はじめに
これは私が経験したお話。
平均で平凡で、他人より少し幻想が好きな、それ以外は普通な私のお話。
いや・・・私というよりは彼女たちの物語と言うべきか。私はただの立会人だ。それ以上それ以下でもない。
自分を卑下する訳ではないが、私はただの傍観者だった。
傍観者たる私が見る世界は二つあった。
一つは平凡な日常に時たま姿を現わす異変。その両方の中心は赤と白の巫女服に身を包んだ彼女だ。めんどくさがり屋であるくせに、面倒見の良い。冷徹とは裏腹に優しさを内包した少女である。
矛盾が現界したような、そんな彼女をみんな慕っていた。
そんな彼女の名前は博麗霊夢。
博麗神社の巫女であり、幻想郷の調律者である。
そして、見るはもう片方。
地底深きに構える旧都。そこに居座る一本角の怪力乱神の持ち主である。
名を星熊勇儀。
人の対極に位置する存在。妖怪であり、鬼である。
星熊童子を由来とするであろうその大きな角は見るものすべてに恐怖を与える。彼女を見れば誰であれ恐怖以外の感情抱かないであろう。
だから、その鬼はいつも独り。一人で独り。
たった一人で地底の奥底で暮らしている。外界との繋がり根絶し、右手に盃を抱えたまま独りでカラカラと笑っているのだ。
霊夢と勇儀。
人と鬼。
この二人の在り方を私は傍観者として、友人としてここに記していきたいと思う。