかった。
全員が椅子に座るのを見るとレオハルト国王が「勇者様達は混乱していることでしょう。現状についてお話しさせて頂きますので最後まで私の話を聞いていただきたい」と事情を話始めた。
要約するとこのようになる。
まず、この世界はアースワールドと呼ばれている。そして、アースワールドには大きく分けて四つの種族がある。人間族、亜人族、魔人族である。人間族は北一帯、魔人族は南西一帯、亜人族は南東一帯を支配している。他にも野生動物や植物が魔力を取り入れ、変異し魔物と呼ばれる害獣がいたりするが生体はよくわかってないらしい。
この内、人間族は魔人族、亜人族と何千年も戦争を繰り返している。亜人族、魔族は数は少ないが一人一人の能力が高く、スキル等も持っているが数が少ない。逆に人間族は数は多いが能力は低く、スキルも少ないか持っていないかである。戦力は均衡していて大きな戦争は無かったのだが、ここ最近異常事態が発生している。それが新しい魔王と魔人族の能力向上である。
魔王とは、魔人族の王であり魔人族の一番強いものがなる。大体の魔王は、能力が異常に高いかスキルが異常に強い又は多いかで他の魔人族とは次元が違う。また、今回の魔王は能力が高いだけでなくスキルも多く強い。しかも、仲間の能力を向上するスキルを持っていて他の魔人族すら倒すことが困難になったと言う。
「勇者様方を召喚したのはオールド・ディン様です。我々が崇めてる守護神、聖神教会の唯一神であり、アースワールドを作ったとされます。オールド・ディン様は人々が滅ぼされることを危惧し、勇者様方を召喚されたのでしょう。勇者様方の世界は我々の世界より上位であり、例外なく強力な力を宿しているでしょう。我々が生き残るためには勇者様方を召喚しなければならないと神託がありました。勇者様方何卒我々人間族を救ってはくれぬか」
ここまでの話を聞いたクラスメイト達の反応は様々であったがクラスの中でも発言力のあるグループが「この世界を救う力がある俺達が国を守ろう」と皆にいい多くが救うことを決意した。先生は止めてはいたがあまり効果はなかったようだ。その様子を見てレオハルトは気分をよくしたのか「元の世界に帰る手段も用意してあります。しかし猶予が一ヶ月しかありませんので此方で一週間程住んでいただいて決めて欲しい」と発言した。それを聞いた全員が安心して住むことになった。