プロローグ
前後左右上下と分からなくなってしまう闇にのまれたかのような壁に怠惰と描かれた綺麗で威圧感のある巨大な緋色の門。何故このような場所にいるのかと白石夏は考え、今までのことを思い出していた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
金曜日。それはきっと大勢の学生達が一週間の学業の終わりを告げ、休日となる明日へ夢見る日ではないだろうか。
そして、それは白石夏も例外ではなく、明日何をして過ごすのかを決めかねていた。
はぁ~授業怠いな…明日は休日だってのに頭に入らないって。そんなことより明日はどうするかな?特に用事も無いし雪の家に行ってラノベでも読むかゲームかそれとも家で寝て過ごすのか。
「おい、夏考え事もいいが当てられてるぞ」
「分かってるよ、それと雪もラノベバレんなよ」
隣から授業を聞いている振りをしつつラノベを読んでいる親友とも悪友呼べる四月一日雪人が注意してきた。
雪は文武両道のイケメンである。弓道部のエースをしていて小中は剣道で世界一を取り、成績は常に上位一桁台である。
そんな雪だからこそ異性から好意を寄せられるがすべて断っている。夏が気になって「何で彼女作らないの?」聞くと「異世界で冒険者になる夢を諦めたくないから大学までは彼女は作らないかな」と残念な理由が帰って来た。
「こら、そこ私語をしない」
俺達の担任である佐藤鈴が注意してきた。見た目は可愛らしい美少女であるが背が低く、中学1年生くらいで俺達より6歳年上だとは教室で始めに会ったときは誰もが先生だとは思わなかっただろう。
真面目で生徒思いの先生であり生徒からの評判は良い。その見た目から鈴ちゃん先生と呼ばれ評判も良い。しかし、小さいことがコンプレックスで身長の事を言うと先生からの宿題が大量に出される。しかもその人の苦手分野を出来る範囲出してくる。明らかに職権濫用なのだがその人の為と言われるとこちら側からはなにも言えまい。
「は~い」
何時もの様に返事をして教科書に目を向ける。しかし、内容は全然入ってこないよなと思いながら明日の予定どうするかまだ聞いてなかったことを思いだしバレないように「今日は雪の家でゲームするとして明日はどうする?」と聞くと「あ~今日泊まって本屋行こうぜ。明日は新刊でるし」と返事が帰って来たので「了解」とだけ返して何時もの様に寝る体制に入る。頬杖をつき、教科書を眺めるように顔を向けながら寝ると結構バレない。夏は深い眠りにつこうとしたその時
「うわ!?」
「何だこれ!」
突然の悲鳴に顔を途中まで上げたが凍りついたかの様にそれ以上動かすことが出来なかった。なぜなら足元に魔方陣の様なものが光輝いておりクラス全体を飲み込んでいたからだ。
いち早く冷静になった先生が「皆、教室から逃げて!!」と指示を出したが
「なによこれ、出れない!!」
教室から逃げようとする生徒達は魔方陣から透明な壁にぶつかり閉じ込められているようだ。
逃げ道を失い困惑している生徒達を嘲笑うかの様に魔方陣の光は増していき、ついに光が爆発したかのようにピカッと光った。
光は輝いていたが徐々に光を失っていき、数秒後には光と魔方陣、そして人一人居なくなっていた。残ったのは蹴飛ばされた椅子や机、授業が行われたであろう黒板の書き残しや床に落ちた教科書だけであった。