御楽
翌朝、大きな声が聞こえた。
「蒼お兄ちゃん」
どうやら咲だ。
「おいおい、まだ朝だろ、もうちょっと寝かせてくれ」
「もう午前の10時だよ! 昼近くじゃん!」
「俺の中では朝なんだよ」
そう言うと、咲はすこし虚ろな表情を浮かべた。
「あぁ。分かった。分かったから、そんな顔をするな! 何か用か?」
「遊ぼう!!」
咲は、笑顔でトランプを俺に見せつけてきた。
――またトランプか……。
「お前も飽きないな」
「嫌だ?」
「仕方ない、やるか……」
それからしばらくして、咲がトイレに行くと、女性の看護師さんが俺のところにやってきた。
「朝比奈さんは咲さんと仲いいんですか?」
「えぇ。ちょっと遊びに付き合わされてて……」
「そうですか?朝比奈さん随分と楽しそうに見えましたけど」
看護師は少しニヤニヤしながら言う。
「い、いや、そんなことは……無いと思いますけど?」
「冗談ですよ。これからもできれば咲さんと一緒に遊んであげてくださいね。咲さんの親御さんは片親で、お母さんも毎日働き詰めでお見舞いにも来れず、いつも1人なんです。」
「そうなんですか……」
そして、看護師はニコッと笑い、部屋を後にした。
ちょうど入れ違いで、咲も帰ってくる。
こいつもこいつで大変だな。
今までは自分だけが不幸だと思っていた。
しかし、咲は小さい頃から重い病気を患っている。
それに比べて、俺に降り掛かった不幸は俺自身の頑張り次第でどうにかできたのかもしれない。
本当に不幸なのは……。
「よし、続きやるか!」
「うん!」
咲も元気な声で返した。
それからの時間はあっという間に過ぎて、時刻は夕方に差し掛かった。
「なぁ、咲。明日も来るか?」
そう言うと、咲は首を大きく縦に振った。