変化
次の日の朝、また俺は咲に起こされた。
「蒼おにいちゃん! おはよう」
「はえーよ。何時だと思ってんだよ」
そう言いながら時計を見ると9時過ぎ。
欠伸をしながら体を起こす。
ついでに外の景色を眺める。
いい天気だな。
少し暖かすぎる陽光が眩しい。
気がつけば早いもので季節は初夏。
病院内は冷房はやや効いているものの、少しだけ汗ばむ
カラカラに乾いた喉に水を流し込んで癒やす。
「んで? 今日もか?」
「うん、遊ぼう!」
「ああ……」
ニカっと子供らしい顔で笑った。
「今日は天気が良いな。熱いし」
「そうだね。…………外で遊びたいな」
咲は悲しそうな表情でポツリと言う。
「外には出られないのか?」
「うん。看護婦さんに怒られちゃう。それに……これもついてるし」
咲は点滴スタンドに繋がっている管を持ち上げた。
小さな体に管が張り巡らされている。
かわいそうだ。
何故こんな子どもが病気で入院しなければいけないんだ。
この世界は相変わらず不平等で不完全だ。
「いつかさ、お前の病気が良くなったら外で遊ぶか」
「いいの? 約束だよ?」
「あぁ。約束だ」
「指切りげんまん!」
すると、咲は此方に小指を指して来た。
俺は小指を絡ませ、約束を交わす。
最近は一日も充実してきたような気がする。
それはきっと咲のおかげだろう。
入院する前の俺は毎日朝までネットゲームをして寝る。
そんな生活サイクルだった。
今ではそれも戻りつつある。
少しは咲に感謝しないとな。
それからの時間は、たわいもない話をしたり、ボードゲームをしたりして過ごした。
時刻は夕方。
窓ガラスから西日が差し込んでいて、部屋は茜色に染まっていた。
暑さも心なしか和らいでいた。
「そろそろ戻るね。またあし――ゲホゲホ ゴホン」
咲が咳込んだ。
そういえば前と比べて咳が多いな。
元気な咲を見ていると忘れがちだが、紛れもなく病気で入院しているのだ。
「お、おい。大丈夫か?」
少し心配で声を掛けた。
「大丈夫だよ。また明日」
元気にそう言い残し咲は部屋から出ていった。